〈……少なくとも死刑を合法の制度として残すこの日本に暮らす多くの人は、視界の端にこの死刑を認めながら、(存置か廃止かはともかくとして)目を逸らし続けている。 ならば僕は直視を試みる。できることなら触れてみる。さらに揺り動かす。余計なお世話と思われるかもしれないけれど〉(『死刑』より) 「ゲシュタルト崩壊って、わかりますか?」と森さんは尋ねてきた。漢字をじっと見つめていると、字がゆらゆらと崩壊していく。死刑について考えていると、そんな思いを何度となく繰り返してきたという。 僕はこの本で、「死刑を凝視せよ」みたいなことを言ってはいるんだけど、いざ凝視していると何がなんだかわからなくなる。やってみて、とてもやっかいなテーマだと思いましたね。 これはオウムの事件以降、ずっと考えていることでもあるんだけど、日本人の特殊性って何なんだろうか。世界が死刑廃止の趨勢にあるなかで圧倒的な死刑存置を支持するこ
あなたは「死刑」制度に、賛成ですか? 反対ですか? そんな質問を受けて、すぐにあなたは答えられるだろうか? あるいは、どれだけの時間、あなたは答えに躊躇するだろう。 まず、この数字を見てほしい。現在、あらゆる犯罪に対して死刑を廃止している国は、92カ国。通常の犯罪に対してのみ死刑を廃止している国は、10カ国。事実上の死刑廃止国(10年以上執行を停止している国)は、33カ国。これらを足し合わせた135カ国に対して、死刑存置国は、62カ国(2008年2月20日現在)。 世界の趨勢は死刑廃止に向かうなか、日本では必要と答える人が世論調査では8割を超える。存置であれ、廃止であれ、わたしたちは「死刑」がいったいどういうものか、ほんとうに知っているのだろうか。 若いオウム信者たちに密着したドキュメンタリー映画『A』『A2』をはじめ、放送禁止歌、超能力に下山事件。ときにタブーとされるアンダーグランドな世
死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う 作者: 森達也出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2008/01/10メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 399回この商品を含むブログ (188件) を見る 少なくとも死刑を合法の制度として残すこの日本に暮らす多くの人は、視界の端にこの死刑を認めながら、(存置か廃止かはともかくとして)目を逸らし続けている。 ならば僕は直視を試みる。できることなら触れてみる。さらに揺り動かす。 余計なお世話と思われるかもしれないけれど、でも実際に人が死ぬ。誰かが誰かを殺す。誰かが誰かに殺される。そんな事態に対して不感症でありたくない。 だからできるかぎりは直視して、そのうえで考えたい。死刑は不要なのか、あるいは必要なのか。人が人を殺すことの意味は何なのか。罪と罰、そして償いとは何なのか。 p012 この本を書きはじめる前、存置か廃止かでいえ
現場職員の見方や傷付き方 教誨師 1971年の処刑 廃止派から存置派へ 光市事件遺族からの手紙 前日のつづき。 死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う 作者: 森達也 出版社/メーカー: 朝日出版社 発売日: 2008/01/10 メディア: 単行本 購入: 12人 クリック: 399回 この商品を含むブログ (186件) を見る 現場職員の見方や傷付き方 死刑執行が評価ポンイトとなる所長等幹部と現場職員では見方や傷付き方がちがう 「刑務官に課せられる仕事は、いつ執行命令が来ても執行できるようにしておくことです。要するに自殺させないこと、病気にさせないこと、狂わせないこと。だから毎日死刑囚たちと顔を突き合わせて、……寝顔だって見ますから。当たり前だけど、執行の指令をする幹部たちとは意識が違います。ほとんどの死刑囚は最初は気持ちが荒んでいますから、時には慰めたり、叱りもするし、
森達也の新刊「死刑」を読んだ。一気に読んだ。 これはいつもの「森達也業」ともいうべき仕事だなと思ったのが第一印象。しかしやっぱり森達也以外に書けない内容だとも思った。彼の代表作になるだろう。 世の中には曖昧な領域がある。それは誰もが忌避したくなる世界だ。手を突っ込んだところで余計な火傷を負うだけでまったく得にならない。どう書こうが誹謗中傷、ないしは「非国民」とか「レイシスト」とかありがたくないレッテルまで貼られることもある。さらに世の中は何事も竹を割ったようなわかりやすい善悪、左右、縦横な話を好むので、曖昧な領域なるところを追っても銭にはならない。そして誰もが取り上げるのを諦め、その世界はサンクチュアリと化してときには暴走していく。 森達也はそこへ果敢に攻め込んだ男である。先日も取り上げた動物実験。超自然現象。放送禁止歌。オウム真理教。メディアそのもの。 そして死刑。廃止派でありながらも、
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