風の強い春の宵、胸の痛む光景を目にした。 駅近くの交差点手前に車が止まっている。ハザードがついていて、行き過ぎて振り返ると、数人の女性が車の後部下を熱心に見ている。彼女らの近くには、空き缶を満載した手押し車を押す、おそらくはホームレスだろうと思しき老人がいた。どういう経緯かはわからないけれど、たぶん彼女の車とその手押し車が接触したのだろう。傍目から見て傷があるとは思えなかった。それはみている彼女達がいちばんよくわかっていただろう。示威的に眺めているように、私には見えた。 垢で顔が赤黒くなった老人の、まばらな白髪が強い風にあおられる。 黙って老人は手押し車を押さえていた。中年の太った女は運転席に乗り込む前に、老人に向かってなにかをののしった。言い返す訳でもなく、風にあおられ方向が定まらなくなりがちな手押し車を、ただ老人は押さえていた。信号は変わっていて、待っている間、ウィンドウから少年が顔を
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