人は生まれ持った肌の色や宗教、文化などにかかわらず平等であり、自由に生きる権利がある。世の中が(表向きだけでも)それを常識とみなすようになったのは、ようやくこの数十年のことです。大航海時代、奴隷としてアメリカ大陸に連行された人びとは、何世紀にもわたって、理不尽な差別や暴力とたたかってきました。その歴史とはいったいどのようなものだったのでしょうか。そして、そこに抜き難くあるアイデンティティをめぐる問いとは? ――リンカーンによる「奴隷解放宣言」が出るのは南北戦争中の1862年ですね。それがアメリカ全土に行き渡るのはもちろん戦争の後だとは思うんですけど、これによって黒人は白人から自由になったということでしょうか。 法的には、この宣言だけでアメリカ全土の奴隷解放というわけにはいかず、主に当時のアメリカ合衆国(北部州)から抜けて争っていた南部州の奴隷解放に限られました。1862年に最初の奴隷解放宣
![1. 奴隷解放宣言 - 中村寛 | トイビト](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/a5b17e938ed378486d2acee8755b7b9806af2b22/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fapi.toibito.com%2Fmedia%2Fuser_uploads%2Ftetsuhiko.kato%2Ftitle_image%2Fyutaka-nakamura.png)