ボートレース浜名湖のある湖西市新居町に市井の言語学者がいた。その名を山口幸洋さん(やまぐちゆきひろ・1936年〜2014年)という。 昭和11年、静岡県新居町に生まれ、地元の商業高校卒業後は家業に従事していたが、方言に関心をもつようになり各地の特徴を徹底的に調べ上げた。昭和60年には新村出賞を受賞している。 当初、その研究を相手にする者はいなかったが、徐々に注目されるようになり、東京大学の教授をはじめ、著名な言語学者が教えを乞いにたびたび新居町を訪れていたのは知る人ぞ知る事実である。 『学歴でなく実地でかせぐ独学研究家』は、その後静岡大学人文学部の講師を経て教授に任命されている。また、大阪大学からは文学博士の学位が与えられている。 その山口幸洋さんが解明し、いまでは通説となっているのが『音声言語のアクセントの境界線が浜名湖にある』というものである。(『日本語方言一型アクセントの研究』ひつじ