皆さんにとって、日本の漁業、水産業とはどんなイメージでしょうか? 幕末の時代と類似する日本の水産業 水産資源の減少による水揚げの減少、高齢化と後継者不足、漁業従事者の減少、必ずしも十分でない収入、魚離れで消費が減少等のマイナスイメージが強く、衰退していく一次産業の象徴という感が否めないのではないでしょうか? 残念ながら、これらはすべて当てはまっており、統計の数字にもはっきり表れています。しかし、この現実は、日本特有のものであり、世界の潮流とかけ離れてきてしまっているのです。ちょうど欧米で産業革命が進んでいるときに、日本が鎖国をしていて、世界の潮流を知らなかった幕末の時代に類似しているように思えます。それほど、日本人が理解している水産業と、世界の水産業の現実は異なっているのです。 早い者勝ちのオリンピック方式が招く資源の減少 必ずしも世界各国の水産業が成長しているわけではありませんが、衰退し
我々、日本人が、今、議論すべき事は、「調査捕鯨を続けることが日本の国益に適うかどうか」である。シーシェパードへの感情論とは切り離して、調査捕鯨を継続するかどうかを、日本の問題として判断する必要がある。 調査捕鯨の歴史 南氷洋の捕鯨について簡単におさらいをしよう。戦後、食糧難を緩和するために、日本は米国の協力を得て、南氷洋捕鯨を国策として推進した。極洋、ニッスイ、大洋という3つの大手企業が参入したが、南氷洋のクジラが減少したことと、日本で鯨肉が売れなくなったことで、収益が悪化した。3つの会社の捕鯨部門を統合して、共同捕鯨という会社をつくったのである。 その後、南氷洋モラトリアムによって、日本は商業捕鯨を継続できなくなった。商業捕鯨再開を目指す日本は、鯨類研究所を設立し、共同船舶(共同捕鯨が名前を変えた)に調査を委託するという形式で捕鯨産業を守ったのである。この辺の歴史については、いくらでも資
図の青の部分が産卵場で獲られた成熟群、赤の部分は日本海北部漁場(能登から新潟にかけて)で獲られた未成漁である。操業が本格化した翌年から、産卵群は直線的に減っていることがわかる。6年間で7%に落ち込んでしまった。2007年から、北の方の未成漁にも手を出している。海に残しておけば、来年から産卵群に加わる群れを、根こそぎ獲っているのである。今年は、6月から漁が始まって、ほぼ2週間で未成漁の群れを獲り尽くしてしまった。 クロマグロは年によって、卵の生き残りが大きく変動することが知られている。特定の年齢を取り出してみれば、多いか少ないかは、環境変動に依存する部分が大きい。しかし、産卵群は数十年の親魚がストックされているのだから、1年、2年の卵の生き残りではそう大きく変わらない。寿命が長いクロマグロの産卵群が上の図のように直線的に減少するのは、自然現象で説明できない。産卵場でのまき網による乱獲が原因と
漁業全体の損失を計算する 漁業全体の損失を計算するには、今、日本全体でヨコワをどれぐらい獲っているかのデータが必要になる。しかし、クロマグロの年齢別の漁獲統計はどこにもない。上の図はあるのだから、データ自体はあるはずだ。遠洋水産研究所の知り合いに問い合わせてみたら、「政治的にセンシティブだから出せません」とのこと。海外の自然保護団体への対策として、日本のマグロの漁獲統計は完全に非公開だそうです。日本の研究者が、日本の漁業を良くしようという意図であっても、まともな試算すらできないのが、日本の寂しい現状。窮余の索として市場統計を使 うことにします。 市場統計によると、日本の産地市場に水揚げされたヨコワは、2004-2008年の平均で年間4856トン、生産金額は平均で27億円であった。ヨコワを1歳魚と仮定すると、4年後に巻き網で獲れば408億円、6年後に一本釣りで獲れば2235億円の生産金額が期
付属書I留保 日本漁船は地中海で操業を続行する。ワシントン条約に留保したリビアなどから、黒いマグロが日本にくる。EUの正規漁業は止まるので、不正漁業と日本漁船の天下になり、短期的には美味しい思いができる。当然、漁獲規制は、有名無実になり、資源は消滅。欧米で、日本製品不買運動が広まる。 付属書I留保せず ほぼ全ての漁業が停止するが、資源は守られる。 付属書II 日本留保 日本漁船とEUの正規漁獲が中心になるが、日本は黒いマグロも買えるので、不正漁業も生き残る。漁獲枠は守られず資源は減少。欧米で、日本製品不買運動が広まる。 付属書II 日本留保せず 日本とEUの正規漁獲のみ生き残る。漁獲枠は、守られ、資源は徐々に回復。輸入も維持できる。 ワシントン条約の規制がなし 不正漁獲が蔓延し、漁業が消滅。ワシントン条約の枠組みを破壊した黒幕として、後ろ指を指される。 当初は、タイセイヨウクロマグ
