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ブックマーク / book.asahi.com (296)

  • 「宇宙人」との共同作業 危機の時代に立ち上げた「批評空間」:私の謎 柄谷行人回想録⑲|じんぶん堂

    記事:じんぶん堂企画室 90年代、スペインのポルトボーで、浅田彰さん(左)と柄谷行人さん=柄谷さん提供 書籍情報はこちら ――1980年代後半から90年代の柄谷さんの活動についてお聞きしていきます。ソ連の崩壊や阪神淡路大震災をはじめ国内外で歴史的な動乱期ですが、柄谷さんの周囲でも雑誌を立ち上げたり、湾岸戦争反対の署名の運動をしたりと、様々な出来事がめまぐるしく起きている時期です。盟友だった作家の中上健次が亡くなったのも92年でした。 柄谷 いまから思うと、それまでやってきたことに始末をつけていった時期でした。一口でいうと、文学から決別する方向に向かったのです。 一方で、この時期は、まったく新しいことを始めたときでもあった。それには時代の変化が大きかったと思う。冷戦構造の崩壊、湾岸戦争勃発などが重なったときに、それを実感しました。それで行動的になった、ともといえますね。 ――85年から88年

    「宇宙人」との共同作業 危機の時代に立ち上げた「批評空間」:私の謎 柄谷行人回想録⑲|じんぶん堂
    hharunaga
    hharunaga 2024/10/25
    「僕がやっていることについて、浅田(彰)君がまとめてくれると、なるほどそうだったのか、と自分で自分のことがわかることもよくあった。」
  • 「ホラー映画の科学」書評 感情移入がつくる怖さと面白さ|好書好日

    「ホラー映画の科学」 [著]ニーナ・ネセス ホラーは苦手、とスキップするのはちょっと待ってほしい。たしかにホラー映画の話だが、人間の恐怖心のしくみがよくわかるなのだ。 ホラーは好き嫌いがはっきり分かれるジャンルだが、その差をわけるものはなんだろう。人がなにかを「生理的に嫌」というときの「生理」には、たいてい経験や学習の刷り込みも混じっている。それなら恐怖は学習で克服できる? 書は、ホラー映画の中で危機に瀕(ひん)したり切り刻まれたりする登場人物たちとその状況を見つめる観客、その双方の体のなかでなにが起きているのか、両者の脳や神経のメカニズムを解説しながら、恐怖についてのさまざまな疑問に迫っていく。恐怖体験のトラウマへの対処法は? メディアの暴力シーンは人間を暴力的にする? 私たちはなぜストレスを感じつつ怖いものを楽しむのか?――さまざまな実験結果は、科学による解明よりも、科学のあてにな

    「ホラー映画の科学」書評 感情移入がつくる怖さと面白さ|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/10/19
    「登場人物たちとその状況を見つめる観客、その双方の体のなかでなにが起きているのか、両者の脳や神経のメカニズムを解説しながら、恐怖についてのさまざまな疑問に迫っていく」。評:小澤英実。著:ニーナ・ネセス
  • 「フェイクニュースを哲学する」書評 「本当にそうだろうか」の問い|好書好日

    フェイクニュースを哲学する──何を信じるべきか (岩波新書 新赤版 2033) 著者:山田 圭一 出版社:岩波書店 ジャンル:人文・思想 「フェイクニュースを哲学する」 [著]山田圭一 ご隠居さんこんちは。フェイクニュースの、読みましたよ。おや、どうだったい? 目からウロコって感じじゃなかったっすね。おまえさん、フェイクニュースに騙(だま)されないようになるコツみたいなのを期待してたんじゃないのかい? え、そういうじゃないんすか? そうだね、やっぱりこれは哲学のなんだよ。哲学のだと、どうなるんです? 例えば、最後の方で陰謀論を論じてるけれども、そもそも「陰謀論」とは何なのかとか、「当に信じてはいけないものなのだろうか」なんて問いかけてるだろ。そうすね、いいこと言ってくれるのかなと思ってると、「当にそうだろうか」って、がくっときちゃいますよ。それが、おまえ、哲学ができてない証拠さ

