ベッカ・スティーブンスという人はわかるようでわからない音楽家だ。歌はめっちゃ上手い。引くぐらい上手い。そして、めちゃくちゃいい曲を書く。現代のジャズのあれこれの旨味をさりげなくまぶしたようなアレンジも巧みで彼女が書いた曲だってことがなぜかわかるくらいには強力な個性がある。ベッカ・スティーブンスの音楽には彼女のシグニチャーがあらゆる部分に刻まれていて、それらが機能している。にもかかわらず、やっていることはアルバムごとにいちいち異なる。多くの人がベッカの音楽を最初に聴いた『Weightless』から、『Perfect Animal』、『Regina』、そして、グラミー賞を受賞した『Wonderbloom』までどんどん音楽性を変えている。そんなベッカ・スティーブンスが興味深いプロジェクトでアルバムを制作して、また大胆な変化を見せてくれた。 アルメニア人ウード奏者のアラ・ディンクジアン(Ara D