単層カーボンナノチューブを酸化処理し、比表面積2240 m2/gを持つ繊維状材料を開発 キャパシタの電極に用いることで、従来の材料をしのぐ高エネルギー、高パワー密度を実現 エネルギーや物質の貯蔵体としての幅広い応用も期待 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)ナノチューブ応用研究センター【研究センター長 飯島 澄男】スーパーグロースCNTチーム 畠 賢治 研究チーム長、エネルギー技術研究部門【研究部門長 長谷川 裕夫】エネルギー貯蔵材料グループ 羽鳥 浩章 主任研究員らは、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)を用いて、比表面積が2240 m2/gの繊維状材料を開発した。 比表面積の大きな材料は、キャパシタに代表される蓄電デバイスなどエネルギーの貯蔵や、物質の貯蔵・精製・分離に利用されている。しかし、従来の材料の多くはもろく、比表面積の大きさを保ちつ
グラフェンの減光率を示した写真。円形の試料のうち,左の部分がグラフェンなしのSiO2基板,中央部が単層グラフェンをSiO2基板に張り付けたもの,右の部分が2層グラフェンをSiO2基板に張り付けたもの。単層グラフェンの減光率は2.3%だという。写真:University of Manchester グラファイト1層分の材料であるグラフェンの研究開発が世界中,猛烈な勢いで進められている。関連する研究論文は2010年は3000本を超えたともいわれる。中でも中国科学院やシンガポールNational University of Singapore(NUS)が,論文数で他の研究機関を大きくリードしている。新材料の開発に強かったはずの日本勢は,やや苦しい戦いとなっている。 応用面で世界をリードするのは韓国だ。特に韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.は,グラフェンを応用したタッチ・
グラフェンをチャネル層に用いた高速トランジスタの開発に最も熱心な企業の一つが米IBM Corp.だ。同社は2008年には最初のグラフェン・トランジスタを開発し,2010年12月の国際学会「IEDM 2010」で,ゲート長240nm,遮断周波数が230GHzのグラフェンFETについて発表するなど,一貫して研究開発をリードしてきた(関連記事)。 ただし,最近はライバルが同社を猛追している。例えば,韓国Samsung Advanced Institute of Technology(SAIT)である。SAITは,IEDM 2010ではIBM社に迫る遮断周波数202GHz(ゲート長は180nm)のグラフェンFETを発表した。他にも,産業技術総合研究所と富士通研究所,NTT物性科学基礎研究所,米Boeing社と米GM社の共同研究機関である米HRL Laboratories, LLCなど非常に多くの研
2010年は,もしかすると後世の人から,エレクトロニクス分野の主役となる材料が,シリコン(Si)から炭素(C)にとって代わる転換点の年だといわれる年になるかもしれない。そのきっかけとなりそうな出来事や開発,発見がいくつも起こっているからだ。 一つは,2010年のノーベル賞である。物理学賞も化学賞も炭素に関連した研究が受賞した(関連記事)。物理学賞は,炭素が6角形(6員環)の網状につながった「グラフェン」を黒鉛(グラファイト)から「画期的な(groundbreaking)」(スウェーデン王立科学アカデミー)方法で単離したことなどが受賞理由になった。そして化学賞は,有機化合物同士を結合させる「カップリング反応」の開発が受賞理由だ。もっと簡単に言えば,一方は炭素間の結合(といってもファンデルワールス力ですが)を切る技術,もう一方は,結合させる技術が評価されたことになる。 両技術は,炭素という非常
-140~600 ℃まで安定してほぼ一定の柔らかさと硬さ(シリコンゴム程度)を保つ 高純度カーボンナノチューブからなる長尺でランダムなネットワーク状の構造体により実現 過酷な環境下での軽量な衝撃吸収材料として幅広い応用の可能性 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)ナノチューブ応用研究センター【研究センター長 飯島 澄男】畠 賢治 上席研究員 兼 スーパーグロースCNT研究チーム長、同チーム 二葉 ドン 主任研究員、技術研究組合 単層CNT融合新材料研究開発機構(以下「TASC」という)徐 鳴 特別研究員らは、ランダムなネットワーク状の構造を持つ高純度のカーボンナノチューブ(CNT)の構造体をスーパーグロース法を応用して作成した。このCNT構造体は-196 ℃から1000 ℃までゴムのような粘弾性を示す。 粘弾性体は衝撃や振動の吸収材として利用されて
低温合成プロセスによる新規チタン酸化物負極材料(H2Ti12O25) 現行の酸化物系負極材料と同程度の作動電圧を有し、容量30 %アップを実現 構成元素としてリチウムを含まないためリチウムイオン二次電池の低コスト化に期待 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)先進製造プロセス研究部門【研究部門長 村山 宣光】結晶制御プロセス研究グループ 秋本 順二 研究グループ長、計測フロンティア研究部門【研究部門長 秋宗 淑雄】ナノ移動解析研究グループ 後藤 義人 研究グループ長は、石原産業株式会社【代表取締役社長 織田 健造】(以下「石原産業」という)と共同で、リチウムイオン二次電池用の新規な高容量チタン酸化物負極材料H2Ti12O25を開発した。 この材料は構成元素としてリチウムを含まない上、現在使われている酸化物系負極材料であるチタン酸リチウムLi4Ti5O
