ブックマーク / cruel.org (34)

  • CUT 1998/12

    蓮實重彦の『知性のために』(岩波書店)は、この東大総長のほうぼうでのスピーチを集めた東大の入学式や卒業式での式辞のたぐいがいろいろおさめられてる。 ……式辞、だって? これが? だってさ、長いの、これが。ぼくが音読しても 1 ページ 1 分。あのもっさりした蓮實の口調でならその 5 割増しだろう。それが東大入学式の式辞だと 30 ページ強ってことは、つまり一時間近く!?! しかも、あの蓮實の長くてまわりくどい文章が、ほとんどそのままページにのたくっている! いや、多少はすっきりしてるかな。それにしても人間がふつうに口にすることばじゃないし、聴く側の頭のバッファはまちがいなくオーバーフローするはず。それが最初から最後までずうっっっっと続いてる。武道館で聞かされた人たち(ほとんどが高校出たての新入生!)には拷問だったんじゃない? というわけで杉岡さんに七尾さん(と急に話をふる)、まさにこの

  • 山形浩生 小島寛之「確率的発想法」

    「ありえたかもしれない世界」にぼくは存在するか? 確率的世界観をめぐるあれこれ。 (『CUT』2004 年 5 月) 山形浩生 未来のことはわからない。でも、未来に何かをするためには、往々にして今の時点で何かをしとかなきゃいけない。高い買い物をしたければ、いまから貯金が必要だ。雨に濡れないためには、家を出るときに傘を持って出るほうがいい。不動産開発でもうけるなら、数年後の竣工時の市場を考えて動くしかない。だからぼくたちはあれこれと、可能性や見通しについて予想と見当をつけつつ、ローンを組んだり投資をしたり、買い物をしたり仕事をしたりする。その過程で何らかの形で、ぼくたちはいろんな選択肢の起こる確率について評価しているはずだ(そうでないと身動きとれないもの)。そして実際問題として、ある選択(つまりは評価)は他の選択よりも優れているはずだ。すると、ここで考えるべきことは二つ。ぼくたちのやっている

  • 大森望(とそれを敵視する人々)についてぼくが知っていた二、三のこと:1980年代からの遺恨とは

    大森望(とそれを敵視する人々)についてぼくが知っていた二、 三のこと:1980 年代からの遺恨とは (v.1.3) 山形浩生 * † 2015 年 12 月 21 日 概要 2014 年春に大森望が、SF 作家協会への入会を否決されたのは、 『オルタカルチャー日版』に掲載され たセクハラと称される替え歌作成への関与を一部の人が確信しているからとも言われる。実際にはそうした 関与を裏付ける証拠はない。だがそうした人々の確信の背景には、かつて巽孝之が大森望のある文章にプラ イドを傷つけられたことがあるとされる。ではそのプライド損傷はどのように発生したのか? 稿は、1980 年代の巽・岡『一九八四年』論争と、大森・永瀬サイバーパンク論争をふりかえりつつ、 今日のわだかまりに到る道筋を山形なりに検討する。その直接の原因は、山形が知る限りたったひと言では あった。でもその背後には、1980 年

  • Magazine ALC コラム 2006/04

    『山形浩生の:世界を見るレッスン』 連載 1 回 「ホテル・ルワンダ」が教えてくれるもの 月刊『マガジン・アルク』 2006/04号 要約:映画『ホテル・ルワンダ』には、虐殺用の山刀を中国から輸入する場面がある。なぜ労働の安いアフリカで、その程度のものを自前で作れないのか? なぜ輸送費分のハンデがあっても中国に負けてしまうのか? それがかれらの課題だ。かれらは搾取されているから貧困なのではなく、搾取される程度の技術水準もないために貧困なのだ。 いま「ホテル・ルワンダ」という映画が公開されている。数年前にあった、ルワンダの大虐殺をテーマにした映画だ。虐殺が進む中で、あるホテルの一支配人が難民たちをホテルにかくまい、最後まで守り抜いたお話だ。地味な映画で、最初は公開が見送られようとしていたのを、ネット上の署名運動によって一転して公開が決まり、単館とはいえロードショーで、しかも連日立ち見の満員御

  • ISISについて:池内恵と対談

    イスラム国躍進の構造と力 『公研』2014年10月号 「対話」 池内恵 VS 山形浩生 山形:イスラーム国の人たちの言動や行動を見ると、ずいぶんと前近代的で昔に戻ったかのような印象を受けます。その一方で彼らの意識には、中東の民主化への動きとも言える「アラブの春」が大きく関係しているのだと思います。池内さんは今回のイスラーム国の登場と「アラブの春」の関係をどのように捉えていらっしゃいますか。 池内:「アラブの春」が一回りしたことで中東地域に生まれた環境は、イスラーム国にとって非常に都合の良いものになりました。その環境と言うのは、中央政府の揺らぎ、弱体化であり周辺領域の統治の弛緩です。そこに、元来イスラーム国が依拠するイスラーム過激派の戦略論がぴたりと合わさった。9・11テロに対して、アメリカは大規模な対テロ戦争を展開し、イスラーム過激派は軍事的にも情報的にも経済的にも追い詰められました。それ