    「フェイクニュースを哲学する」書評 「本当にそうだろうか」の問い|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/10/19
    「正しい知識を得るにはどうすればいいのかを考えるのが認識論だ。〔…〕現代の哲学者たちはデカルトと決定的に違う局面を論じ始めたんだね」。評:野矢茂樹。著:山田圭一、岩波新書。
  • 「つくられた天才」書評 自己プロデュース力浮き彫りに|好書好日

    「つくられた天才」 [著]ティア・デノーラ なぜベートーヴェンは、時代や国境を超え、これほどまでにポピュラリティを獲得し続けているのか? 「運命」「第九」「エリーゼのために」といった有名曲の印象的なモチーフや、難聴、甥(おい)との確執などの「不幸エピソード」への関心以上に、彼の音楽当に突出し、一般にも愛されているのか? ベートーヴェン独特のシンプルで大胆な作曲上の仕掛けには今日でもはっとさせられるが、劣らぬ作曲家たちや型破りの斬新さに反感をもつ人たちもいた当時、それがいかに「革新的な芸術性」と評価され、彼の名声を高めるに至ったか、書は日記や書簡の引用を基に、彼らが生きた時代の社会のありようから成功要因を紐解(ひもと)いてゆく。 まず浮き彫りになるのは、音楽の才に加えて秀でたベートーヴェンの野心的自己プロデュース力とビジネスセンスだ。恵まれた出自を活(い)かした創作環境や影響力のある貴

    「つくられた天才」書評 自己プロデュース力浮き彫りに|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/10/06
    「浮き彫りになるのは、音楽の才に加えて秀でたベートーヴェンの野心的自己プロデュース力とビジネスセンスだ。」「人脈の拡大」「偽装」「イメージ演出」…。評:望月京。著:ティア・デノーラ、春秋社。
  • 「ウィーン1938年 最後の日々」書評 ナチスの傷痕 終わらぬ「輪舞」|好書好日

    「ウィーン1938年 最後の日々」 [著]高橋義彦 現代美術(アート)の世界でウィーンが話題になることはあまりない。だが、現代美術かどうかを問わず、日で美術に関心を持つものにとって、ウィーンは最重要の意味を持つ。「美術」という語そのものが、1873(明治6)年に日政府がウィーンで開催された万博に初めて参加する際に翻訳語として作られたものだ。 わたしはかねてウィーンに関心を持ち、訪ねてきた。が、そこで目にするのは、ヒトラーのナチス・ドイツによる「アンシュルス(オーストリア併合)」が残した傷痕でもあった。書は、このアンシュルスの前後に、かつてヨーロッパで最大級を誇った芸術都市で、政治家や芸術家により、どのような「輪舞」(19世紀末ウィーンを代表する作家シュニッツラーによる戯曲)が繰り広げられたかを描き出したものである。 精密な資料研究にもとづきながら、著者の筆致はそれこそ輪舞調で、専門書

    「ウィーン1938年 最後の日々」書評 ナチスの傷痕 終わらぬ「輪舞」|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/09/28
    “日本で美術に関心を持つものにとって、ウィーンは最重要の意味を持つ。「美術」という語そのものが、1873(明治6)年に…ウィーンで開催された万博に初めて参加する際に翻訳語として作られたもの”。著:高橋義彦。
  • 「アイヌがまなざす」「家族、この不条理な脚本」書評 多数派による差別と神話を解体|好書好日

    「アイヌがまなざす」 [著]石原真衣、村上靖彦/「家族、この不条理な脚」 [著]キム・ジヘ マジョリティはマイノリティが直面する困難に気づけない。自戒を込めていうと、学ぼうとしなければ、意図せずして差別を助長するかもしれない。目が覚めるような読書体験をもたらす2冊を届けたい。 『アイヌがまなざす』は、多数派日人である和人によって一方的に表象されてきたアイヌ自身が、和人をまなざし返す秀逸の書だ。インタビューを基に、遺骨返還運動、アイヌ女性への差別、学術界にみられる問題を軸に論じていく。 著者の1人、北海道大アイヌ・先住民研究センターの石原真衣氏は、日フェミニストは日人のことしか考えてこなかったのではないか、と問いを投げかける。 北米では、白人女性は黒人女性からの批判を受容しつつ、フェミニズムが発展してきた。一方、日ではジェンダー論の教科書にアイヌや沖縄、在日を取り巻く植民地主義を

