人生リハビリ日記。私が最近読んでいた野家啓一『パラダイムとは何か ─ クーンの科学史革命』(講談社学術文庫、2008年)は、以前講談社からハードカバーで出ていた、20世紀の哲学者・思想家を一人一冊で紹介していく「現代思想の冒険者」シリーズのうち、アメリカの科学哲学者トーマス・クーンを扱った一冊をタイトル変更の上で文庫化したものです。 文庫化するに当たって本のタイトルが変更されたもっとも大きな理由は、著者の野家氏がこの本の意義をクーンの伝記的著述という側面に置いていなかったという点にあるようです。 ……本書を通じて私は自分自身が格闘してきた20世紀の科学史・科学哲学の肖像を描き出したいと考えている。そのため本書が目指すのは、トーマス・クーン個人の評伝ではなく、クーンの出現によって大きな展開をとげた20世紀の科学史・科学哲学そのものの評伝にほかならない。 その理由の第一は、クーンはその急