タイトルでは「感情」が大きく謳われており、4章構成のうちの1章まるごとは、うつ、不安障害、自閉症の解説にあてられている。しかし、他の3章は、感情のみならず、知覚、認知、推論、そして運動などに関して、自由エネルギー原理の立場から明解に語られている。 自由エネルギー原理(FEP)の自由エネルギーとは、元々は熱力学におけるヘルムホルツの自由エネルギーのことである(熱力学にはこの他ギブスの自由エネルギーもある)。ちなみに実験心理学の父といわれるブントは、ヘルムホルツのアシスタントをしていたらしい。熱力学と感情という一見まるで関係がないように思えるものが、結びついていく展開が素晴らしいサスペンスともなっている。 しかし、このサスペンスは著者の創作ではなく、2005年頃からのフリストン、2010年頃からのバレット(1990年代にラッセルとともに円環構造モデルを提唱したバレット女史である)などによって提