山下敦弘監督と久野遥子監督の共同作『化け猫あんずちゃん』は、実写映画好きもアニメ好きもどちらも面白がれる作品だ。 本作は、実写映像をトレースしアニメーションを描く「ロトスコープ」という手法で制作されているが、その手法が実写とアニメーション両方の気持ちよさを上手い具合にもたらしている。 カッティング、キャラクターの芝居とセリフの間の取り方は実写映画監督の山下敦弘のセンスだが、運動には手描きのアニメーションのカタルシスに溢れている。デフォルメの効いたキャラクターデザインに、類型的ではない動かし方で各キャラクターの個性を作っていて、動きの省略と強調の塩梅も良い。そして、同時録音の現場の音を活かして、不思議な化け猫や妖怪がいる世界にリアルな空間の拡がりを感じさせる。 幅広い表現が可能なロトスコープ ロトスコープという技法は、1910年代に『ポパイ』や『ベティ・ブープ』で知られるフライシャー兄弟が発