前回の記事は予想以上の反響で驚いた。書いてみるものだとおもった。「不正漁獲の話しはちゃんと新聞に載っていた」という書き込みをいただいたのだが、俺も新聞は気をつけてみていたけれど、不正漁獲についてまともに書いた記事は見つからなかった。「隠した」という表現は言い過ぎかもしれないが、きちんと伝えていなかったとは思う。不正漁獲の蔓延が、ICCAT不信の根幹にある以上、不正漁獲の実態を知った上で、それにどう対処していくかを、考えないといけない。その判断材料になるレベルの報道があったなら、「ワシントン条約断固阻止」という世論一色にはならなかっただろう。 不正漁獲の背景 クロマグロ激減の要因は、2000年ぐらいに、日本の商社が、地中海にもちこんだ、畜養である。畜養の手順は、だいたい、こんな感じ。 1)産卵場で待ちかまえて、産卵群を巻き網で一網打尽にする 2)網の中でマグロを生かしたまま曳航し、いけすに入
現在もカタールで開催中のワシントン条約締約国会議だが、大西洋クロマグロを絶滅危惧種と指定し、国際的な商業取引を禁止するモナコ提案については、日本時間で一昨日の夜、予想外の大差で否定された。 否定の先頭に立っていたのが日本であることから、日本の主張が国際的に認められたという印象もある。当初の予想では、米国もEUも賛同しているモナコ案が優勢とも見られていたので、否決は意外という印象もあったし、私としても、やや意外感はあった。 事前の国内ニュース報道などでは、これでもう日本人はマグロが食べられなくなるといった印象を撒いているものがあった。だが、この海域からの日本のクロマグロ輸入割合はマグロ全体の5%ほどにすぎず、また冷凍品も1年ほどのストックがあることから、モナコ案が通っても庶民の食生活にはそれほど大きな問題にはならないだろう。みなさん、そんなにクロマグロなんて食べてないでしょ。 それでも絶滅が
2008年3月20日、フランスのブローニュシュルメール(Boulogne-sur-Mer)港で漁船の上を飛び交うカモメ。(c)AFP/DENIS CHARLET 【4月11日 AFP】乱獲、気候変動、汚染などで世界中の海が大きな被害を受け、数百万人の将来の食料安全保障が脅かされている。 政府、環境団体、大学などの専門家数百人が参加してベトナムのハノイ(Hanoi)で開かれ、11日に閉幕した海洋・沿岸・島嶼に関する世界会議(Global Conference on Oceans, Coasts, and Islands)で、このような警告が出された。今回の会議の主要議題は、海洋生態系と食料安全保障。 地表の3分の2を覆う海は、世界のタンパク源の5分の1を供給する。しかし、魚類資源の75%はすでに利用し尽くされているという。 ■唯一の道は魚類資源の保護・再建 専門家によると、海水温上昇はサンゴ
食品の4分の1が捨てられている 2008年2月 8日 環境社会 コメント: トラックバック (0) (これまでの藤倉良の「冷静に考える環境問題」はこちら) ■捨てられる食品 先月のブログで「農薬が混入していたインスタント食品みたいなものは論外」と書いた。その論外な話題でマスメディアが大騒ぎだ。今のところどのような経路で冷凍餃子に農薬が混入したのかは明らかではない。故意か偶然がわからないが、いずれにしても合法的な行為ではなさそうだ。そのことと、合法的な食品添加物や賞味期限についての「食の安全」の話は分けて考えなければいけない。 話を賞味期限に戻そう。私の周辺にも賞味期限や消費期限に頼りきりの人がいる。まだ食べられるか、もう食べられないかを自分で判断しない。期限切れの食品はためらいなくゴミ箱へ直行。 食べずに廃棄されている食品はどれだけあるのか。 食料に関するデータは、農林水産省が食料需給表
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