「では、そのいたいけな姫君はどうなりますか」 わたしの問いに、陛下は肩をすくめて一笑した。 「それはその姫君の考えることで、己の仕事じゃない」 「酷いことを」 「酷かろうが、己は皇帝として己の面倒を見るだけで精一杯だ。 誰もがそうさ。 だがな、その姫が真実、女神の娘なら、己たちが束になってかかってもどうにもできるものじゃなし」 「なるほど。それは、そうですね」 「ああ、そうさ」 陛下はそう居直るとまた瞳を閉じた。 「もしも、子が生まれたら」 わたしの問いには間をおかず、 「子供が生まれたら生まれたでそのとき考えればよい」 「海に流すような真似はしないですみましょうか」 陛下は眉を寄せて嘆息した。 「そなた、己の世継ぎが欲しかったのではないか?」 「ええ」 「ならば流してどうする。 そなたが月神を気取りたくばすればよい。だがな、子はどこでどう生まれようと自分で生きていくものさ。話の始めどおり
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