上京してはじめて会社に入社したとき、そこにいた同期たちから趣味が海外旅行だと自己紹介されるのが嫌だった。 彼らは純粋な親切心からこう言う。 「海外旅行は素敵だよ。いろんな景色を見れて、多様性に触れられて、人生が豊かになるよ。お金?バイトとかで貯めるんだよ。それも良い経験だよ。」 バイド代どころか、借金をしたお金まですべて学費と生活費に充てていた私に、そんな余裕はなかった。彼らが高いお金を払って旅先まではるばる見に行くという、多様性というものの価値観の中に、私のような存在は含まれていないのだろうなと思った。 お給料がもらえるようになって、生活が落ちついて来た頃、家族からお金を無心されるようになった。実家でニートの兄が吸うタバコ代すら、私に出せと言われているような気がした。お金を貸してと言われるたびに、しぶしぶお金を差し出した。この家を救えるのは私しかいない。立派な社会人になれたんだから、私に