米共和党のドナルド・トランプ前大統領が演説中に銃撃された事件を受け、米マサチューセッツ大学ローウェル校の犯罪学・法学の教授、アリー・パーリガーがメディア「カンバセーション」のインタビューに応じている。 パーリガーは、銃弾があと少しでもずれていれば、米国で内戦勃発の可能性もあったと指摘しているが、その理由とは?
ドナルド・トランプ前大統領の暗殺未遂事件に使われた銃弾の軌跡を、米紙「ニューヨーク・タイムズ」の写真家が捉えていたと同紙が報じている。トランプの頭部を弾丸がかすめた決定的瞬間の写真だ。 同紙の取材に応じた元FBI特別捜査官のマイケル・ハリガンは「発射物による空気の変異を示している可能性がある」、「耳をかすめるには角度が低いように思えるが、銃撃犯が複数発の弾丸を発砲したとすればありえない話ではない」と述べている。 撮影したダグ・ミルズは1秒間に最大30フレームの画像を撮影できるソニーのデジタルカメラを使用しており、1/8000秒のシャッタースピードで撮影していた。 犯人の男性はAR-15型自動小銃を使用していたとされる。ハリガンによればAR-15の弾丸は秒速3200フィート(約975m)で、シャッター速度が1/8000秒であればシャッターが開いている間に4/10フィート(約12センチ)飛ぶこ
元受刑者は犯罪歴が労働市場で不利になるため、出所後に起業を選ぶことが多い。 だが、過去に犯罪を犯した人へのステレオタイプを払拭し、彼らに多くの選択肢を与えることは、経済にもメリットをもたらす。そう語るのは、米ペンシルベニア大学のビジネススクール、ウォートン校のデイモン・フィリップスだ。 労働力不足が深刻化する日本でも、必要とされる問題について考えよう──。 出所後の起業率が高い理由 デイモン・フィリップスは、出所後の元受刑者の起業率が一般人と比べて5%高いことを発見した。起業後の再犯率も低くなることがわかった。 とりわけ、出所後の黒人男性の就職には高い壁が立ちはだかるため、彼らは起業することが多い。彼らにとっては、普通に働くよりも起業するほうが高収入を得るチャンスが高くなるのだ。 これは、犯罪歴のある就職希望者を差別する雇用者にとって、そして刑務所内の囚人たちを救うために予算を割いている政
This article is republished from New Lines Magazine. コロンビア大学は「リベラル強制収容所」 パク・ヨンミは、ジャーナリストに対して自己弁護をするのにうんざりしている。「これは全部、本に書きました。百万回も説明しているんです」。45分に及ぶ、緊張した、ときにシュールなインタビューの終わり際に彼女はそう言った。「彼らは私を信じようとしなかったんです」 パクはかつて、主力メディアでもてはやされた。2014年のダブリンでおこなわれた青年サミットで、彼女が情感たっぷりに脱北経験を語ったスピーチが大々的に拡散されると、当時の居住国であった韓国の二流セレブから、世界で最も有名な脱北者のひとりに転身したのだ。 「ニューヨーク・タイムズ」や「デイリー・ビースト」などのメディアが、読者に固唾を飲んで読ませる記事を掲載した。たちまちパクはエリートの一人として
こんな取材の始まりはめったにない。「あなた方の記事が私たちにとって手厳しいことになることを期待しています」と、ロイヤルブルーのベルベットの高級ソファーに座るなり、マルコム・コリンズは真剣な眼差しで言う。妻のシモーヌも即座に同意する。「生ぬるいのは面白くないわ」 分厚い黒縁メガネ──夫は角型、妻は丸型──をかけて、流行に敏感なオタクのように見えるコリンズ夫妻は、危険な扇動者にはとても見えない。しかし、30代のこの2人は──夫は36歳、妻は35歳──出生主義運動を存続させるための聖戦のさなかにある。 そして彼らは、その尊敬される顔役となることを厭わない。数ヵ月前から、彼らは迫り来る大災害、つまりは文明の「人口崩壊」を警告している。彼らの信条は、できるだけ多くの子供を作るように人々を促すことである。 ペンシルバニア州フィラデルフィアから車で1時間ほど、コロニアル様式の石造りの家で夫妻は迎えてくれ
