住友林業(東京都)が、大津市の日吉大社が発祥地とされる山桜の一種「日吉桜」の苗木を、組織培養の技術で増殖させることに成功した。平安期までさかのぼる由緒を持つ花を完全な姿で継承しようと、同社と神社関係者が6年越しで進めてきたプロジェクト。全国の神社に組織培養苗を配る計画を立てている。4月に同大社で植樹式があり、出席者がかれんな花を咲かせるよう願った。 日吉桜は一輪に30枚ほどの淡紅色の花びらを付ける。社伝によると、古くは「地主権現(じしゅごんげん)」と呼ばれた日吉大社東本宮近くにあったことから「地主桜」と呼ばれ、平安末期の歌人西行が歌に詠んだとの言い伝えも残る。桜守(さくらもり」)として知られる先代の故佐野藤右衛門さんが、1937年に「日吉桜」と名付けた。 日吉大社一帯で最後の1本とされていた日吉桜が数十年前に立ち枯れた。そのため2014年に市民有志が、森林総合研究所多摩森林科学園(東京都)