ここまで無邪気を装って微笑まれると、今さら否定するのもバカらしくなった。男のひとの鎖骨、けっこう好きだったりする。ふだんスーツで隠れてる部分だから反射的に目がいってしまう。 「それ、どこの?」 うなずくかわりに、それでもさすがに癪に障ったのだという呆れ顔で尋ねると、さあ、と首をかしげられた。それから脱ごうとするので、あわてた。 「覚えてないならそこまでしなくていいから」 「そう? そういうの無頓着なんだよね。全部、友達任せだよ。これ買えっていわれたものを買って、あれと合わせろといわれたとおりに着る」 記憶力はいいんだよ、と彼は嫌味なふうもなく自慢した。 「自分でお洋服の管理してるかと思ってた」 「管理はしてるよ。クリーニングも自分で出すしブラシもちゃんとかけるし」 「そういうんじゃなくて」 こちらの言葉をくみとって、なにがおかしいのか彼は笑ってみせた。 「身の回りの何にでも拘るほうだと思っ