米国の2024年大統領選まで1年を切った。共和党はドナルド・トランプ前大統領が独走中で、すでに2期目へ向けて「恐ろしい計画」を練っているという。 2023年11月5日の朝、ドナルド・トランプの「大統領復活」を恐れている人々にとっておそらく今年最も憂鬱なニュースが相次いで飛び込んできた。 午前5時、ニューヨーク・タイムズとシエナ・カレッジが実施した世論調査の結果が報じられた。勝敗の鍵を握るスイングステート(激戦州)6州のうち5州で、なんとトランプが現職のジョー・バイデン大統領をリードしていた。 そして午前6時には、その衝撃の結果が何を意味するのかを再認識させるニュースが伝えられた。トランプは2期目には司法省を支配して政治利用し、政敵への報復を企んでいるという暴露記事をワシントン・ポストが公開したのだ。 トランプは2期目では権力をさらに掌握して独裁色を強めるつもりだ──ワシントン・ポストをはじ
新著『Z世代のアメリカ』で「アメリカのダブル・スタンダードを批判する若者たち」に光を当てた国際政治学者の三牧聖子氏に、米国の若者たちはいま起こっているイスラエルとハマスの戦争をどう見ているのか、話を聞いた。 パレスチナにより共感する米国のZ世代 この7月に出版した『Z世代のアメリカ』では、2023年3月にギャラップ社が米国で実施した世論調査を紹介しました。 イスラエル・パレスチナ問題をめぐってどちらにより共感するかという問いに対し、民主党支持者のなかでパレスチナに共感すると答えた人が、イスラエルに共感する人と回答した人を10ポイント以上も上回ったのです。過去20数年超、同じ世論調査を続けてきて初めてのことでした。 イスラエルが建国されて以来の米国との「特別な関係」を考えても、米国内で広く共有されてきた親イスラエル世論に照らしても、特筆すべき変化です。 1948年にユダヤ人国家としてイスラエ
長年シリコンバレーでの取材を続けるIT記者ブラッド・ストーンは、米メディア「ブルームバーグ」にて、テック業界の動向について解説している。 2022年、たびたびその言動が注目されたイーロン・マスクとスティーブ・ジョブスの共通点を見出しながらも、両者には“致命的な違い”があるとして、ストーンはツイッターの今後を危惧している。 超“有望企業”のはずが… 2022年10月下旬、すでに紆余曲折を経たイーロン・マスクとツイッターの物語が新しい章の門出を迎えた。同月27日、米電気自動車(EV)大手テスラ社のCEOを務めるマスクは、シンク(流し台)を抱えてツイッターのサンフランシスコ本社を訪れ、同社に一石を投じる覚悟を比喩的に表現した。 波乱に満ちた二日間でツイッター買収を完了した彼は、同社の上層部を解雇し、自称「チーフ・ツイット(註:ツイッターのトップの意)」の座に君臨した。世界一の大富豪が、世界一の音
痛ましい事故や事件が絶えないにもかかわらず、米国人はなぜ銃を手にするのだろうか? 銃を持つことが権利として認められている米国で人々がこの武器に手を伸ばす理由を、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が心理学的な視点から読み解いた。 2020年、新型コロナの感染拡大によって多くの地域がロックダウンされ、抗議デモが街頭にあふれ、経済不安と社会的孤立が深まった。 そうしたなか、米国人がこぞって買い漁ったものがある。銃だ。 その年、銃の販売数は約2200万丁と、2019年から64%増を記録した。銃器産業の業界団体である全米射撃協会によれば、そのうち800万丁以上が、それまで銃を所有したことのない人に売られたという。 同年、銃による殺人件数も、2019年の1万4392件から1万9350件に増加した。自殺を含む銃による死亡者数は、2019年の3万9702人から4万5222人に増えた。2021年には銃による死亡
