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ブックマーク / book.asahi.com (315)

  • 「自転車」書評 対立を超え 生きるために乗る|好書好日

    自転車」 [著]ジョディ・ローゼン 500ページの熱量に探り探り読み出すと、移動手段として自転車を決定づける特徴は、動力源が乗り手であることだと書いてあった。 自分が動力になる。体の内から思い出すのは子ども時代、手足のすり傷と引き換えに初めてすーっと自転車が進んだ時の浮遊感。親の知らない空き地へ友だちと風を切る解放感も、ペダルをこいで得たものだ。 人びとが自転車に乗る時、社会では何が起きたか。著者は自転車200年の旅に出る。 選ぶルートは壮大にして脇道もたっぷりだ。山国ブータンで過酷な自転車レースを開く理由、パリの運河の底に大量の自転車が沈む怪、天安門広場に集まった自転車の行方は。膨大な資料に取材を織り交ぜ、自転車の過去と今、光も影も、最後は口笛を吹くような軽妙なタッチで描き出す。 キーワードが新旧の価値観の対立。そもそも自転車の原型が街に出た19世紀初め、馬車を邪魔するものだと各地で禁

    「自転車」書評 対立を超え 生きるために乗る|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/03/23
    「一方、自転車の新しさを女性たちは支持する。不道徳を夫に訴えられてもコルセット入りのスカートをブルマーにはきかえ、自分をしばる家から外へこぎ出すのだ」 ←ゴダールの映画『勝手に逃げろ/人生』でも今の生活
  • 「厨房から見たロシア」書評 料理人が知る食のプロパガンダ|好書好日

    厨房から見たロシア:包丁と鍋とおたまで帝国を築く方法 著者:ヴィトルト・シャブウォフスキ 出版社:白水社 ジャンル:歴史・地理 「厨房から見たロシア」 [著]ヴィトルト・シャブウォフスキ 書によると、プーチン大統領の伝記のほぼすべてに彼の祖父がレーニンとスターリンの料理人だったと書いてあるという。が、真偽の問題ではない。かつてレーニンは「料理人がどれほど重要か」を説いたというし、「国家元首の事は最高機密のひとつ」で、国の「安全保障に関わる問題」なのだ。それならプーチンの伝記が「ソ連の指導者たちが私の祖父を信頼したのだから、皆さんも私を信頼していい」と囁(ささや)いているように読めても不思議ではない。 これはほんの一例だ。著者は「最後のロシア皇帝一家と運命を共にした料理人からプーチン大統領の祖父まで」ロシアのプロパガンダがいかに厨房(ちゅうぼう)から機能するかについて、およそ100年に及

    「厨房から見たロシア」書評 料理人が知る食のプロパガンダ|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/03/23
    “かつてレーニンは「料理人がどれほど重要か」を説いたというし、「国家元首の食事は最高機密のひとつ」で、国の「安全保障に関わる問題」なのだ。…「軍隊が出動すれば、調理師も真っ先に出動する」”
  • 「投票の倫理学」(上・下)書評 共通善を促す一票をこそ投じよ|好書好日

    投票の倫理学 上: ちゃんと投票するってどういうこと? 著者:ジェイソン・ブレナン 出版社:勁草書房 ジャンル:政治 「投票の倫理学」(上・下) [著]ジェイソン・ブレナン 私たちの多くは、選挙で投票するのは良いことだと考えている。投票率を上げるための啓発活動も広く行われてきた。だが、果たして当にそうなのか。この問いを哲学的に検討した書は、驚くべき答えを示す。民主国家の市民には、投票する義務はない。むしろ、正しく投票できない人は投票すべきではないのだ。 投票の義務がない理由は、1票の影響力が極めて小さいということとは別に、投票しなくても社会の共通善を促進できるからだ。これまで、良き市民は公的な活動に参加する必要があるという考え方が強かったが、他に方法は無数にある。家庭で子どもの世話をする人も、私的な活動を通じて共通善を促進している。 それでも投票するならば、その選択が有権者の私的な利益

