「警察に逮捕されれば、指紋などから、自分が誰なのかわかるのではないかと思った」 記憶喪失の男『仮名・鈴木太郎』は、裁判の中で、信じがたい犯行動機を口にした。 「2008年3月14日、静岡県熱海市の国道で、意識不明の状態で倒れていたところを発見され、市内の病院に救急搬送されました。その際、自分に関する記憶がなく、所持品に身分を証明するものはなかったそうです」(小田原福祉事務所・生活福祉課担当者) 診断結果は、『全生活史健忘』。これまでの自分の生活歴を、すべて忘れてしまうという信じ難い病気だ。病院は、男を『鈴木太郎』と名づけた。仮の生年月日は1977年3月14日、仮年齢は36歳だ。 保護された日以来、仮名で生き続けた男はやがて、生活保護費を不正受給しながら違法動画の配信に手を染めるという罪を犯した。 「動画サイト『FC2』にテレビドラマ9作品、数にして約2000本を違法配信し、2012年11月