    「アイヌがまなざす」「家族、この不条理な脚本」書評 多数派による差別と神話を解体|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/09/21
    「北米では、白人女性は黒人女性からの批判を受容しつつ、フェミニズムが発展してきた。一方、日本ではジェンダー論の教科書にアイヌや沖縄、在日を取り巻く植民地主義を扱う書はないという」
  • 「アメリカ革命」 自由と平等の建国イメージを解体 朝日新聞書評から|好書好日

    アメリカ革命-独立戦争から憲法制定、民主主義の拡大まで (中公新書 2817) 著者:上村 剛 出版社:中央公論新社 ジャンル:歴史・地理 「アメリカ革命」 [著]上村剛 18世紀末のアメリカ革命は、日では民主主義の起源として描かれることが多い。一般的なのは、イギリスの圧政に対して植民地の人々が立ち上がり、自由の国を打ち立てたという物語だろう。だが、こうした見方は建国に携わった白人男性のエリートたちを過度に英雄視するものだ。書は、最新の研究成果に基づき、このイメージに二つの角度から挑戦する。 第一に、書はこの革命を民主主義の始まりとしてではなく、世界初の成文憲法の成立として描く。重要なのは、多数の人間が憲法制定に携わったことだ。それ以前は、古代ローマを念頭に、立法者は一人であるべきだとされていたが、アメリカでは植民地を構成する諸邦の代表者が集い、憲法制定会議に参加した。書は、マディ

    「アメリカ革命」 自由と平等の建国イメージを解体 朝日新聞書評から|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/09/14
    「本書はアメリカの建国に関する伝統的な見方を解体した。それと同時に本書が解体したものが、もう一つある。それは、日本が目指すべきモデルとしてのアメリカ像だ」。評:前田健太郎。著:上村剛。中公新書。
  • 「丹波哲郎 見事な生涯」 俳優の革命児 霊界へ傾倒した訳は 朝日新聞書評から|好書好日

    「丹波哲郎 見事な生涯」 [著]野村進 昭和のテレビ世代のわたしにとって、丹波哲郎と聞いて真っ先に浮かぶのはドラマ「キイハンター」や「Gメン'75」で強烈な個性を誇ったハードボイルド・アクション・スターの姿だ。ところが、あるときから丹波は、とうてい同一人物とは思えない言動をおおやけに発信するようになる。人間は死んだら終わりではなく、死後の世界は実在し、自分はそのことを広く伝える「霊界の宣伝マン」だというのだ。映画「007は二度死ぬ」や「砂の器」、「日沈没」をはじめとする歴史的な名演の数々も色あせていく気がした。 わたしが丹波への関心を取り戻したのは、縁あって佐渡島に通うようになったのがきっかけだ。この地が2・26事件を思想的に主導したとされ死刑となった革命家、北一輝の故郷と知って訪ねた神社の境内で、北の記念碑のすぐ脇に五輪の塔が立っており、解説を読んで驚いた。この塔は蔣介石の右腕だった荘

    「丹波哲郎 見事な生涯」 俳優の革命児 霊界へ傾倒した訳は 朝日新聞書評から|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/09/07
    “なぜ、あれほどまでに霊界にはまっていったのか? 「きっかけは、身内に起こったちょっとしたアクシデントであったが、なぜそのようなアクシデントが起きるのか、人間の内面を深く知りたいと思った」(丹波)”
  • 「それでもなぜ、トランプは支持されるのか」 二極社会への憤りが生んだ「革命」 朝日新聞書評から |好書好日

    それでもなぜ、トランプは支持されるのか: アメリカ地殻変動の思想史 著者:会田 弘継 出版社:東洋経済新報社 ジャンル:西洋思想 「それでもなぜ、トランプは支持されるのか」 [著]会田弘継 不倫口止め料の不正処理事件をめぐり、米国の大統領経験者で初の有罪評決を受けたドナルド・トランプ。大統領選の結果を覆そうとした容疑など、他にも刑事裁判を抱えるが、支持は衰えない。黒人やヒスパニック、若者の支持も着実に広げてきた。数々の差別発言や民主主義を軽視する言動にもかかわらず、である。この現実を説明しようと、トランプ支持者を権威主義に魅入られ、噓(うそ)と真実の見分けもつかない哀れな人たちとみなす論調も広がる。 トランプが常識破りの人間であることは間違いない。しかし裏を返せば、かくも危険な人間に権力を与え、いったん何もかもを破壊し、「リセット」したいと思うほどに、大衆に政治への絶望と怒りが巣くってきた

