クルーグマンが、DACA打ち切りは日本化への近道だ、と警告を発している。 Meanwhile, I’m one of those who worries about secular stagnation — persistently weak spending, making episodes in which monetary policy can’t achieve full employment even with zero interest rates much more likely. Several factors contribute to this risk, but probably the most important is demography: a sharp slowdown in the growth of the working-age population,
という論説(原題は「Return of the city-state」)を英国のシンクタンクDemos*1のJamie Bartlett*2が書いている(H/T Mostly Economics)。 The case against the nation-state is hardly new. Twenty years ago, many were prophesising its imminent demise. Globalisation, said the futurists, was chipping away at nation-states’ power to enforce change. Businesses, finance and people could up sticks and leave. The exciting, new internet seemed t
「Distortions in Macroeconomics」という小論をブランシャールが書いている(H/T hicksianさんツイート)。 I shall argue that, over the past 30 years, macroeconomics had, to an unhealthy extent, focused on a one-distortion (nominal rigidities) one-instrument (policy rate) view of the macro economy. As useful as the body of research that came out of this approach was, it was too reductive, and proved inadequate when the Great Financ
というNBER論文が上がっている(ungated[IMF]版)。原題は「How Important is the Global Financial Cycle? Evidence from Capital Flows」で、著者はEugenio Cerutti(IMF)、Stijn Claessens(BIS)、Andrew K. Rose(ハーバード大)。 以下はその要旨。 This study quantifies the importance of a Global Financial Cycle (GFCy) for capital flows. We use capital flow data dis-aggregated by direction and type between 1990Q1 and 2015Q5 for 85 countries, and convention
以前紹介した予防的金融引き締め措置に関する論文の続編とでも言うべき表題のNBER論文(原題は「Leaning Against the Wind: The Role of Different Assumptions About the Costs」)をスヴェンソンが書いている(関連ブログエントリ、ungated版もそこでリンクされている)。 以下はその要旨。 “Leaning against the wind” (LAW), that is, tighter monetary policy for financial-stability purposes, has costs in terms of a weaker economy with higher unemployment and lower inflation and possible benefits from a lower
というNBER論文をスティグリッツらが書いている。原題は「Bail-ins and Bail-outs: Incentives, Connectivity, and Systemic Stability」で、著者はBenjamin Bernard(UCLA)、Agostino Capponi(コロンビア大)、Joseph E. Stiglitz(同)。 以下はその要旨。 This paper develops a framework to analyze the consequences of alternative designs for interbank networks, in which a failure of one bank may lead to others. Earlier work had suggested that, provided shocks were n
