論理と感情はしばしば二項対立的に捉えられる。例えば「人間は論理ではないのだから」などのテーゼには、そうした前提が潜んでいる。だが、論理と感情は二項対立的というよりも、むしろ次元の違う内容を比較してしまっているのではないだろうか。 感情というのは、単純に「~したい」「~は楽しい」「~は嫌だ」といった一つの感覚である。ここにあげた例ほど簡単ではない複雑な感情でも、本質的にはすべてそうである。なので、感情は「人間の行動・判断に対する動機付け(モチベーション)」である。 他方、論理というのは「AだからB」といった、正しい結論を導くための規則である。やや難しくいいかえると、論理とは「「何が正しいか」を決定するための唯一の方法」だということである。いかなる主張も、論理以外の方法では正当化されえない。 ここで注意してほしいのは、論理以外の方法では「正当化」は不可能だが、「説得」は十分に可能であるという点