    「それでもなぜ、トランプは支持されるのか」 二極社会への憤りが生んだ「革命」 朝日新聞書評から |好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/09/01
    「2016年大統領選でヒラリー・クリントンが勝利した全米472郡がGDPに占めた割合は64%に及び、〔…〕支持者の経済的な実態では、共和党が貧者の党になりつつある」。著:会田弘継。
  • 『「反・東大」の思想史』書評 「魔力」と「権力」に抗った人たち|好書好日

    『「反・東大」の思想史』 [著]尾原宏之 昨今の出版物でとりわけ腹が立つのが「東大生が……」と銘打っただ。東大生が教える歴史だとか、東大生が選んだの紹介だとか、たかだか学生をどうしてそこまで持ち上げるのか。 それでも売れるのは、この国では東大という名に不思議な魔力が宿るからだろう。魔力、魅力、そして権力。様々な力を持つ東大という存在に、抗(あらが)った人たちの歴史書にはある。トップバッターは慶応義塾を創設した福沢諭吉。だが福沢は最初から「反・東大」ではなかった。 その証拠に息子2人をできたばかりの東大予備門に入れている。2人は健康を害して慶応に移るが、福沢が官立学校の意義を認めていたのは明らかだ。慶応の学生が東大へ進学できる仕組みを作ろうとしたこともある。 しかし私学への抑圧が強まるにつれ、福沢は官学批判の急先鋒(きゅうせんぽう)となる。教育はあくまで私的なもので、政府が高等教育

    『「反・東大」の思想史』書評 「魔力」と「権力」に抗った人たち|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/08/31
    “(福沢諭吉は)官学の廃止や民営化を主張した。お金に余裕のある家の子しか大学に入れなくなっても、それはそれで仕方ない。「学問のすすめ」から逸脱するような議論に至ったのは、東大が持つ力への反発ゆえか”
  • 「気候リヴァイアサン」 歴史を遡り地球の未来を構想する 朝日新聞書評から|好書好日

    「気候リヴァイアサン」 [著]ジョエル・ウェインライト、ジェフ・マン 多くの人々は気候変動を主に自然環境に関わる問題とみなしている。だが、それですむだろうかと書は問いかける。気候変動に襲われる世界では、政治や経済の制度、たとえば近代国家や資主義市場なども変化を迫られるのではないか。 著者2人はエコロジー視点を取り込んだマルクス主義を掲げる気鋭の論者である。では、書は資主義の代替案を論じるのかというと、話はそう単純ではない。 著者らは歴史を遡(さかのぼ)り、人間と自然を分けてきた従来の学問では上記の問いに答えることが難しいという、質的な問題に立ち返る。科学は政治に禁欲的であったし、近代的な政治理論は資主義経済の発展と共に発展し、主に人間社会の戦乱や未知の変動を考察する枠組みであり続けた。たとえば、近代的な政治哲学の基礎を作ったトマス・ホッブズは、内戦を起こさず政情不安を抑制する方

    「気候リヴァイアサン」 歴史を遡り地球の未来を構想する 朝日新聞書評から|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/08/24
    「(世界が辿りうる4つの方向性の中で)唯一、これまでの民衆運動、特に反植民地主義闘争を踏まえて著者たちが希望とみなす方向性も描かれる」。著:ジョエル・ウェインライト、ジェフ・マン。評:隠岐さや香。
  • 「古くて新しい国」書評 思想的源流をたどる待望の翻訳|好書好日

