昔話と日本人の心 (岩波現代文庫 学術 71) 作者:河合 隼雄岩波書店Amazon『昔話と日本人の心』は、河合隼雄の数多い著作の中でもとくに名著として名高い。河合は、西洋の近代的自我の成立過程を解き明かしたユング派分析家エーリッヒ・ノイマンの『意識の起源史』における方法論を援用しながら、日本の昔話を分析することで、日本人のアイデンティティの探ろうとしている。ただし、河合はノイマンの方法論をそのまま日本の昔話分析にあてはめるわけではなく、独自の方法を見出すことも本書の狙いであるとする。まず、西洋における自我は神話や昔話の英雄に象徴されるように男性像によって表されるが、それに対して河合は日本人の自我は女性像で示すのが適切であるという。また、印象的なのは、「抽象的な議論よりも、ともかく昔話のもつ直接的な衝撃力に触れることの方が、説得力が第である」(第1章)という河合隼雄の昔話に対する姿勢である