巻 頭 言・2000年10月号 “科学”を“学ぶ”ということ 自然科学にせよ社会科学にせよ,その核心には“われわれの恣意から独立な物事の尊重”と“明晰性の追求”がある.前者は世界についての偏見や錯覚に対する批判的自省的な構えのことであり,通常,客観性の尊重といわれている.後者は科学的理解が人類に共有されるために言説からあいまいさを排除する努力のことである.ただし,明晰性を明晰に規定することはできないので,われわれは常に“より明らかに語る”努力をしなくてはならない.また客観性の客観的規定も不可能であり,そのための不断の反省と懐疑的省察が欠かせない.たとえば,ソーカル,ブリクモン著の‘「知」の欺瞞’に縷々述べてあるとおりである. “科学”を“学ぶ”ということは以上述べた“構え”を理解し日常生活でそれを活用する能力を身につけること,およびこの“構え”によって自覚的に獲得されてきた世界の見方,もの