→紀伊國屋書店で購入 「文学の組み換えのために」 1980年代頃から、日本の文芸批評では「近代文学の終わり」が公然と指摘されるようになった。日本社会の大衆化・メディア化が進むなかで、明治以来の文学世界――本書の言い方を借りれば「安下宿に住んでいる文学青年とその延長にある人びとの視野にあるだけの世界」――はややもすれば文壇のお座敷芸に近づき、社会的影響力を失っていったのである。そして、その退潮に伴って、日本文化の母胎も移動した。たとえば、ポップカルチャーに対する昨今の関心の高まりは、日本近代文学の対象領域の狭さに対する、一種の反動とも捉えられるだろう。特に現代の漫画は、「安下宿の文学青年」から遠く離れて社会風俗を貪欲に組み込むことによって、一種の教養的ジャンルとしての性格を持つに到っている。 さて、丸谷才一氏は早くから、日本の近代文学――特に私小説――の貧しさから脱したところで言論活動を展開
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