  • ピケティ『21 世紀の資本』FAQ (v.1.4)

    pg. 1 © 山形浩生 ピケティ『21 世紀の資』FAQ (v.1.4) 2014 年 12 月 山形浩生 Disclaimer: ここに書かれたのは訳者の私見であり、ピケティの見解ではない。 Q1. このでの資とは? → 資、資産、財産、富はこのではすべて同じもの。扱っているのは、総資産から負 債を引いた、いわばエクイティ部分のこと。 (住宅は資産だが、ローンが残っていればその部分は差し引かれる) 人的資は入っていない。 Q2. え、人的資が入っていなくて大丈夫なんですか? 現代では人的資の ほうが重要なのでは? → はい、そういう批判は出ている。物理的資だけ見ても仕方ないんじゃないか、現代 産業の主流は人的資だ、と。でも、それを計測するのはなかなかむずかしいので「人的 資を入れたらこうなります」というしっかりした反論は出てきていない。 またピケティもそれを予測し

  • ジョン・ロー (John Law)

    ジョン・ローは、アルフレッド・マーシャル (1923: p.41) に言わせると「向こう見ずでバランス欠如だが、実に魅力的な天才」で、カール・マルクス (1894: p.441) が追加したように「詐欺師と予言者のおもしろい人格的な混合物」だった。博打打ち、銀行家、殺人者、王室顧問、亡命者、放蕩者、冒険家だったジョン・ローは、その独自の経済理論以外でもいろいろ有名だ。かれの一般的な名声(あるいは悪名?)は、かれがパリで行った二つのすばらしい事業からきている。Banque Générale とミシシッピー方式だ。その経済的な名声は二つの大きな発想からくる。価値の希少性理論と、通貨の真(リアル)手形 (real bill) ドクトリンだ。 ジョン・ロー (1705) は ダヴァンザティの「交換価値」と「利用価値」のちがいを拡張して、その有名な「水とダイヤモンド」パラドックスを導入した。つまり、

  • 21世紀の資本 講演スライド

    21世紀の資 トマ・ピケティ Paris School of Economics March 2014 英語オリジナル : http://piketty.pse.ens.fr/files/Piketty2014Capital21c.pdf • このプレゼンテーションは『21世紀の資』 (原著Harvard University Press, 2014, 邦訳みすず書房 2014) に基づく。 • このは20カ国以上の所得と富の分配をめぐる世界的な動学を研究 している。過去15年にわたりAtkinson, Saez, Postel-Vinay, Rosenthal, Alvaredo, Zucmanら30人以上と集めた歴史的データを活用した。 • 書は4部構成となる: 第1部 所得と資 第2部 資/所得比率の動学 第3部 格差の構造 第4部 21世紀の資規制 • この発表では第

  • ピケティ『21世紀の資本』オンラインページ

    このインターネットサイトには以下の資料がある: 『21世紀の資』の 目次 および 詳細目次 書で挙げた 図表セット (英語版 (pdf)) 参照した 補遺の図表 (英語版 (pdf)) 情報源、手法、参考文献(特に図表の統計時系列データ構築) について)の専門補遺 (pdf) (英語版) Financial Timesからの批判に答えた専門補遺追加 (pdf) (英語版) すべての図表や統計データをまとめた Excel ファイル (xls) 圧縮版 (2 MB) ((英語版)) 以上すべてをまとめた圧縮ファイル (zip, 19 MB) (英語版) またこれらのファイルは、以下のディレクトリからもアクセスできる: 図表ディレクトリ "pdf" (英語版) または "xps" (英語版) 補遺図表ディレクトリ "pdf" (英語版) または "xps" (英語版) Excel ファイルデ

  • alt.culture Japan

    というわけで、例の裁判の全貌未満以上 やれやれ、やっと終わったか。4年! こんなにかかるとは、まったく思っていませんでしたよ。というわけで、まあ折りを見て裁判の話をまとめてみようか。 1. 問題の文(non-名誉毀損版) [こ-008]小谷真理、およびそれを泡沫とするニューアカ残党似非アカデミズム (こたにまり、およびそれをほうまつとするにゅーあかざんとうえせあかでみずむ) 巽さんちの小谷真理 このごろすこーし変よー どーしたのーかーなー? 日のコスプレ論じても エヴァンゲリオン語っても いつも言うこたお・な・じ 「それはね、レイプされているのよ!」 つまんねーなー そもそも小谷真理が巽孝之のXXXXなのは周知で、XXXXなら少しは書き方を変えればよさそうなもんだが、そのセンスのなさといい (名前が似ているとか年代が同じとか、くだらない偶然の一致を深読みしようとして何も出てこないとか)、