    「投票の倫理学」(上・下)書評 共通善を促す一票をこそ投じよ|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/03/15
    「投票するならば、その選択が有権者の私的な利益ではなく、共通善を促進すると信じるに足る理由がなければならない。…正しい選択肢に投票したとしても、それが間違った理由から行われたのであれば、やはり他人を害
  • 『行動経済学で「未知のワクチン」に向き合う』書評 専門家の奮闘 ナッジの条件は|好書好日

    『行動経済学で「未知のワクチン」に向き合う』 [著]佐々木周作、大竹文雄、齋藤智也 人間の認知特性を踏まえて行動変容を促す政策手法はナッジといわれ、行動経済学の大きな成果の一つとされる。近隣家庭の電気使用量を示すことで節電を促すといったことがその一例だ。書は、コロナ禍におけるワクチン接種政策を巡って、行動経済学者がナッジを実践することに奮闘した記録だ。 なにしろ新型コロナウイルス自体も未知ならば、ワクチンの効果も未知だった。そんな中では、専門家も手探りにならざるを得ない。著者らは、ワクチンの接種意向に関する調査を行って、日人の接種意向が思ったよりも低くないことを確認すると、どうすればワクチン接種がスムーズに進むか考え出す。ワクチン接種券にどのようなメッセージを付けると接種を行う人が多くなるのか実験した結果、「ワクチン接種であなたの大切な人に安心して会いに行けます」といったメッセージが有

    『行動経済学で「未知のワクチン」に向き合う』書評 専門家の奮闘 ナッジの条件は|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/03/09
    「本書が面白いのは、専門家が未知の事象に直面した人々の行動を分析しているのと同時に、その専門家たち自身が未知の事象に接した際の混乱についても報告しているという入れ子構造として読めること」。評:酒井正。
  • 「スクリーンのなかの障害」書評 映画が得る新たな表現の可能性|好書好日

    「スクリーンのなかの障害」 [著]塙幸枝 〝映画のなかの○○〟を論じたは数限りなくあるけれど、書を目にしてはじめて、障害についてのには出会ったことがなかったと気づく。障害が可視化されづらく、語りづらいことのあらわれだろう。 書は前半で、社会における障害の位置づけの通時的変化を追い、それをゆるやかに反映する、映画のなかの障害者像をたどる。前提として、障害という概念の発生から認識の見直しにいたる障害学の理論的枠組みがわかりやすく解説され理解を助ける。『フリークス』『エレファント・マン』『フォレスト・ガンプ』といった古今の名作を経由して浮かび上がる、「恐れ」「差別」の対象から「哀れみ」そして「共生」の対象へという描かれ方の変遷は、たとえば『セルロイド・クローゼット』が描いた同性愛者像へのそれとも類似する(同性愛は長く精神疾患とされてきた歴史がある)。大事なのは、そこに隠れた排除の構造を読

    「スクリーンのなかの障害」書評 映画が得る新たな表現の可能性|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/03/01
    “障害者の役を健常者が演じるときの「リアリティの有無」をめぐる最終章も、…当事者キャスティングと…人種的配慮などポリティカル・コレクトネスの行方を考えるための有益な視座を与えてくれる”。著:塙幸枝。
  • 「クラウディオ・アバド」書評 精妙な音楽づくり 出色の評伝|好書好日

    「クラウディオ・アバド」 [著]ヴォルフガング・シュライバー 若い頃、アバド指揮のCDをよく聴いた。ヴェルディ演奏の金字塔「シモン・ボッカネグラ」、生気潑溂(はつらつ)としたロッシーニ序曲集、ピレシュやグルダらと組んだモーツァルトのピアノ協奏曲。どれも明快で理知的な音楽づくりから、のびやかで豊かな歌が深く響く演奏であり、その洗練されたセンスは比類がない。お高くとまった気取りとは無縁の、軽快で機能的で、かつ奥行きのある多彩な響きを丹念に手づくりする――それはクラシック音楽の「静かな革命」と呼ぶにふさわしい。 そのアバドの人生を再現した書は、達意の訳文も含め、音楽家の評伝としては近年出色の一冊である。もともと、詩に強い関心をもち、内向的で寡黙であった彼は、カラヤンのような独裁者的な指揮者であることを望まず「自己抑制と反権威主義」を貫いた。楽団の演奏家たちが「お互い聴きあうこと」に根ざした、彼