「Choice of Majors: Are Women Really Different from Men?」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はジョージタウン大学のAdriana D. Kugler、Catherine H. Tinsley、Olga Ukhaneva。 以下はその要旨。 Recent work suggests that women are more responsive to negative feedback than men in certain environments. We examine whether negative feedback in the form of relatively low grades in major-related classes explains gender differences in the
「Race Matters: Income Shares, Income Inequality, and Income Mobility for All U.S. Races」というNBER論文が上がっている(以前のバージョンと思われるWP)。著者はRandall Akee(UCLA)、Maggie R. Jones(センサス局)、Sonya R. Porter(同)。 以下はその要旨。 This paper presents income shares, income inequality, and income immobility measures for all race and ethnic groups in the United States using the universe of U.S. tax returns matched at the individual le
引き続きリンダウ・ノーベル賞受賞者会議ネタ。同会議では、格差に関する懸念が大物経済学者から相次いで表明された、とシティ大学ロンドンのSteve Schifferes金融ジャーナリズム教授がThe Conversationで報告している(H/T Mostly Economics)。 以下は同記事に記された各学者の指摘の概要(括弧内は受賞年)。 ジャン・ティロール(2014) 経済格差はそれ自体が「市場の失敗」の一形態。 格差拡大の政治や社会への影響が、トップクラスの経済学者の関心をますます集めているのは確か。 ジェームズ・ヘックマン(2000) 他の西側民主主義国に比べて米英で格差が急速に拡大した。富裕層を優遇する税制変更がその主因。 社会の移動可能性がとりわけ所得の低い人で低下したことも懸念要因。 過去数十年に急増した一人親家庭の多くが低所得であったことも、格差拡大に寄与した。 ワーキング
と題されたリンダウ・ノーベル賞受賞者会議での講演(原題は「The interdependence of research and policymaking」)の結論部で、マリオ・ドラギECB総裁が、過去10年の経験から得られたという5点の教訓を挙げている(H/T Mostly Economics)。 突然のショックは、これまで見過ごされてきた経路を通じて、我々の政策の枠組みの欠点を露わにし、既存の理論の説明力に課題を突き付けることが多い。しかし、研究者が実施し政策担当者が受け入れてきた分析は、政策対応を設計する上で基本的なものであり続ける。 厳密な研究に基礎を置く政策対応は、政治的妥協によって損なわれる可能性が低く、一般市民への説明も容易である。 「事実が変われば、私も考えを変える。貴兄はどうする?」というケインズの言葉がよく引用されるが、実際のところ、政策担当者にとって事はそれほど単純で
25日エントリで取り上げた(その後Econ101で邦訳も出た)サイモン・レンールイスのミクロ的基礎付けに関するエントリにクリス・ディローも反応し、次のように書いている。 My point here is the one Dani Rodrik has made. The right model is a matter of horses for courses. Atheoretical statistical relationships serve us well most of the time. But common sense tells us they will sometimes fail us. Our problem is to know when that “sometimes” is. This is not to say that the microfounded m
と主張する論文が現下の統計学における最もホットなトピック/議論/展開である、としてFrancis Dieboldが紹介している。論文のタイトルはズバリ「統計的有意性の再定義(Redefine Statistical Significance)」で、Nature Human Behaviorに掲載予定との由。著者は総勢72名に及び、こちらのエントリで紹介したErnst Fehrも名を連ねているほか、日本人では今井耕介氏やShinichi Nakagawa氏の名前も見受けられる*1。 その1行要旨(One Sentence Summary)は概ね表題の通りで、原文は「We propose to change the default P-value threshold for statistical significance for claims of new discoveries from