    古くて新しい国: ユダヤ人国家の物語 (叢書・ウニベルシタス 1168) 著者:テオドール・ヘルツル 出版社:法政大学出版局 ジャンル:人文・思想 「古くて新しい国」 [著]テオドール・ヘルツル シオニズムは離散状態のユダヤ人が自らの国家の建設をめざす政治思想であり、イスラエル建国の源流となった。ただ、私も含め、日人はこのイデオロギーの歴史を深く理解できていない。その一因は、ウィーンを拠点にシオニズム運動を率いた作家テオドール・ヘルツルが、まだよく知られていないことにある。書は、その空白を埋める待望の翻訳である。 1902年に出た書は、意外なことにジュール・ヴェルヌのSFを思わせる近未来小説である。主人公のユダヤ人青年は、社会からのけ者にされた絶望ゆえに南島に移住するが、その途上で貧しいトルコ人やアラブ人の集う「原始状態」のパレスチナを目撃する。だが、彼が20年後に再訪したパレスチナ

    「古くて新しい国」書評 思想的源流をたどる待望の翻訳|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/08/24
    「シオニズム運動を率いた作家テオドール・ヘルツル」「本書は、意外なことにジュール・ヴェルヌのSFを思わせる近未来小説」「ひたむきな活動家ヘルツルは、アラブ人との衝突を想像していなかった」。評:福嶋亮大。
  • 「脳は眠りで大進化する」書評 先端科学の「交差点」からの報告|好書好日

    「脳は眠りで大進化する」 [著]上田泰己 現代は不眠社会である。特に多くの日人は睡眠不足のまま、仕事とネットに時間を奪われている。だが「目覚め」ばかりが政治的・経済的に評価され、眠りが軽んじられる社会はおかしい。今こそ〈睡眠政治学〉が必要ではないか。 その一方、日は意欲的な睡眠研究者を輩出してきた。その第一線で活躍中の生命科学者が、最新の動向を語ったのが書である。専門的な内容を含むので、私もすべて理解できたわけではないが、ざっとブラウズするだけでも有益である。 眠りは死や停滞を思わせるが、実はかなり活動的なものらしい。著者によれば、脳は覚醒時に「探索」し、その集めた情報を睡眠時に間引いて「選択」する(それはダーウィン進化論のモデルに通じる)。加えて、眠りの働きも一様でない。ノンレム睡眠は脳のシナプスを形成し、レム睡眠ではそれが整理されるという新説は興味深い。 さらに、眠りは時間生物

    「脳は眠りで大進化する」書評 先端科学の「交差点」からの報告|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/08/17
    “著者によれば、脳は覚醒時に「探索」し、その集めた情報を睡眠時に間引いて「選択」する。…ノンレム睡眠は脳のシナプスを形成し、レム睡眠ではそれが整理される”。評:福嶋亮大。著:上田泰己。
  • 「他なる映画と」1・2 なぜ寝てしまうか 素朴な問いから 朝日新聞書評から|好書好日

    「他なる映画と」1・2 [著]濱口竜介 濱口竜介は今や押しも押されもせぬ国際的な映画監督となったが、彼のレクチャーと評論を集めた二冊組みの書は、意外にも素朴な問いから始まる――なぜ映画を見ながら寝てしまうのか? 映画が人間にとって「他なるもの」だから、というのがその答えだ。カメラは「機械的な無関心」に基づいて世界を記録する。その記録をスクリーン上で再現する映写機も、観客の事情にはお構いなしに動く。映画を撮り、見るという体験の底には、人間の関心や生理を置き去りにするマシンの「自動性」があり、それが観客をスリープさせるのではないか……。思うに、誰もネットのショートビデオを見て眠ったりしない。それと比べれば、映画がいかにエイリアン的なメディアであるかがわかるだろう。 では、人間はこの「他なる映画」といかに関わり、そこから何を学べるのか。濱口はこの問いを、映画の父リュミエール兄弟から考え直す。リ

    「他なる映画と」1・2 なぜ寝てしまうか 素朴な問いから 朝日新聞書評から|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/08/10
    “なぜ映画を見ながら寝てしまうのか? 映画が人間にとって「他なるもの」だから、というのがその答えだ。…(映画には)マシンの「自動性」があり、それが観客をスリープさせるのではないか”。著:濱口竜介。
  • 「なぜ鏡は左右だけ反転させるのか」 身近で古典的な謎に挑む楽しさ 朝日新聞書評から |好書好日