    「クラウディオ・アバド」書評 精妙な音楽づくり 出色の評伝|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/02/23
    「イタリアの反ファシズム運動を背景とするアバドは、音楽を骨董品にすることを拒み、盟友のルイジ・ノーノやポリーニとともに、音楽と政治が切り結ぶ地点を探究した」。評:福嶋亮大。著:W・シュライバー。
  • 「〈ロシア〉が変えた江戸時代」書評 黒船より早く届いた北方の足音|好書好日

    ロシア〉が変えた江戸時代: 世界認識の転換と近代の序章 (歴史文化ライブラリー 613) 著者:岩﨑 奈緒子 出版社:吉川弘文館 ジャンル:歴史・地理 「〈ロシア〉が変えた江戸時代」 [著]岩﨑奈緒子 ペリーの来航を扱った狂歌〈泰平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船) たった四杯で夜も眠れず〉は、私たちに幕末のイメージを強く植えつけている。巨大な黒船の出現が、当時どれほど衝撃だったか。 そしておそらく幕府はぼんやりしていて、泰平の夢をむさぼっていたに違いない。そんなふうに思い込んでいるとすれば修正が必要だ。少なくとも一部の幕閣や知識人たちは、とっくに眠りから覚めていたと、書は教えてくれる。 きっかけはペリー来航の約80年前。ある異国人から不穏な情報がもたらされた。「ルス国」の船が「かむしかってか」に集結し、「クルリイス」にとりでを築いている――。ロシアによるカムチャツカや千島列島への進出を伝

    「〈ロシア〉が変えた江戸時代」書評 黒船より早く届いた北方の足音|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/02/22
    “彼ら(工藤平助、前野良沢、松平定信ら)が西洋の書物や蝦夷地の調査を通じて「ルス国」の実態に迫っていく様子は、「プロジェクトX」の趣がある”。著:岩﨑奈緒子。吉川弘文館。
  • 「ピアノへの旅」書評 起源にさかのぼり欠点も再認識|好書好日

    「ピアノへの旅」 [著]坂龍一 書は、今は亡き坂龍一の手がけたスコラ・シリーズの一冊として、2021年に刊行された対話集の再刊である。内容は高度だが、堅苦しい読み物ではない。坂を中心に、フランクでやわらかい語り口のピアノ談義が続くので、読者は知的好奇心をかきたてられるうちに、自然とこの魅力あふれる楽器への展望を与えられるだろう。 坂によれば、ピアノの粒子状の音はすぐに「減衰」してしまうからこそ、作曲家や演奏家はそれに抗(あらが)うように「持続する音」を追い求めてきた。坂は一貫して、メロディではなくピアノの「響き」の減衰と持続性に注目する――それも、強くてきらびやかな音ではなく、弱くて揺らぎのある音色のポテンシャルを引き出しながら。彼の愛好するミケランジェリ、ビル・エヴァンス、クルターグ夫らは、ピアノがその軽さや静けさにおいて、いかに表情豊かに響くかを示した演奏家なのだ。 その

    「ピアノへの旅」書評 起源にさかのぼり欠点も再認識|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/02/15
    “坂本(龍一)によれば、ピアノの粒子状の音はすぐに「減衰」してしまうからこそ、作曲家や演奏家はそれに抗うように「持続する音」を追い求めてきた。坂本は一貫して、メロディではなくピアノの「響き」の減衰と持
  • 「法の人類史」書評 社会のビジョンを提示する役割|好書好日

    「法の人類史」 [著]フェルナンダ・ピリー 法は、社会秩序を守る上で欠かせないとされている。では、それはどこから生まれたのか。古代ローマから近代ヨーロッパに至る法の支配の歴史は有名だが、西洋以外でも様々な社会が法を作ってきた。書は、従来の西洋中心的な見方を改め、法の世界史を展望する。 書によれば、今日の法にはメソポタミア、インド、中国という3つの源流があった。何かと特別視されがちなローマ法は、実はメソポタミアの伝統に属する多様な法の1つであり、ユダヤやイスラムの法と同系統に属する。また、法が支配者を縛るのもローマ法の専売特許ではない。インドではヒンドゥーの法を司(つかさど)るバラモンが王の権力に制限を加えた。中国のように、皇帝は法に縛られないとするモデルは、むしろ例外なのだ。 さらに書は、法には実用的な目的だけでなく、社会のビジョンを提示する役割もあると指摘する。例えば、ハンムラピ法

