記憶の移植は長らく、典型的なSF(サイエンス・フィクション)のテーマだったが、最近の研究によってそれが現実味を帯びつつある。 米大学の研究者らはこのほど、海に住む軟体動物のジャンボアメフラシの個体から別の個体に、遺伝子のRNA(リボ核酸)を使い、記憶を移植することに成功した。 研究者らはまず、ジャンボアメフラシに刺激に対する防御反応を起こす訓練を行った。その個体から取り出したRNAを訓練を受けていない別の個体に移植すると、刺激に対して訓練された個体と同様の反応を示したという。
米野球選手のレフティ・ゴメスが、「優秀な選手ではなく運のいい選手になりたい」と言ったのは有名な話だ。しかし、成功する上で運が果たす役割はいまだに社会で軽視されており、成功は努力と才能のたまものだとする考え方が主流だ。世界中で収入格差が広がる中、このことは盛んに議論されるようになった。 イタリアのカターニア大学が最近発表した論文では、人間の才能が人生を通してどう使われるかをシミュレーションし、成功する上で運が果たす役割の特定を試みている。 チームが実施したシミュレーションでは、現実世界で見られる富の配分を正確に反映することに成功したが、特に興味深かったのは能力の分布だ。最も大きな富を得たのは、最も才能があるとされた人々ではなく、最も運が良いとされた人たちだった。 シミュレーションで使われたモデルでは、人々にそれぞれ一定レベルの才能(スキルや能力、知性などで構成される)が付与された。才能はサン
暗黒物質がない銀河=6500万光年先で発見-欧米チーム くじら座の方向に約6500万光年離れた銀河には、恒星の材料となる水素などのガスを重力で密集させる「暗黒物質」がほとんど含まれていないことが分かった。米エール大などの欧米チームがハワイの大型望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡による観測で発見した。論文は29日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。 〔写真特集〕宇宙の神秘 コズミックフォト 暗黒物質は宇宙全体の質量の約4分の1を占めるが、正体は解明されていない。銀河を構成する星々は暗黒物質の作用で誕生すると考えられており、暗黒物質が少ない場合は銀河がどのように形成されたかが謎となる。 この銀河「DF2」の大きさは、太陽系を含む天の川銀河とほぼ同じだが、恒星の数は200分の1程度しかない。研究チームは銀河の中心をゆっくりと回る恒星集団の動きから質量を計算し、暗黒物質がほとんどないと結論付けた。(201
(CNN) 米ニューヨーク大学などの研究チームが、体内の「間質」と呼ばれる空間の構造と分布に関する詳細を研究し、「人体の新しい器官を発見した」として、27日の学術誌に論文を発表した。人体で最大の器官かもしれないとの見方も示しているが、この説に対して異論を唱える専門家もいる。 間質は、全身の組織と組織の間の液体で満たされた空間をさす。間質組織や間質液については従来から知られていたが、今回の研究では、これまで認識されていなかった人体の機能が解明されたとして、間質を「器官」と呼ぶことを提唱した。 「当初我々は、これを単なる間質組織と考えていた。だが器官とは何かという定義に踏み込むと、器官とは単一構造または単一構造をもつ組織、あるいは単一機能をもつ組織だという考え方に突き当たる」。ニューヨーク大学のニール・シース教授はそう解説し、間質はその両方に当てはまると指摘した。 「この構造はどこを見ても同じ
自分の巣にぶらさがるハイイロゴケグモ(Latrodectus geometricus)のメス。米ルイジアナ州ニューオーリンズのオーデュボン自然研究所にて。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE) 交尾(交接)相手を求めるハイイロゴケグモ(Latrodectus geometricus)のオスは、ときに不合理な選択をする。 理論的には若いメスの方がベターな選択だ――彼女たちは長い求愛行動を要求しないし、高齢の相手よりも繁殖力に富む。また若い個体が交尾相手のオスを生きたまま食べる確率は、高齢の個体に比べると格段に低い。 ところが学術誌「Animal Behaviour」3月号に発表された新たな研究によると、選択肢が与えられた場合、ハイイロゴケグモのオスはむしろ高齢のメスを選ぶ傾向にあるという。 「高齢のメスと交尾するこ
(CNN) 宇宙に1年間滞在した宇宙飛行士は、身体の外見だけでなく、遺伝子にも変化が起きているという研究結果が、米航空宇宙局(NASA)の双子研究の一環として発表された。 この調査では、国際宇宙ステーション(ISS)に1年間滞在したスコット・ケリー宇宙飛行士の遺伝子のうち、7%は地球に帰還してから2年たった後も、正常な状態に戻っていないことが分かった。 研究チームは、ISS滞在中と帰還後のケリー氏の身体の変化を、地上にいた一卵性双生児のマーク氏と比較。その結果、以前は一致していた2人の遺伝子が、宇宙滞在後は一致しなくなっていたという。 スコット氏の遺伝子の7%の変化は、少なくとも5つの生物学的経路や機能に関連する遺伝子が変化したことをうかがわせる。 今回の研究結果は、NASAが進める人体研究プロジェクトのワークショップで1月に発表された。 研究チームは宇宙滞在によって起きる身体的変化を調べ
「アルコールを飲めない遺伝子が進化中」の見出しだけ読むと「最近、ここ数十年でそういう進化が起きた」ようなイメージを受けるが、Natureの元記事を読むに、数千年のスケールで「酒を飲んでも気持ちよくならない人の方が生存に有利」な淘汰… https://t.co/Pfm1ewJTVo