    「なぜ鏡は左右だけ反転させるのか」 [著]加地大介 加地さん、ごぶさたしています。2003年に『なぜ私たちは過去へ行けないのか』という著書をいただいたのですが、そのとき私は、だって過去なんだもの行けるわけないじゃんと、読まないままにしていました。すいません。愚かでした。今回、かつて後半にあった鏡の謎を前半にもってきて、過去の謎を後半へと入れ替え、増補・改訂版として出されたので、ようやく読ませてもらいました。 まず、なぜ鏡は左右だけ反転させるのかという問題に、マーティン・ガードナーの説明が紹介され、私は加地さんとともになるほどーと思い、でも、と加地さんが考え直してまだこれじゃだめでしょと論じるところでそうだよなーと思い、続いてネッド・ブロックの議論が紹介され、私は加地さんとともになるほどーと思い、でも、と加地さんが考え直してまだだめでしょと論じるところでそうだよなーと思い直すという、いわば脳

    「なぜ鏡は左右だけ反転させるのか」 身近で古典的な謎に挑む楽しさ 朝日新聞書評から |好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/08/08
    “われわれが経験している空間は、3本の座標軸からなるデカルト座標…で捉えられているのではなく、加地(大介)さんが「回転座標」と呼ぶ捉え方をしているからだ。加地さんのこの答え、イケてると思います”
  • 「左利きの歴史」書評 長く続いた偏見 その源泉と今|好書好日

    左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛 著者:ピエール=ミシェル・ベルトラン 出版社:白水社 ジャンル:歴史・地理 「左利きの歴史」 [著]ピエール=ミシェル・ベルトラン わたしは左利きではないが、昔から憧れがあった。ロック史上最高のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスは左利きだったが、右利き用のギターをそのまま構えて、誰にも真似(まね)のできない演奏をした。美術の世界に目を向ければ、レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ、ハンス・ホルバイン、ヤン・ファン・エイク、ヒエロニムス・ボスといった巨匠たちが、抽象画ではカンディンスキーやクレー、加えて迷宮のような絵を描くエッシャーも左利きで、ルネサンスに戻れば、あの「天才」ミケランジェロも矯正された左利きだったらしい。 ところが、西洋社会で左手は長く嫌悪の対象とされてきた。「あらゆる名誉、あらゆる特権、あらゆる高尚さは右手に属し、あらゆる軽蔑、あら

    「左利きの歴史」書評 長く続いた偏見 その源泉と今|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/08/07
    “聖書では右手の優位は随所で喧伝されてきた。「ああ主イエスよ、どうかずっと私の右にいて、この手をけっして離さないでください」という一節など典型…。また、西洋の絵画でエバは禁断の果実を左手でもいできた”
  • 「関西フォークとその時代」書評 文学運動として位置づけ直す|好書好日

    「関西フォークとその時代」 [著]瀬崎圭二 関西フォークとは、1960年代から70年代にかけて、関西を中心に広がった音楽のうねりである。アングラ・フォーク、反戦フォークとも呼ばれたこの時代の〈うた〉を、書は文学運動として位置づける。 出発点は、難解きわまりない戦後現代詩への反発である。詩人たちは、詩の朗読やシャンソンに活路を求め、一部の者はフォークソングに出会った。フォークの側にも高田渡のように、無名の詩人を父に持ち、現代詩を読みあさってきた男がいた。日常のことばを求めた詩の運動と、単純なコード進行の音楽が交わり、若者文化を一変させた。 作り手、歌い手としてとりわけ印象的なのが友部正人だ。「あゝ中央線よ空を飛んで/あの娘の胸に突き刺され」(「一道」)。彼に接した谷川俊太郎は、話し言葉と書き言葉のほかに「歌い言葉というものがあるのではないか」と感じたという。〈ことば〉と〈うた〉の力を確信

    「関西フォークとその時代」書評 文学運動として位置づけ直す|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2023/12/16
    “アングラ・フォーク、反戦フォークとも呼ばれた…。印象的なのが友部正人だ。…彼に接した谷川俊太郎は、話し言葉と書き言葉のほかに「歌い言葉というものがあるのではないか」と感じたという”。著:瀬崎圭二。
  • 「マルクス解体」書評 最新研究ふまえた清新な切れ味|好書好日

