なぜ、すべてがすでに消滅しなかったのか たとえ毎日がうまくいかなくて、人と上手く関わることができなくて、孤立して、この世界を呪いたくなったとしても、一日の終わりにはたいてい心は柔らかくなり、心地よい忘却に身をまかせることになる。人間は考え続けることも、抗い続けることも、おそらくはできない。それでないと神経が参ってしまうからだ。そんな中途半端な私には、このジャン・ボードリヤールの力強い抵抗の哲学は、とてもよくわかるが、しかし同時に、どこか危険を感じてしまう書物だ。正直、私は本書を読んで強く啓発された。「自己啓発」という用語を使ってもよいと思う。それは世間一般で言われている「自己啓発」とは全く反対のベクトルに作用するものだが、それでも何らかの心の動きを誘発したという点において、本書は私にとって「啓発的」な書物であったことは間違い無い。 本書は、力強いグローバル資本主義への抵抗の書である。ボード