本書のタイトルは「失われた10年」となっているが、戦後の日本経済を統計データでおさらいしたもので、90年代以降の話は後半だけだ。その失敗の理由を、著者は次の3つの要因に求める:不良債権によって金融システムが機能不全に陥った バブル期の過剰投資と過剰債務が、90年代の投資需要を抑制した TFP上昇率の低下によって潜在成長率が下がったこのうち彼が重視するのは1で、本書の大部分も金融システムの分析にあてられている。日本経済が高度成長期の「キャッチアップ型」から80年代以降の「グローバル型」への転換に失敗し、中枢機能が銀行と政府に集中した経済システムを残したままバブル崩壊に直面したため、金融システムが崩壊すると構造調整がまったくできなくなった。 しかし金融システムが機能しないと、なぜ実体経済に大きな影響が出るのだろうか。実は、この問題は理論的にははっきりしない。「貸し渋り」が起きていたとすれ