    「法の人類史」書評 社会のビジョンを提示する役割|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/02/01
    「今日の法にはメソポタミア、インド、中国という3つの源流があった。何かと特別視されがちなローマ法は、実はメソポタミアの伝統に属する多様な法の1つであり、ユダヤやイスラムの法と同系統に属する」
  • 「休息の歴史」書評 産業革命前は創造的な営み|好書好日

    「休息の歴史」 [著]アラン・コルバン 私は疲れている。だから休息について豊かな言葉が紡がれる書に惹(ひ)かれた。現代の休日は労働の疲れを癒やし、再び労働に向かうためのものになってしまっている。書はこうした考えが産業革命以降のものであるとして、過去の世界でどう違っていたのかを教えてくれる。 もともと日曜日に休む習慣は旧約聖書の定める安息日に由来するが、これは祈りなど宗教的活動に捧げるべき日だった。働かないがゆえに聖なる日だったのである。老年期の引退や隠居、社交しない引きこもり生活、更には政治的失脚や監禁状態にも休息としての価値を見出(みいだ)す人はいたようだ。要は18世紀頃まで、休息とは喧噪(けんそう)を離れて己をよく知り、心の平穏を保ち、自分自身に戻るための創造的な営みと考えられていたのである。 著者アラン・コルバンは1936年生まれ、「においの歴史」など、一昔前では歴史学の対象にな

    「休息の歴史」書評 産業革命前は創造的な営み|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/02/01
    「18世紀頃まで、休息とは喧噪(けんそう)を離れて己をよく知り、心の平穏を保ち、自分自身に戻るための創造的な営みと考えられていた」。評:隠岐さや香。著:アラン・コルバン。藤原書店。
  • 「女の子のための西洋哲学入門」書評 固定された枠組みを見つめ直す|好書好日

    「女の子のための西洋哲学入門」 [著]メリッサ・M・シュー、キンバリー・K・ガーチャー なぜ哲学をやるのか。「楽しいから」というのが音だが、このを読んでいて思い出した。そうだ、不愉快だからだ。 哲学は、当たり前と思っていることに揺さぶりをかけ、亀裂を生み、ときに突き崩していく。私自身は、実在とか心とか他者といった問題に答えようとしてうまく答えきれず、その悔しさが哲学の原動力になってきた。しかし哲学の視野はもっとはるかに広い。数えきれないほどの問題に軋(きし)む社会の中で生きている私たちは、無自覚の内に多くの見方、考え方を当然のものとしている。哲学はそんな私たちを安定した場所からずり落とし、不安定にさせる。常識が常識でなくなり、分かっていたつもりのことが分からなくなる。実に不愉快きわまりない。その意味で、このはけっこう不愉快なである。 二十人の女性哲学者たちがそれぞれ一ずつ、とくに

    「女の子のための西洋哲学入門」書評 固定された枠組みを見つめ直す|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/01/25
    「哲学は、…常識が常識でなくなり、分かっていたつもりのことが分からなくなる。実に不愉快きわまりない。その意味で、この本はけっこう不愉快な本である」。評:野矢茂樹。編:シュー+ガーチャー。
  • 「庭の話」 ネットの外へ 新たな公共性を構想 朝日新聞書評から |好書好日

    「庭の話」 [著]宇野常寛 昨年はSNSの世論形成の力とともに、デマや陰謀論の流布をはじめ、その弊害が一段と目立った年であった。もともとシリコンバレーのIT企業は、反権威的で自由至上主義的な個人主義を信条としていた。だが皮肉なことに、彼らの推進したSNSは逆に、個人を巨大なプラットフォーム経済に巻き込み、身体性のないデータやプロフィールに置き換え、同質的な意見ばかりが反響する「村々」を作り出してしまったのだ。 この苦境からいかに抜け出せるか。メタバースや生成AIの「新しさ」に期待しても、同じ罠(わな)に陥るだけである。かといって昔ながらの共同体を回復するのは、非現実的であり望ましくもない。そこで批評家の宇野常寛は、生態系を組み込んだ公共性のモデルを構想する。そのキーワードが〈庭〉である。 庭は「人間外の事物同士がコミュニケーション」する場である。人間はそこを支配できず、ただ部分的に関与する

