2018年ごろ、女子大学へのトランスジェンダー(出生時に割り当てられた性が男性で、性自認が女性の人。トランスジェンダー女性)学生の入学が話題になった時期から、トランスジェンダーと「女性専用スペース」の使用をめぐっての議論が、主としてツイッター上で交わされ、一部論争に発展しています。 この問題の背景には、日本社会における様々な遅れ――性暴力被害者の心情に寄り添い性暴力をなくす取り組みの遅れ、女性や性的マイノリティが恐怖心なく安全に生きられる環境整備の遅れ、国際水準に基づいて女性やトランスジェンダーの人権を保障していく取り組みの遅れなど――が横たわっており、この間の議論には、現状に対する多様な当事者の苦痛の深さがあらわれています。 その根源にあるのは、政治的社会的に形成された日本社会の非常に厳しいジェンダー規範です。構造的な性差別のもとで、性暴力が温存され、多くの性的マイノリティが排除・分断さ