文字によって作者の感覚と読者の記憶がリンクする読書のメカニズムを探り、ストーリーではなく、細部の触感表現に注目することで見えてくる、文学の持つ多彩な魅力を伝える。 谷崎潤一郎、永井荷風、江戸川乱歩から、川上弘美、金原ひとみまで、作品に記された感覚表現から、読書という行為から失われつつある身体性を問い直す。 はじめに 総 論 触感の文学史が切り開くもの 第Ⅰ部 小説に描かれた「身体」と触感 第一章 立体造形と触覚─江戸川乱歩「人間椅子」「盲獣」 第二章 女の身体の表現実験─永井荷風「腕くらべ」 第三章 視覚の喪失と手触り─ 谷崎潤一郎「盲目物語」「春琴抄」泉鏡花「歌行燈」 第Ⅱ部 人と人との触れ合い 第四章 歌留多会から─尾崎紅葉「金色夜叉」斎藤緑雨「門三味線」 第五章 産児調節・堕胎・避妊─谷崎潤一郎「卍」 第六章 不感症という逆説─ 三島由紀夫「音楽」「沈める滝」大岡昇平「武蔵野夫人」