今年の5月15日、中国河南省出身の女性、徐暁さん(52歳)は、かねてから夢だった自分の店「稲花香火鍋城」を、町の中心部近くにオープンさせた。本格的な中国式「鴛鴦火鍋」(ユエンヤンフオグオ=辛口と甘口が半々に仕切られたオシドリ様式の羊しゃぶしゃぶ)を提供し、黒に統一された広いテーブルが、1階と2階合わせて30卓も並ぶ大型店だ。店はオープン以来、ランチタイムもディナータイムも、地元の客たちで大賑わいである――。 と、ここまで書くと、中国の都市でよく見かける光景のように思えるだろう。だが、徐暁さんが店を開いたのは、北京でも上海でもなく、そこから8000㎞も離れたハンガリーの首都ブタペストなのである。 このハンガリー初の中国式火鍋店は、ユーラシア大陸の東側にある中国へなど行ったこともないであろう180万ブタペスト市民を、虜にしているのである。 私は今回、中欧と東欧の計13都市を、駆け足で回ってきた