    「庭の話」 ネットの外へ 新たな公共性を構想 朝日新聞書評から |好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/01/25
    “庭は「人間外の事物同士がコミュニケーション」する場である。…人間関係だけで閉じたネット社会の外で、事物との「交通空間」(柄谷行人)を築き直す試みなのだ”。評:福嶋亮大。著:宇野常寛。
  • 「AI・機械の手足となる労働者」書評 工場化した世界 進む労働強化|好書好日

    AI・機械の手足となる労働者: デジタル資主義がもたらす社会の歪み 著者:モーリッツ・アルテンリート 出版社:白揚社 ジャンル:世界経済 「AI・機械の手足となる労働者」 [著]モーリッツ・アルテンリート テクノロジーが労働に及ぼす影響というと、最近はAIによって人間の仕事が奪われるというシナリオばかりに注目が集まるが、そのテクノロジーの隙間を埋めるために人間の安価な労働力が大量に投入されている点は見過ごされがちだ。検索結果の最適化や、AIの学習データの提供、コンテンツ・モデレーション(ネットへの投稿内容の適切性の判断)といった仕事がそれらに当たる。そこでは、仕事はタスクごとに細かく分解され、出来高払いで行われる。企業にとっては、需要の波に対応できる柔軟な雇用ということになるが、実態は劣悪な仕事であることが多いという。というのも、労働者はアルゴリズムによって秒単位で監視されており、少しで

    「AI・機械の手足となる労働者」書評 工場化した世界 進む労働強化|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2025/01/11
    「(労働者は空間的に分散し)雇用者に対して連帯することが難しくなる。…自分のしている業務がどのような目的の下におこなわれているのかしばしば理解できず、まさに機械の手足となっている」。M・アルテンリート
  • 「TwitterからXへ 世界から青い鳥が消えた日」書評 ヘイトも促した「拡声器」の攻防|好書好日

    TwitterからXへ 世界から青い鳥が消えた日 ジャック・ドーシーからイーロン・マスクへ、炎上投稿、黒字化、買収をめぐる成功と失敗のすべて 著者:カート・ワグナー 出版社:翔泳社 ジャンル:ビジネス・経済 「TwitterからXへ 世界から青い鳥が消えた日」 [著]カート・ワグナー 日はX(旧ツイッター)が異常に好きな国。ユーザー数1位はアメリカだが、2位は他国を引き離し日なのだ。 書は共同創業者ジャック・ドーシーの若き日から、イーロン・マスクの買収による凋落(ちょうらく)までを辿(たど)るルポ。イケイケでスピード感ある現地の空気が伝わってくる。日の国民的SNSは、実のところ、アメリカのエリート男性のネットワークを中心に動いている。古くからの友人や同僚に声をかけ、ポストを回す。 前半はドーシーがCEOに復帰する局面から。ツイッターが「有名人の拡声器」の機能を持つ以上、CEO

    「TwitterからXへ 世界から青い鳥が消えた日」書評 ヘイトも促した「拡声器」の攻防|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/12/22
    「(イーロン・)マスクはツイッターを私物化し、息子と同じ名であるエックスに変えた」 ←そうだったのね…。「われわれは、#XODUS(Xからの脱出)できるのだろうか」。評: 藤田結子。
  • 「民藝のみかた」書評 本流から切り離され静かに存在|好書好日

