診断学は時空を超える【1】 あたりまえのことですが、昔も病気はありました。現代のような医学知識、医療技術がなかった頃はどのように病名をつけていたのでしょう。 怨霊に苦しめられて死んだ光源氏の正妻 約1000年前の平安時代中期に書かれた「源氏物語」には、中心人物が怨霊(おんりょう)に苦しめられる話が出てきます(怨霊は「夕顔」「葵」「若菜下」「柏木」の各巻に登場します)。源氏物語は架空の物語ではありますが、そこに描かれているのは、当時の貴族の風俗、生活、常識です。「怨霊」の話も、現代の私たちから見れば単なる怪談話ですが、平安時代の貴族たちにとっては、リアルで身近な現実の話であったのです。とりわけ「葵」の巻では、怨霊はドラマティックに登場します。 光源氏の正妻で、妊娠中の葵の上は、賀茂祭(葵祭)に車で出かけます。車争い(見やすい場所の取り合い)で、六条御息所(源氏の年上の恋人)に恥をかかせること