死体は見世物か 「人体の不思議展」をめぐって [著]末永恵子 90年代から全国で開催され、話題となった「人体の不思議展」。近くて遠い人体の展示は、多くの観客を動員した。しかし、展示された人体は、特定の誰かの死体である。「その人」は人格を持ち、他者と関係してきた具体的存在だ。その死体が皮膚を剥ぎ取られ、本人の望むはずのないポーズで展示された。著者はこの展覧会に、死体への冒涜(ぼうとく)を読み取る。 展示会のきっかけは、ドイツのハーゲンスが開発したプラスティネーション標本という死体長期保存技術にあった。日本の解剖学者はこの技術に注目し、日本での製作を熱望。その啓蒙(けいもう)活動として、展覧会を企画した。1995年、日本解剖学会は創立100周年記念行事として「人体の世界」展を開催。これはプラスティネーション標本を一般公開した世界最初の機会で、注目を集めた。 展覧会の成功に目をつけたのは起業家た