「Industrial Development and Long-Run Prosperity」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はRaphaël Franck(ヘブライ大)、Oded Galor(ブラウン大)。 以下はその要旨。 This research explores the long-run effect of industrialization on the process of development. In contrast to conventional wisdom that views industrial development as a catalyst for economic growth, the study establishes that while the adoption of industrial technology wa
4-6月期の実質成長率(前年同期比)は、GDP+1.4%、国内需要+0.9%、民間需要+0.9%となりました。 JUST IN: 4-6月GDP年率2.5%増に下方修正-市場予想下回るhttps://t.co/1lTU7owArA pic.twitter.com/XimpPpOOoP — ブルームバーグニュース日本語版 (@BloombergJapan) 2017年9月8日 いわゆるアベノミクス期の特徴は、就業者の増加が著しいことです。 そのため、就業者1人当たり実質GDPの伸び率は低くなっています。 2013Q2→2017Q2は年平均+0.2%に過ぎず、 2012年度→2016年度も年平均+0.4%にとどまっています。 就業者の増加はアベノミクスの成功を示すものとプラスに評価されていますが、裏を返せば労働生産性上昇率の低さを「人海戦術」でカバーしているともいえます。 人口減少に対しては「
安倍内閣総理大臣は2013年9月25日のニューヨーク証券取引所でのスピーチで、 「Money never sleeps」のタイトルさながらに、お金は儲かるところに流れる、その原理は極めてシビアです。 今日は、皆さんに、「日本がもう一度儲かる国になる」、23年の時を経てゴードンが金融界にカムバックしたように、「Japan is back」だということをお話しするためにやってきました。 と述べていました。 しかし、1990年代後半以降、日本経済の成長率は世界経済の成長率を下回っています。 日本経済の成長率低下は、1997年の消費税率引き上げや、不良債権処理を遅らせて金融危機を引き起こしてしまったことなどの経済失政も一因ですが、根底には人口減少・高齢化があります。 検証経済失政―誰が、何を、なぜ間違えたか 作者: 軽部謙介,西野智彦出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1999/10/27メディ
増え続ける企業の利益剰余金(いわゆる内部留保)と抑制が続く人件費を対比する記事には、会計に詳しい人々から「利益剰余金は現預金ではないので人件費には回せない」との批判が湧いてきます。 しかし、全産業(金融業、保険業を除く)の現預金残高は2007年度末→2016年度末では+75.6兆円、2012年度末→2016年度末でも+42.6兆円と大幅に増加しており、賃上げの原資としては十分です。 現金・預金の人件費に対する比率は、高度成長末期、バブル末期を上回り、企業部門が大幅な金余りにあることを示しています。 今回が前の二回と異なるのは、設備投資ブームと資産価格の高騰、実質賃金の高い伸びが生じていないことです。 その代わりに起きているのが対外直接投資のブームです。日本銀行「資金循環」からも、対外直接投資と現預金の残高の急激な増加が確認できます。 借入等の外部資金ではなく、人件費を抑制して捻出した内部資
2016年のアメリカの大学進学適性試験(SAT)の男女差(男―女)は Mathematics:平均+30,標準偏差+10 Critical Reading:平均+2,標準偏差+6 Writing:平均-12,標準偏差+5 と、数学の男女差が特に大きくなっています。 そうなると必然的に、高スコアになるほど男女比が男に偏ります。*1 この傾向は現代のアメリカに限ったことではなく、ほぼ人類に普遍的です。従って、nurtureではなくnatureによる可能性が大きいことになります。 高度な情報技術は数学的能力を必要とするので、シリコンバレーのIT技術者に男が多いことは極めて自然ですが、そのように意見表明するだけで「差別主義者」と決め付けられて解雇されてしまうのが、political correctnessが支配するシリコンバレーの現状です。 2016 SAT test results confir
財務省から2016年度の法人企業統計調査が公表されたので、全規模・全産業(金融業、保険業を除く)の動向をグラフで確認します。特に、誤解の多い内部留保について詳しく検証します。 売上高は前年度比+1.7%、人件費は+1.8%(+3.7兆円)と低い伸びです。 ソフトウェアを除く設備投資も+0.6%(+0.2兆円)と低調ですが、経常利益は+9.9%(+6.8兆円)、当期純利益は+18.9%(+7.9兆円)と大幅増益です。 人件費に対する利益の水準は統計開始以来の最高水準に達しています。 企業の増益が人件費と設備投資の増加につながる「経済の好循環」が生じていない以上、「アベノミクスは失敗である」と言わざるを得ません。 大企業の業績回復の果実が、国内の中小・小規模企業、そして、その従業員の皆さんに、行き渡らないようであれば、アベノミクスは失敗であると、私は考えています。*1 設備投資の低調を反映して