    「マルクス解体」 [著・訳]斎藤幸平 書は派手に広告されているが、その内容は晩期マルクスの環境思想を発掘しようとする実直な研究書である。しかも、もとは英語で刊行された。人文・社会科学の分野で、日人が外国語で理論的著作を発表し、それが好評を得ることはめったにない。この快挙は、著者が普遍的な地平で思考してきたことを物語る。 マルクスの『資論』は未完に終わったが、その代わり晩年にかけて大量の研究ノートと草稿が遺(のこ)された。著者はこのノートの核心に、エコロジカルな経済学批判を認める。マルクスは自然科学に熱中し、特にリービッヒによる掠奪(りゃくだつ)農業批判に触発された。掠奪的な資主義は、自然と人間のあいだの「物質代謝」の循環に亀裂を入れ、土壌を荒廃させ、そこから来るトラブルを他に「転嫁」することで拡大する。彼はこの資の飽くなき成長が、世界規模の裂け目を生じさせることを予想していた。

    「マルクス解体」書評 最新研究ふまえた清新な切れ味|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2023/11/27
    “自然の支配に駆り立てられた近代のプロメテウス主義、自然と社会の区別をあいまいにするB・ラトゥール流の現代の一元論、そのいずれも批判する著者は、ルカーチ流の「方法論的二元論」に立つ”。著:斎藤幸平。
  • 「怪異と妖怪のメディア史」書評 多様な伝達者の性質を見極める|好書好日

    怪異と妖怪のメディア史 情報社会としての近世 (叢書パルマコン・ミクロス) 著者:村上 紀夫 出版社:創元社 ジャンル:歴史・地理・民俗 … 「怪異と妖怪のメディア史」 [著]村上紀夫 人と社会に深刻な楔(くさび)を打ち込んだ新型コロナ感染症の流行は、情報、そしてそれらを伝えるメディアの存在意義を我々に深く問い直す契機となった。深い分断の最中にあればこそ、人間は貴重な情報を媒介するものの正体を見極めねばならない。それはただ情報の真偽を疑うだけではなく、社会がどこに向かいつつあるかを察知する羅針盤だからである。 書は髪切り・一目連(いちもくれん)など五つの事例を題材に、怪異という「情報」が近世社会でどのように伝達されたかを、メディア論の視点から探る社会・文化史論。邦の妖怪研究の歴史は古く、「怪異」の語が学術用語として用いられるようになって久しい。筆者は中世的怪異と近世的怪異の差異を指摘し

    「怪異と妖怪のメディア史」書評 多様な伝達者の性質を見極める|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2023/11/19
    副題「情報社会としての近世」。“(髪切り・一目連・石塔磨き・雀合戦・流行正月など)怪異という「情報」が近世社会でどのように伝達されたか”。著:村上紀夫。創元社。評:澤田瞳子。
  • 「万物の黎明」 西洋の中心で文明観の反省迫る 朝日新聞書評から|好書好日

    ISBN: 9784334100599 発売⽇: 2023/09/21 サイズ: 21cm/643,55p … 「万物の黎明」 [著]デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェングロウ 数年に一度、人類史の全体像を提示するが現れ、国際的なベストセラーとなることがある。原書が2年前に英語で刊行された書も、その一冊だ。副題を見て『サピエンス全史』のようなを思い浮かべるかもしれないが、その印象は裏切られるだろう。人類学者と考古学者の手で書かれた書は、このジャンルの前提に正面から挑戦する。 その前提とは、人間社会が一定のパターンに沿って進化するということだ。典型的には、小規模で平等な狩猟採集社会が、定住農耕による生産力の向上を経て、階級格差を伴う大規模な国家へと発展する。 書によれば、こうした思考は西洋人の偏見にすぎない。近年の考古学は、農耕が始まる前に巨大な都市が築かれたことを示す遺跡な

    「万物の黎明」 西洋の中心で文明観の反省迫る 朝日新聞書評から|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2023/11/15
    「先住民の政治思想がヨーロッパの身分制社会を揺るがすことを恐れた啓蒙思想家たちは、自らをアメリカよりも進んだ文明として位置づけようと試みた」。評: 前田健太郎。著:D・グレーバー、D・ウェングロウ。