    「民藝のみかた」 [著]ヒューゴー・ムンスターバーグ 今日の現代美術ブームの背景には、作家の署名を必要とする自我表現としての個人主義があるように思える。 僕が大衆芸術と呼ばれるグラフィックデザインを起点とした1960年代はモダニズムの台頭する時代で、僕が地方で幼年時代を過ごした頃は土俗的産物として民藝(みんげい)が生活環境を支配していたように思えた。 民藝もグラフィックも大衆という同根を源流にしていたにもかかわらず、近代デザインを確立するためには民藝はどことなくうさん臭く、この時代から排除されており、土俗的環境からいきなり西洋近代主義に洗脳されたために、僕の内部の民藝的土俗性を追放せざるを得なかった。が、わずかに残った土俗的尾骶骨(びていこつ)によって、あの時代の僕の演劇ポスターが生まれた。 さて、その時代に民藝がすたれかけた理由は、有名性を否定し、あくまで実用を目的として芸術的な試みを無

    「民藝のみかた」書評 本流から切り離され静かに存在|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/12/14
    「今日の現代美術が観念と言語によるコンセプチュアル全盛なのに対して民藝は、むしろ霊性への覚醒をうながしているように思える…。霊性の覚醒は知性の否定から生じる」。評:横尾忠則。著:H・ムンスターバーグ。
  • 「アーレントと黒人問題」書評 思想に内在する差別 その先に|好書好日

    「アーレントと黒人問題」 [著]キャスリン・T・ガインズ 全体主義の生成にレイシズムが果たした役割を指摘した哲学者ハンナ・アーレント。書はその思想に黒人差別が一貫して存在したと告発する。 1957年、アメリカで人種統合が進められる中、アーカンソー州リトルロックの高校に入学した黒人の登校を、白人群衆が実力で阻もうとした。事件を論じたアーレントは、社会的地位の上昇をもくろむ黒人たちが、我が子を白人に同化させようと人種統合校に入れたと決めつけ、子どもの尊厳をひどく傷つけたと批判した。実際には黒人の親たちは、レイシズムに屈せず生き抜く訓練として決死の思いで子どもを送り出していた。 アーレントはユダヤ人として無数の差別を経験したが、その経験は黒人問題の洞察には生かされなかった。レイシズムを批判的に分析した『全体主義の起源』でもアフリカ人は非理性的な存在として描かれ、ヨーロッパ人による虐殺は理解可能

    「アーレントと黒人問題」書評 思想に内在する差別 その先に|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/12/08
    「思想家に問題を認めることは、そんな思想は無価値だと対話を終了させることではない。レイシズムと格闘したアーレントが、なぜ黒人差別には鈍感だったのか。…本書はアーレントとのさらなる対話へ誘う」。著:K・T
  • 「イルカと否定神学」書評 「無条件の受け入れ」による効果|好書好日

    イルカと否定神学――対話ごときでなぜ回復が起こるのか (シリーズケアをひらく) 著者:斎藤 環 出版社:医学書院 ジャンル:臨床看護学 「イルカと否定神学」 [著]斎藤環 フィンランドで発明されたオープンダイアローグ(OD)は、グループの対話を主とする新たな心理療法として、近年注目されている。日では特に斎藤環が熱心に導入してきたが、彼の来の思想的拠点は、難解をもって鳴るジャック・ラカンの精神分析にあった。では、ODの何が画期的で、ラカンの思想とはどんな「対話」が成り立つのか。その探究が書のテーマである。 ODの核心には、対話の「条件なき受け入れ」がある。斎藤によれば、ODはケアの手法でありながら、治療や改善という目的をいったん捨てて、目の前の患者との対話に集中するように促す。不思議なことに、この無条件のプロセス重視の姿勢が、かえって精神病の治療には効果的らしい。逆に、治そうと力んで「

    「イルカと否定神学」書評 「無条件の受け入れ」による効果|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/11/23
    “(精神病を)治そうと力んで「なぜ」という因果思考を患者に向けると、対話は硬直し閉ざされてしまうのだ” ←國分功一郎の書いた「意志」の問題とも通じているようだ。著:斎藤環。評:福嶋亮大。
  • 「神と銃のアメリカ極右テロリズム」書評 「内戦」の恐れ 誰が大統領でも|好書好日