1996年、米国で、オピオイド系の麻薬性鎮痛薬「オキシコンチン」が発売された。その年、医学誌にはこんな広告が掲載されている。 2つのカップがスポットライトに照らされていて、片方には「朝8時」、もう一方には「夜8時」と書かれている。そして、キャッチコピーがひとつ。 「たった2錠で、痛みが和らぐ」──。 新薬で見た「地獄」 オキシコンチンが発売された当時、42歳の主婦だったエリザベス・キップは、とある米カンザス州カンザスシティの医師を訪れた。 彼女は14歳のときに乗馬大会の練習中に落馬して以来、ずっと腰痛に悩まされてきていた。それからというもの、短時間作用型の鎮痛剤をずっと服用してきたが、その日、医師に新しい薬を試してみないかと提案された。 オキシコンチンを12時間ごとに1錠服用する、というのが医師の指示だった。彼女は、その指示をしっかり守ったという。 「科学者気質だから、こういうことは厳格に
「ここはポリアモリーにとっての安息の地」。米「ニューヨーク・タイムズ」紙はそう表現する。人口約8万人、マサチューセッツ州の町サマービルへようこそ。 2020年6月、サマービルは米国で初めて、「ポリアモリー」の人々に「事実婚の権利」を認めた自治体になった。それにより、彼らはパートナーの勤め先の福利厚生を享受したり、病院へ見舞いに行ったりできるようになった。ポリアモリーとは、「全員が同意し、状況を理解したうえで複数人での恋愛関係を持つこと」である。この町はここ4年間、ポリアモリーの世帯に向けられる差別を制限する数々の取り組みをおこなってきた。
米国の貧困社会のからくりを暴きピュリツァー賞を受賞したプリンストン大学教授マシュー・デスモンド。自らも大学生のときに立ち退きに遭ったという彼が、新作では「持てる者と持たざる者が暗黙のうちに交わす契約」を紐解く。 2016年、ドナルド・トランプが米大統領選挙に勝利したとき、国内のリベラルなジャーナリストたちからは、トランプ勝利をもたらした「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」の“取り残された”市民の存在を考慮しなかったことに対する反省の声が多くあがった。 プリンストン大学教授マシュー・デスモンドによる『立ち退き:アメリカ都市の貧困と利益』(未邦訳)は、まさにその年に出版された。彼はその本で、ないがしろにされ続けていたものが何だったのかを非常に印象的に記している。 2008年から2年間、デスモンドは米国社会で最も厳しい状況に置かれている人々と生活を共にした。最初はトレーラーパーク、次いでウィス
ブルース・ハリウッド(57)米退役空軍大佐は、日本に住む産みの母親を見つけて、感謝の気持ちを伝えることができた。それで充分だった。かつて空軍にいたという父親を探す必要性は感じなかった。 ハリウッドは、母親ノブエ・オオウチと親しい関係を築けたこと、そして彼女の献身に感謝していた。赤ん坊を米国人夫妻に養子に出したあと、ノブエは経営する食堂に「ブルース」という名前をつけ、いつか息子が戻ってきてくれると信じていた。 ノブエは正しかった。2006年、ハリウッドが46歳のとき、2人は再会を果たしたのだ。そのときノブエは父親の話もしてくれた。 2人が出会ったのは1959年のこと。すぐに恋に落ちて、結婚する計画を立てた。ところが空軍兵だった彼に帰任命令が出た。ノブエが妊娠していることは2人とも気づかなかった。 帰国したらすぐに電話をすると言ったのに、彼が電話をよこしたのは何ヵ月もたってからだった。こんな男
3月22日、米サウスウェスト航空のパイロットが飛行中に体調不良を訴えたが、同機にたまたま搭乗していた非番のパイロットの助けで事なきを得た。 コックピットにいたパイロット2人のうちの1人が操縦できない状態に陥ったのは、ラスベガスを離陸してまもなくのこと。そこで、機内にいた別の航空会社のパイロットがコックピットに入り、もう1人のパイロットを補佐して、急きょラスベガスに引き返した。 これは運よく非番のパイロットが居合わせたおかげで大事に至らなかったケースだが、そんな偶然はきわめて稀だ。 では、機内にそれらしき人がいない場合、素人でも緊急着陸させることができるのか? なんと米国人の約3分の1が「飛行機を緊急着陸させる自信がある」と考えているようだ。 調査会社ユーガブは1月に、米国で約2万人の成人を対象にアンケート調査を実施した。設問はこうだ。 「緊急時に旅客機を安全に着陸させる自信はどれくらいあり
