むかしは妻と散歩しているときに、おもしろいとこに気がつくね、と言われたものだったけど、いまの俺は何にも気づいてない。仕事のことで頭がいっぱいになるか、自分に至らなさにイライラするか、娘かわいいなあと思っているか、妻と結婚してよかったなあとぼんやりするか、のどれか。 そもそも散歩をしなくなった、寄り道はするけど。目的地に向かって歩き、家に向かって歩く。ただただ歩くってことがなくなった。 あかんぼうがもう少し大きくなれば、散歩をする機会も増えるだろうけど、そのときの俺はあかんぼうに意識が向かっているはずなので、町や自然に気づくことはできないんじゃないか。そして、あかんぼうが幼児になったときには、彼女の気づきに圧倒されて、俺は自分がかつて気づける人だったことも忘れてしまうんじゃないか。そんな焦りがある。 今日は娘を妻に見てもらっているあいだに、1ヶ月半前に借りた本を図書館に返しにいった。4冊借り