平成22年10月22日 東北大学 大学院理学研究科 東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 Tel:022‐217‐5922(WPI事務室) 科学技術振興機構(JST) Tel:03-5214-8404(広報ポータル部) <概要> 東北大学 大学院理学研究科の中山 耕輔 研究員と同校 原子分子材料科学高等研究機構の高橋 隆 教授らの研究グループは、鉄を含む新型高温超伝導体の超伝導機構が、物質の種類によらず統一的に理解できることを見出しました。 本研究成果は、2010年10月29日(米国東部時間)発行(予定)の米国物理学会誌「Physical Review Letters」に受理され、オンライン版で近日中に公開されます。 本成果は、JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の「物質現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」研究領域(研究総括:田中 通義 東北大学 名誉
Scientists genetically engineer silkworms to produce artificial spider silk Date: September 29, 2010 Source: University of Notre Dame Summary: Researchers have succeeded in producing transgenic silkworms capable of spinning artificial spider silks. Share: A research and development effort by the University of Notre Dame, the University of Wyoming, and Kraig Biocraft Laboratories, Inc. has succeede
クモの糸が紡ぐ、繊維の新時代(1) 2010年7月 1日 環境サイエンス・テクノロジー コメント: トラックバック (0) フィード環境サイエンス・テクノロジー 1/4 (これまでの 山路達也の「エコ技術者に訊く」はこちら) 頼りなげに見えるクモの糸だが、その強度、しなやかさにはどんな合成繊維も及ばない。このクモの糸を合成して量産化しようとさまざまな研究機関や企業がチャレンジしてきたが、いまだ成功したところはない。だが、慶應義塾大学発のベンチャー、スパイバー社は独自の生産手法を開発し、量産化への道筋を付けつつある。新手法を開発した同社社長、関山和秀氏に、クモの糸の可能性をお聞きした。 スパイバー社が開発した、人工「クモの糸」。 鉄以上に強靱なクモの糸は量産化が困難だった ──クモの糸を人工合成しようとしているそうですね。どうして、クモの糸を作ろうと思われたのでしょう? 大学4年生の頃、(慶
本研究成果のポイント ○加圧でフラーレンの分子間の距離が短縮、電子移動が加速し、超伝導体に変化 ○絶縁体と超伝導体が別物ととらえられてきたフラーレンの常識を覆す ○「高い超伝導臨界温度は、絶縁体の近くに現れる」という指導原理を実証 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)、国立大学法人東北大学(井上明久総長)、英国ダーラム大学などの国際共同研究チーム※1は、有機超伝導体(分子性物質)の中で、加圧下で最も高い超伝導臨界温度※2を示すフラーレン※3物質について、構造・電子物性を多角的な手法で解析し、加圧すると分子間距離が縮まり、電子が動き出して金属化し、超伝導現象を発現することを明らかにしました。理研放射光科学総合研究センター高田構造科学研究室の高田昌樹主任研究員、ダーラム大学の高林康裕博士研究員(現、株式会社イデアルスター)、Kosmas Prassides教授、東北大学の岩佐義宏教授、高
低炭素社会実現のためのキーデバイスとして期待がかかる二次電池。自動車や電車、船舶といった乗り物だけでなく、風力発電や太陽光発電との連携、商業施設のバックアップ電源など、応用範囲は広い。そんな二次電池の急先鋒であるリチウムイオン電池の研究開発は、今まさにターニングポイントに差し掛かっている。 実は、リチウムイオン電池開発の最前線に立つ研究者のなかにも、「電池については何も分かっていない」と語る者がいるほど、詳細なメカニズムのほとんどが未解明だ。なぜ劣化が起こるのか、劣化を抑えるにはどうすればいいのか、エネルギー密度を高められる結晶構造とはどのようなもので、その構造のなかにリチウムイオンをどう埋め込めばいいのか。そしてそもそも、充放電の際に電池の中ではどのような反応が起きているのか――など、原子レベルでのさまざまなメカニズムが明らかになっていないのである。 現状は、基礎研究よりも応用研究が先行
これは誤解されそうなニュース (書いた記者が誤解してるかも) なので、 補足しておきます。 まずは、 ニュース記事。 47NEWS: 鉄より強いプラスチックを開発 広島大グループ 鉄鋼の2~5倍の強度を持つプラスチックのシートを開発したと、広島大の彦坂正道特任教授(高分子物理学)らのグループが19日、発表した。 厚さ10分の数ミリ。透明で成形しやすく、自動車の車体やガラスの代用品などとして応用が見込める。通常のプラスチックとほぼ同じ値段ででき、不純物がないためリサイクルしやすい利点もあり、新素材として普及を目指す。 従来のポリプロピレンより、引っ張り強度が7倍以上の230メガパスカルに増していた。この強度は同じ重さの鉄鋼の2~5倍という。 見出しから、 「おっ、 いままで鉄より強いプラスチックは無かったんだな。 それがいきなり、 鉄より強いプラスチックが出来たんだ!」 と思ってしまうかもし
<研究の背景と経緯> 高分子材料は軽量・安価・高成形性といった利点から広く利用され、世界年産約3億トン弱にも達する重要な材料です。しかし、強度や耐熱性などの材料特性が金属などより著しく劣るために高度な性能要求に応えることができません。その原因は、結晶にならない部分の比率(非晶率注4))の高さにあります。結晶性高分子は長いひも状分子ですが、融液(液体)中で毛玉のように互いに絡み合う部分が多いために、これらが薄い板状結晶にしかなれず、非晶と結晶が層構造を成し「球晶」というゴルフボールのような結晶体になります(図1)。つまり、球晶内には結晶にならず、固化しただけの非晶が半分以上残ってしまうのです。そこで世界中の科学者たちは結晶化度注5)増大の方策を探求してきましたが果たされず、現在に至っています。その難点を補完するために、高強度と高耐熱性などを特長とするスーパーエンジニアリングプラスチック(スー
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