痛みの解明 山根明季子 はじめに 泣きたくなる感覚がある。心の動きに関する感覚なのだが、それが痛み(いたみ)のような感覚とともに起こることがある。ガラスケースぎゅうぎゅう詰めのぬいぐるみを放っておけないのは、私の勝手な癖だ。私の身体はこれまで年に2-3万人の自殺者を出す高度資本主義日本社会に流れるリアリティの、小さな一端を受信し続けてきた。 資本主義社会において「ポップ」であることとは、大衆向けで一般に広く親しまれていることを意味するのだとしたら、その意味では私がこれまで作ってきた音楽は「ポップ」とは軸がずれている。しかしその一方で、私はずっと私自身を取り巻く環境に直通する「ポップ」という思想・現象を意識して作曲をしてきた1。そのことについて考えていくうちに、「泣きたくなる感覚」が、大衆性(「ポップ」)と深部で結びついていることに気が付く。正体のわからない痛みを顕在化させることへの欲求が、