カメラに収められているのは名古屋のベッドタウンに居を構える90歳と87歳の老夫婦の暮らしぶりだ。夫は多摩平団地、高根台団地、阿佐ヶ谷住宅、高蔵寺ニュータウンなど、戦後日本の住処を形づくってきた建築家の津端修一。妻は『あしたも、こはるびより。』といった著作で知られる津端英子。 合わせて177歳 このフレーズは夫婦が好んで使用しているものだが、「2人で1つの生き物」というような修一と英子の離れ難い魂の結びつきを端的に表現しているように思うし、この映画の最も感動的なポイントはやはり2人の結びつきの強さだ。 津端夫婦に、ジブリ映画的ファンタジーを身体に落とし込んで生活している人、という印象を覚えた。その証左というわけではないが、この映画には常に”風”が流れている。この風通りの良さというのは、津端が建築家としてこだわり続けてきた一面であり、それはすなわち”見通しの良さ”とも言い換えられる、彼の人生哲