ニューヨークで毎年行われるメイシーズの感謝祭パレード Photo by James Devaney/Getty Images アニメ『ポケットモンスター』からサトシとピカチュウが引退するというニュースは、日本だけでなく、これまでポケモンが愛されてきた世界中の国々で話題となった。 米公共放送「NPR」は、この出来事を「一つの時代の終わり」と表現。番組「It’s Been A Minute」内で、ポケモンに縁の深い人々にインタビューをおこなった。 ゲストとして招かれたのは、アニメの英語版でサトシ(英語版ではアッシュ)役を演じる声優のサラ・ナトチェニー、オンラインメディア「ヴァイス」の記者であり日本文化批評家のデクスター・トーマス、そしてポケモンにまつわる著書を持ち、主に日本のアニメを配信する米国のストリーミングサービス「クランチロール」でライターを務めるダニエル・ドッケリーだ。 サトシとのお別
今は予定が無いけれど、いつか自分の子供を持ちたい──そう考えている女性にとって、迫ってくる妊娠や出産のタイムリミットは焦りをもたらすものかもしれない。そんな時の手段のひとつに「卵子凍結」がある。 費用も時間もかかる手段ではあるが、今はこの卵子凍結が当たり前の選択肢の一つになりつつあるという。女性たちの経験談も交えて「ニューヨーク・タイムズ」が報じた。 卵子凍結は「人生の選択の一部に過ぎない」 今後は卵子凍結を「実験的な処置」として扱わない──2012年、アメリカ生殖医療学会はそう報告した。 卵子凍結という処置はそれまで、化学療法をはじめとした、何らかのダメージが身体に残る治療を経験した人を中心に施されてきた。だがアメリカ生殖医療学会はこの年、卵母細胞の冷凍保存は受精を可能にし、それは体外受精と同等の妊娠率があるとのエビデンスを示したのだ。 将来のために卵子を残し、妊娠のタイミングを遅らせた
男女ともに30代半ばになると生殖能力が低下し、子供を持ちにくくなることが知られている。しかし、現代ではより多くの人が高い教育やキャリアを求め、特に女性は結婚や出産を遅らせるようになった。しかし、そうすることで女性の結婚相手としての魅力はどう変化するのか、米ペンシルベニア大学ウォートン校で研究が行われた。 結婚相手としての魅力と生殖能力の関係 米ペンシルベニア大学ウォートン校のコリン・ロー准教授は、新たな研究結果を発表した。そこで導き出されたのは、女性が年齢を重ねても恋愛の相手として魅力的であり続けるには、1歳ごとに年収が7000ドル(約90万円)多くなければいけないということだ。 ビジネス経済学と公共政策の教授であるローは、2つの論文を書き上げている。そこで明らかにされたのは、「受胎資本」という生殖能力の経済的価値だ。また、女性が教育やキャリア形成に時間をかけることで失うものについて考察し
各地に散らばる戦争花嫁の家族 ──トールバートさんは全米各地に暮らす戦争花嫁とその家族にインタビューする活動をされていますが、これまで何人くらいから話を聞けましたか。話を聞いていて意外に思ったことはありましたか。 戦後に渡米した日本人女性とその家族の両方を合わせて100人以上をインタビューしています。戦争花嫁本人だけでなく、その夫や子供たちの話も聞いているのです。 私はこのプロジェクトを始めるまで、戦争花嫁について、ほとんど何も知りませんでした。私が生まれ育ったのはニューヨーク州の小さな町で、私の家族以外に戦争花嫁の子供は周囲に全然いませんでしたからね。プロジェクトを始めてみて、戦争花嫁の家族が米国にこんなにいるのかとびっくりしたのが率直な感想です。 全米各地に散らばって暮らす戦争花嫁とその家族をどうやって探せたのかというと、私は以前、『七転び八起き アメリカへ渡った戦争花嫁物語』というド
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