金曜にGDP2次速報が公表され、4-6月期は、下方修正されたものの、成長率は年率3%に届く強いものだった。家計消費が前期比+0.7と伸び、設備投資は+0.9と先行する、内需中心の理想的な景気回復の形となった。実は、以上の数字は「名目」の話である。実質での年率2.5%成長とはズレがあり、内容のイメージも少し違ってくる。今回は、こうしたズレが、経済と政策を読む上でポイントになることを説明しよう。 ……… 日経は「設備投資の推計に甘さ」と軽く書いているが、1次速報での先行指標による読みは、相当、難しいものだった。一つは、機械設備を示す鉱工業指数、中でも輸入が高く、「全部が投資になってるの?」という内容だった。二つに、民間企業の建設投資の指標も上ブレしていて、「ホントかね」というレベルだった。そこで、筆者は、予想し得る幅で最も低い値を選んで予測することにし、「実質の成長率は2%台後半、殊によると3
7月毎勤が出て、日経はボーナス減を嘆く内容だったが、季節調整値では現金給与総額が前月比+1.1と高い。6か月移動平均もちゃんと上昇トレンドに戻っている。7月毎勤は、確報で更に上ブレの可能性もあるし、逆に8月は落ちる傾向もあって、見方は、けっこう難しい。だから、6か月で見ているわけだ。むろん、常用雇用は変わらず堅調だから、総雇用者所得の増加で消費も伸びるだろう。 いずれにせよ、賃金は上昇を始め、消費も伸びるから、物価も続くことになる。とは言え、データとしては、「兆し」くらいかな。需給ギャップは「まあまあ」でも、CPI東京8月、4-6月期デフレーターは「始まったかな」で、単位労働コストは「これから」だからね。とは言え、原油高をバックにCPIは1%までは行くので、滝田洋一さんが9/6に書いた第3のシナリオは、十分にあり得る。これをコンセンサスとして出口に向うべきだよ。 (図) (今日までの日経)
証券各社から9月時点の2017年度企業業績見通しが出て、経常利益は上方修正された。当然、法人税収も高まると考えられる。筆者の一般会計の税収予想は、政府予算額を若干上回るところまできた。経常利益の増加は円安が一因なので、円安で物価上昇を被る家計から企業への所得の移転があったと見ることもできる。税収が上がったと喜ぶだけでなく、還元も考えないと、経済は好循環していかない。 今日の日経では、労働分配率の低下が指摘されているが、資本に分配されても、税で吸い上げ、家計に還元すれば良いだけだ。企業が税を嫌うなら、財政赤字で吸収する方法は、必要悪となる。つまり、資本課税と財政赤字のどちらを取るかの選択なのだ。どちらも嫌い、大衆課税をしようとするから、低インフレに陥る。どちらも嫌う不合理な経済思想が先進国の悩みの根源にある。 (図) (今日までの日経) 都市農地維持へ税優遇。ゆうパック平均12%上げ。労働分
目の前の魚を取り尽くし、資源を枯渇させて身の破滅へ至る。先週の日経ビジネスの特集を読んで、日本の漁民は何と愚かなのかと思われた方も少なくなかったと思う。政策的にも、所得補償をして禁漁にし、回復した資源から回収すれば、長期的な財政負担はないのに、当座の余裕のなさから、手をこまねくのみである。まあ、漁業は他人事かもしれないが、非正規で若者を絞り尽くし、子供を持てなくさせ、人口崩壊に至るのと、何が違うのか。 ……… 7月の経済指標は、どれも順調だった。景気は、2%台後半の成長に向け、着々と足場を固めている。まず、消費だが、商業動態の小売業が前月比+1.1となり、家計調査の消費水準指数(除く住居等)は+1.2となった。これからすれば、日銀・消費水準指数は、商業動態に近い伸びとなり、内閣府・消費総合指数は、家計調査が「含む住居等」が逆向きにあるので、低めの伸びとなろう。 いずれにせよ、7月の消費は、
家計調査・消費水準指数(除く住居等)が前月比+1.2、商業動態・小売業が+1.1なのだから、7月の消費も高めの伸びだったと言える。前期と比較すると、前者は+1.2、後者は+0.6の水準になっており、間をとって考えると、7-9月期の消費も、前期比で年率2%台後半が期待できる。すなわち、景気は極めて好調ということだ。 (図) (今日までの日経) 幼稚園2歳児受け入れ。法科大学院、半数が撤退。日本のサービスは米より質高い。苦肉の金利ゼロ融資。対外投融資 邦銀が突出。鳥貴族28年ぶり値上げ 人件費増。円、先高観くすぶる。学力テスト 地域差、縮小傾向に。忖度しすぎ? シルバー民主主義。街の飲食店の人手不足、中小の食品機械が救う。
人は死せる存在で、時間が限られるゆえに、リスクを取り切れず、期待値に従って利益を最大化するよう行動できない。したがって、「神の見えざる手」は、需要が安定している状況という限られた条件の下で働くに過ぎないのが現実だ。しかし、企業が利益を最大限に追求できれば、世の中のためになるという思想は、持てる者には捨てがたい魅力がある。なにせ、緊縮財政、金融緩和、規制改革を正当化できるわけだから。 ……… 苅部直著『「維新」革命への道 「文明」を求めた十九世紀日本』は、歴史書だし、思想史だしということで、リアルなことしか興味がない者には、縁遠い一冊かと思いきや、江戸期の経済発展が明治維新を用意したという連続性を丁寧に説明する。特に、福澤諭吉の『文明論之概略』を引き、「王政一新」にとどまらず、「廃藩置県」まで至ったのは、「文明」により「智徳」が進み、「門閥を厭うの心」がペリー来航を機に爆発したとするのは説得
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