「至高性」や「エロティシズム」、「蕩尽」を根源的な主題として、近代の主知主義・生産を基底とする世界像を批判、政治学・経済学・人類学・宗教・文学・哲学・芸術などの多岐に渡る領域で執筆活動を展開し、独自の思想世界を構築したジョルジュ・バタイユ。今回取り上げるのは、『呪われた部分』という総称の元に包括される社会科学的著作群の劈頭を飾る、一連の著作群の総称と同じ題名を冠する『呪われた部分―普遍経済学の試み』である。晩年のバタイユは思想的総決算として自身の著作活動を三つの著作群に纏めようと構想していて、第一に「聖なる神」の主題のもとに統合される文学作品群(『マダム・エトワルダ』『わが母』『シャルロット・ダンジェルヴィル』)、第二に『無神学大全』三部作(『内的体験』『有罪者』『ニーチェ論』)、そして第三が『呪われた部分』の総題の元に展開された一連の社会科学的作品群である。バタイユと言えばおそらく多くの