  • 経済ジャーナリズム:2014年への展望

    経済ジャーナリズム:2014 年への展望 2013.12 月 『ジャーナリズム』没原稿 山形浩生 1 経済ジャーナリズムといっても、幅は広い。そして世の中で経済ジャーナリズムだと思 われているものの大半について、日はそんなに問題がある状態ではないだろう。もちろ ん仕事柄、比較の対象となっているメディアが発展途上国ばかりで、利権と党派まみれの 新聞だったり大営発表だけのテレビだったりという偏りはあって、それと比べればネコ でも立派に見える。ついでに、ドコモが iPhone を扱うというネタが今年やっと実現するま でに、何回飛ばし記事を読まされたかを考えて見ると、日もそんなに威張れるわけでは ない面もある。 しかしおそらく、事実を伝えるだけの報道は今後、重要性を失う。特にネットの進展で そうした部分は他の手段で伝達される比率が増える。そして、速報性についてネットの情 報流通と張り合おうと

  • Irresponsible Rumors for 2014

    2014 年の噂 風の噂ではございますが…… なお、リンクする場合には各コメントの日付のあとにある「id」をクリックすると、そのコメントのユニーク id が url 欄に表示されるぞ。 2014/02 ちょっと前に、東大で日銀黒田総裁の講演を聴いて、日銀の持っているインフレ目標達成について少し疑念を述べた。2 年で 2 %と述べているのに、かれらのモデルだと、2 年で 1.9% にしかなっていなかったという話だ。 さてこれを読んでか読まないでかはわからないけれど、暗黒卿こと高橋洋一が新聞のコラムで、ぼくのような見方は日銀の目標をきちんと理解していない、と述べている (連載:「日」の解き方:インフレ目標を理解していない日銀政策委員  「2年で2%」めぐる誤解 zakzak.co.jp, 2014.01.28)。2013年4月1日に「2年で2%」と言ったのは、2015 年 4 月時点で 2%

  • 今月の喝! 募金の経費が理解できない人たち。 | Yamagata Dojo in CYZO 2006/09

    要約: 募金のお金が、募金募集団体の各種経費に使われることを指して「ピンハネ」などと難癖をつけるバカがいるけれど、金集めには経費がかかるくらい常識ではないか。自分の金がすべて被災者に行くと思う発想がそもそも変。黒柳徹子に渡したところで、事情は何も変わらない。 ぼくは公徳心に富んだ親切な人間なので、でかい災害や戦災があればそこそこの金額を募金することが多い。募金先は、日赤十字とか、日ユニセフ協会とか、国境なき医師団とか、そのときの気分とその災害の性質によってあれこれ変わるけれど。しばらく前に仕事ででくわした国連系の某機関のやつがろくでもなかったので、国連系はいまぼくの中で非常に優先順位が低い。その程度のえり好みはある。 さて、このぼくといえど、世界中のあらゆる災害だの戦災だのを常に把握しているわけじゃないのだ。だからときどき各種の機関がダイレクトメールを送ってきて、ダルフールがまた変なこ

  • 経済思想の歴史:トップ

    経済思想史ウェブサイト日語版:new school の HET ページの翻訳。経済思想の歴史について、古代から現代まで情報やリンクを集めたサイトなんめり。学生や素人で、経済学について歴史的な流れを理解したい人たち向けのサイトだが、中身的にはそこらの専門書より視野が広くて高度だったりするぞ。

  • 底なしのビールジョッキ ------世界の原油が枯渇しそうにない理由

    底なしのビールジョッキ ------世界の原油が枯渇しそうにない理由 (The Economist Vol 375, No. 8424 (2005/04/30), "A Survey for Oil" 所収の "The Bottomless Beermug," pp. 13-15) 「石油は人の心の中にあるのよ」というのは、アメリカの産油地帯でよく見かけるバンパーステッカーだ。これには一理ある。ダニエル・ヤーギンはピューリツァ賞受賞の石油史『石油の世紀』を書いたが、かれは石油の歴史が驚異的なイノベーションの連続だと論じている。1859年にはエドウィン・ドレイク大佐が、露天掘りではなく掘削によってペンシルバニアで石油を掘り当てた。これは古代中国の塩掘削の技法を応用したものだった。これが世界初の原油バブルを引き起こし、当然ながら原油が市場にあふれて価格が暴落してバブルは破裂した。 1901年に