    「神と銃のアメリカ極右テロリズム」 [著]ブルース・ホフマン、ジェイコブ・ウェア 暴徒化したトランプ支持者による2021年の連邦議会議事堂襲撃を経て、アメリカにおける内戦の可能性が、映画「シビル・ウォー」をはじめ公然と語られるようになった。アメリカ社会の分断は、いずれ国内での長期的な武力闘争に到(いた)るのではないかという懸念が高まっているのだ。 それは常識的にはありそうもないと思えるが、実際には1970年代以降、アメリカでは極右テロが何度も起こってきた。01年の同時多発テロ事件によって、アルカイダのようなイスラム過激派がテロリストの代表に仕立てられたが、それ以前はむしろ極右の白人至上主義者こそが暴力を煽動(せんどう)したのである。書は、この暴力とイデオロギーの歴史を丹念に追った警世の書である。 白人至上主義者の考えでは、アメリカはキリスト教徒の白人男性中心の国家であるべきなのに、間違っ

    「神と銃のアメリカ極右テロリズム」書評 「内戦」の恐れ 誰が大統領でも|好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/11/16
    “極右のテロリストは昔から「一匹狼型」が多く、リーダー不在の草の根的な抵抗を好んだ。ソーシャルメディアはこの伝統を再興しただけではなく、極右の世界的なつながりも助長…”
  • 『「それ」のあったところ』 「書くことは野蛮」越えた4枚 朝日新聞書評から |好書好日

    「それ」のあったところ: 《ビルケナウ》をめぐるゲルハルト・リヒターへの4通の手紙 著者:ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 出版社:新曜社 ジャンル:アート・建築・デザイン 『「それ」のあったところ』 [著]ジョジュジュ・ディディ=ユベルマン 哲学者アドルノによる「アウシュヴィッツ以降、詩を書くことは野蛮である」は、詩人のみならず、以後を生きるすべての表現者に大きな困難を背負わせた。ひとつの民族をこの世界から抹消しようとしたヒトラーの蛮行は、それを経てなお、かつてと同じように芸術にいそしむことに根源的な疑問を突き付けた。 事実、世界最高峰と称されるドイツの画家、ゲルハルト・リヒターでさえ、アウシュヴィッツを「描く」のに、題材となる写真と出会ってから60年もの時を要した。リヒターが重い腰を上げるきっかけとなったのは、書の著者であるフランスの哲学者ディディ=ユベルマンによるアウシュヴィッツ論

    『「それ」のあったところ』 「書くことは野蛮」越えた4枚 朝日新聞書評から |好書好日
    hharunaga
    hharunaga 2024/11/09
    “抽象画にしか見えない…絵具の層の下に「核」として4枚の写真を描いた具象画を潜ませており、ユベルマンはそれらの「写真」が絵具の層の下で「どのように生き延びているか」について問うている”
  • 「宇宙人」との共同作業 危機の時代に立ち上げた「批評空間」:私の謎 柄谷行人回想録⑲|じんぶん堂

    記事:じんぶん堂企画室 浅田彰さん(左)と柄谷さん。スペインのポルトボーに思想家ベンヤミンの墓を訪ねた=1993年、高木崇雄さん撮影 書籍情報はこちら ――1980年代後半から90年代の柄谷さんの活動についてお聞きしていきます。ソ連の崩壊や阪神淡路大震災をはじめ国内外で歴史的な動乱期ですが、柄谷さんの周囲でも雑誌を立ち上げたり、湾岸戦争反対の署名の運動をしたりと、様々な出来事がめまぐるしく起きている時期です。盟友だった作家の中上健次が亡くなったのも92年でした。 柄谷 いまから思うと、それまでやってきたことに始末をつけていった時期でした。一口でいうと、文学から決別する方向に向かったのです。 一方で、この時期は、まったく新しいことを始めたときでもあった。それには時代の変化が大きかったと思う。冷戦構造の崩壊、湾岸戦争勃発などが重なったときに、それを実感しました。それで行動的になった、ともといえ

    「宇宙人」との共同作業 危機の時代に立ち上げた「批評空間」:私の謎 柄谷行人回想録⑲|じんぶん堂
    hharunaga
    hharunaga 2024/10/25
    「僕がやっていることについて、浅田(彰)君がまとめてくれると、なるほどそうだったのか、と自分で自分のことがわかることもよくあった。」