地球の磁気はここ数十年で急激に弱まっていることが、科学者らによって確認されている。ここから予測されるのは、北と南の磁極が入れ替わる「磁極の逆転(ポールシフト)」が近い将来に起こる可能性だ。 地球史において磁極の逆転はかなり頻繁に起きているが、そのメカニズムや時期については謎めいた部分が多い。ロチェスター大学の地質学者らが、最近発表したレポートで南アフリカにおける磁気の変化について報告した。 地磁気の変化は世界のいたる所で、岩石の中に記録されている。これまでの調査で、磁極の逆転現象は過去2000万年の間に、約20万年から30万年に1回のサイクルで発生していたことが確認されている。しかし、非常に恐ろしいことに、最後に発生したのが80万年近くも前のことなのだ。 これまでの周期で磁極の逆転が起きるのであれば、80万年の間に2回や3回、それが発生していても不思議ではない。もしかしたら、人類はもう間も
ディープラーニングの出現により、画像認識や囲碁、将棋といった特定の分野で、人工知能(AI)は人間の能力を上回るようになってきた。さらに最近のAI研究では、人間特有の能力だと考えられてきた「内発的動機」「自己モデリング」といった機能が研究されている。AIを発展させ、汎用人工知能(AGI)を実現していくには何が必要なのだろうか? AI研究の最先端を走る気鋭の3人の研究者がディカッションを繰り広げた。 「人工知能と社会」をテーマに開催された「AI and Society Symposium」。左からモデレータのGeorge Musser(ジョージ・マッサー)氏、アラヤ 代表取締役 金井 良太氏、東京大学 次世代知能科学研究センター 國吉 康夫氏、GoodAI 創業者 Marek Rosa(マレック・ローサ)氏。 汎用人工知能の実現には「内発的な動機」に基づく行動の解明が必要 人工知能をさらに発展
<痛みを感じない、無酸素状態でも死なない、などのパワーで知られるハダカデバネズミが、人間の老化を食い止めるカギを握っていた> 年を取れば取るほど死に近づく──当然だ。ただし、それがハダカデバネズミなら話は別。奇妙な外見をした齧歯(げっし)動物であるハダカデバネズミが、ほかのあらゆる哺乳動物に共通する老化の法則に逆らっていることが、新たな研究で明らかになった。今回の発見は、人間の寿命を延ばし、老化を食い止めるのに役立つ可能性がある。 高齢になるにつれて死亡率が高くなることに関しては、「ゴムパーツ・メーカム(Gompertz-Makeham)法」と呼ばれる死亡率の法則がある。これは、成人以降、年齢が上がるにつれて死亡率も上昇していくことを示す数式だ。科学誌「サイエンス」の電子版によると、人間は30歳以降、8年毎に死亡率が2倍になるという。哺乳動物は、人間から馬、ネズミに至るまですべて、この法則
血を吸う蚊。(Photograph by Joel Sartore, National Geographic Creative) 今度、蚊が血を吸おうと腕に止まっているのを見つけたら、絶対によく狙った方がいい。もし叩き損ねたとしても、その蚊が次にあなたを狙わなくなる可能性があるからだ。(参考記事:「蚊と人間の終わりなき戦い」) 蚊に刺されそうなときに叩くと、蚊は死にそうになった体験とその人の匂いを結びつけて覚え、将来その人を避けられるようになるという研究結果が発表された。1月25日付けの学術誌「Current Biology」に掲載されたこの論文は、刺す相手についての学習能力が蚊にあることをはじめて示したものだ。(参考記事:「【動画】なぜ逃げられる? 蚊が飛ぶ瞬間の謎を解明」) 「パブロフの蚊みたいなものです」。論文の主要な筆者であるジェフ・リッフェル氏は、合図があると条件反射でヨダレを出
火を扱えるのは人間や一部のサルなどの高い知能を備える動物に限られると考えられてきましたが、オーストラリア北部に、火を使って狩りをする鳥が3種類もいるという研究発表がされています。 Intentional Fire-Spreading by “Firehawk” Raptors in Northern Australia | Journal of Ethnobiology http://www.bioone.org/doi/abs/10.2993/0278-0771-37.4.700 Australian raptors start fires to flush out prey | Cosmos https://cosmosmagazine.com/biology/australian-raptors-start-fires-to-flush-out-prey オーストラリア北部に生息する
富田隆文 理学研究科博士課程学生、高橋義朗 同教授、段下一平 基礎物理学研究所助教らの研究グループは、レーザー光を組み合わせて作る光格子に極低温の原子気体(レーザー冷却、蒸発冷却などを施し、真空容器中の気体を絶対温度でナノケルビンの温度にまで液化・固化させることなく冷却させたもの)を導入し、周囲の環境との相互作用によるエネルギーや粒子の出入り(以下、散逸)が量子相転移(圧力や磁場などを変化させた際に量子力学的なゆらぎにより物質の状態が異なる状態へと変わること)に与える影響を観測することに、世界で初めて成功しました。 本研究成果は、2017年12月23日午前4時に米国の科学誌「Science Advances」に掲載されました。 極低温原子気体を用いた量子シミュレーションは21世紀に始まった比較的新しい研究方法で、いまなお大きな発展の可能性を秘めています。今回の研究でシミュレートした開放量子
久しぶりのブログ更新です。今回は、「炭水化物を摂取すると死亡率があがる」「脂肪はたくさん摂っても死亡率に影響がない」ことを示したとして2017年世界中で話題になった以下の論文について、論文自体の問題点やメディアで取り上げられている内容の誤りについてまとめます。 Dehghan, Mahshid, et al. "Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study." The Lancet 390.10107 (2017): 2050-2062. http://www.thelancet.com/journals/lancet/a
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