  • 「エコノミスト」より:スタバの節税など

     目を覚ましてコーヒーの香りを: スタバの節税バッシング in UK (The Economist Vol 387, No. 8580 (2012/12/15) p.58, "Wake up and smell the coffee") 山形浩生訳 (hiyori13@alum.mit.edu) 「これは空前のコミットメントです」とイギリス・アイルランドのスターバックスの親玉、クリス・エングスコブは 12 月 6 日に述べた。この日、同社は 2013-14 年度にイギリス税務署に対し、法的に必要とされる納税額を年間およそ一千万ポンドうわまわる金額を自発的に支払うと発表したのだった。別に当局から何らかの圧力がかかったわけではない。イギリス歳入局に対して、追加ショットの税金を納めることについて、税務署は特に相談を受けていないのだ。スターバックスは、怒り狂ったイギリス消費者をなだめるためにこう

  • ポール・クルーグマン "White Collars Turn Blue"(日本語訳)

     ホワイトカラー真っ青 White Collars Turn Blue ポール・クルーグマン 山形浩生訳 読者への註。この文は、ニューヨークタイムズ誌の100周年記念特別号のために書かれた。このとき与えられた指示というのは、これがいまからさらに100年後の記念号用の文だと思って、それまでの過去1世紀をふりかえって書いてくれ、というものだった。 過去をふりかえるときには、いろんなことを大目に見るよう心がけないとね。20世紀末の観察者が、来る世紀についてすべてを予言できなかったといって責めるのは、不公平ってもんだ。長期的な社会予測は、今日でもまだ厳密な科学とはいいがたいし、1996年には現代の非線形ソシオエコノミクス創始者たちは、まだ名もない大学院生にすぎなかった。それでもその当時ですら、経済的な変化を駆動する大きな力が一方ではデジタル技術の絶え間ない進歩で、一方ではそれまでの後進国へ経済発

  • クーリエ連載;エコノミスト紹介、チベット民主主義

    そろそろ現実の話をしようか:世界最高のビジネス誌「The Economistを読む」 連載第2回 ブータンの民主主義 (『クーリエジャポン』2007/7号 #33) 山形浩生 民主主義というお題目の強力さは言うまでもない。アメリカ大陸の某国は、爆撃して銃をつきつけても民主主義を導入させるのが正しいと思っている。そしてその「民主主義」というのは、何やら紙に名前を変えて箱に入れる「選挙」という形式だけをやらせればいいんだというのが、カンボジアでもイラクでもアフリカ各地でも展開されている茶番ではある。さて今回は、あるヒマラヤの小国で進行中のそうした茶番のお話だ。 『雷龍に清き一票を:ブータンの選挙予行演習』 (2007/4/26号) (Thinking out of the box," 抄訳) クンザン・ワンディはヒマラヤのブータン王国の選挙委員長なのに、その予行演習ではなぜかちょっと浮かぬ顔だ

  • P. Krugman "FURTHER NOTES ON JAPAN'S LIQUIDITY TRAP" Japanese

     日の流動性トラップについて:追記 FURTHER NOTES ON JAPAN'S LIQUIDITY TRAP Paul Krugman 山形浩生 訳 日の流動性トラップについてのぼくの文 (翻訳「日がはまった罠(トラップ)」)はあちこちで読まれて引用されているけれど、マスコミの記事やぼく個人のやりとりから判断すると、この分析の一部は十分に理解されていないみたいだ(これは一部、ぼく自身にも責任がある。あの論文は少し堅苦しかった――そしてある点でちょっとまちがっていたし。これについては以下で説明する)。というわけで、みんなに聞かれた質問の答えを。 1. で、政策的には何をしろと? 多くの人はどうやら、ぼくの論文が単に「日はむちゃくちゃ金を刷れ!」と言ってるだけだと読んだらしい。たしかにぼくは過去にそう論じたこともある(What is wrong with Japan?、邦訳「日

  • クルーグマン『さっさと不況を終わらせろ』サポートページ

    クルーグマン『さっさと不況を終わらせろ』サポートページ 山形浩生 目次 関連資料 関連論文 正誤表 1. 関連サイト クルーグマンのNew York Timesブログ/コラム クルーグマンが連載しているニューヨークタイムズのブログやコラム。時事ネタ、各種の論争などが展開されており、書に関連する内容もきわめて多い。なお、重要なものについては有志が日語への試訳を行っていることがある。「道草 クルーグマン」で検索すると吉かもしれない。 クルーグマンの(古い)ウェブページ クルーグマンの昔の各種記事や論文へのリンク。ただし彼が MIT 時代に作ったもので、最近のものはない。なお、各種論文が現職のプリンストン大学のサイトにはあがっているが、まとめて閲覧できるようなトップページは見あたらない。 クルーグマンのファンページ 各種論文やエッセイ、インタビューなどへのリンク満載だが、クルーグマンがノーベ