記事:晶文社 『室内生活』(晶文社) 書籍情報はこちら 世が世なら貴族になりたかった 子供のころから本を読むのが大好きで、読書に明け暮れていた。寝転がって本を読む。そのうちに寝てしまう。昼寝から覚めると続きを読む。ずっとベッドの上にいた。 ひとつの理由は、アフリカ(南アフリカ共和国のヨハネスブルグ)で育ったという環境があるように思う。テレビもねえ(当時、かの国にはテレビ放送というものがなかった)、ラジオもねえ(ラジオ放送はあったのだろうが、言葉が日本語でないので家庭では聴く習慣がなかった)、という環境。読書ぐらいしかすることがない。電話とガスはあったと思うが、バスは一日一度も来なかった。学校以外は自分の家が生活のすべて。室内生活者としての基盤が形成された。 近所に友達もいなかった。道を挟んだ斜め向かいにポルトガル系の家族がいて、同い年ぐらいの兄弟が住んでいたが、言葉もうまく通じないし、何よ