身近なところでは写真、デジタル画像、手紙、記録書類。 これは自分にとって大切と思う個人のものに始まって、家族、学校、企業、街、都市に広がるそれぞれの記録を保存し、選別し、必要なら修復して残す、「アーカイブ」。 今どのように考えられているのでしょうか。 写真を繕うことは、思い出を繕うこと。 東日本大震災の折に、津波で傷んだ写真を修復するボランティア活動が工学院大学と神戸学院大学の建築研究室を中心に生まれて、私たちも「くらしの良品研究所」からの発信でご紹介しました。発生から5年目を迎えようとするあの大震災は、人命だけでなく過去から繋がった多くのものを奪い去りましたが「写真」もその一つ。思い出のよすが(縁)とも言える写真は人の生きた証なので被災者の方々からの反響は大きなものがありました。送られてくる写真の汚れ具合や痛み具合をよく見て、修復できるものとそうでないものとによりわけ、できるものの表面の
月のない夜、一寸先も見えない闇に囲まれて、恐怖に身をすくませたのはいつのことだったでしょう。どこもかしこも明るくなった現代では、真夜中ですらそんな恐れを抱くことはなくなりました。暗闇が、ものすごい速さで各地から消えているように思います。闇を失うことで、かえって見えなくなってしまったものがあるのでは。今回は暗闇について考えてみました。(画像:ヨーロッパの都市の夜の衛星画像) 光は善、闇は悪 心の闇、社会の闇というように、「闇」にはおおよそ悪いイメージがついてまわります。キリスト教や古代イランのゾロアスター教をはじめ、多くの神話や宗教でも、光と闇は善と悪の対立として描かれています。私たちの国にも「天の岩戸」の神話があり、天照大神(あまてらすおおみかみ)が岩戸に引きこもるや、世界は闇に包まれ、さまざまな災いが起きたとされています。人間が火を使うようになったのはいつのことか定かではありませんが、日
春告鳥とも呼ばれるウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声や満開に咲く桜の木々は私たちに春の訪れを感じさせてくれます。世の中が春の知らせを受け取る頃、秋田の山々にはまだ多くの雪が残っています。4月になるとその雪も少しずつ解け始め、ふきのとうが顔を出し始めます。秋田弁で"ばっけ"と呼ばれる山菜で、秋田の春はばっけを食べることから始まります。「食べてみたい」と思っても山に入って山菜を採るなんて都会の人にはなかなかできないものです。今回はそんな山のめぐみである山菜を、あなたに代わって山の名人たちが採ってきてくれるユニークなサービスを運営している『株式会社あきた森の宅配便』の代表取締役を務める"山菜ガール"こと、栗山奈津子さんと山の名人たちをご紹介します。 若き山菜ガールが都市と里山をつなぐ 秋田県と青森県の県境にほど近い秋田県北東部に位置する小坂町。鉱山で栄えたこの町は、十和田湖高原や白神山麓など
漬物と言えば、漬物樽に重石が乗っている姿をイメージする方も多いはず。 秋田県湯沢市の雄勝地区では冬の時期になるとそのイメージを覆す漬物作りの風景を見ることができます。 いぶし小屋と呼ばれる小屋から煙が登り、なんとも言えない香ばしい香りがあたりを包みます。 昭和38年創業の雄勝野きむらやはこの焚き木干し沢庵の製法を確立し、"いぶりがっこ"という名前を名付けた生みの親です。 「いぶりがっこと言えばきむらや、その味を広めたい」。と、力強く語るのは三代目の木村吉伸さん。 今回は一度食べたらやめられなくなるいぶりがっこの魅力を伺いました。 いぶりがっことは 最近では居酒屋のメニューで見かけることも増えてきたいぶりがっこの文字。 がっこという可愛らしい響きは秋田弁で漬物を表す方言です。 もともとその香りの良さから「雅香」と言われたのががっこの語源という説もあります。 つまり、いぶりがっことは燻した漬物
「電気もガスも水道も止まって、何もなくなったとき、 生き延びていくために、どのように行動しますか?」 そう問いかけるのは、石巻工房の千葉隆博(ちばたかひろ)工房長です。 「ある居酒屋は、店主自らが店を直して、いち早く営業を再開していたんです。 結局、DIYできた人が一番、復興が早かったんですよね」 東日本大震災によって、未曽有の被害を受けた石巻市。 石巻工房は、そんな石巻市の商店街で、 東京のデザイナーを中心とした有志から提供された補修道具や木材を基に、 復旧・復興のための誰もが自由に使える公共的な施設としてスタートしました。 「当時、"待ち得"って言葉がありましてね。 待っていれば色々もらえるので、被災者は待ちの姿勢になっていたんです。 ただ、そうなると人間ダメになっていくんですよ」 そう当時の様子を振り返りながら、 いつまでも支援に頼りきりの状況に、危惧を覚えていたと話す千葉さん。 そ
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