「恐怖とパニックの人類史」 [著]ロバート・ペッカム 第2次トランプ政権が繰り出す「トンデモ」政策に、米国のみならず世界全体が恐怖を覚え、パニックともいえる動揺が広がっている。原書は2年前の出版だが、その時点で著者が、思想と表現の自由が抑圧され、民主主義が瓦解(がかい)すると見抜いているのが、慧眼(けいがん)だ。 人類の歴史を中世の疫病蔓延(まんえん)から始め、恐怖とパニックがいかに統治者や資本家、メディアや行政官により政治化され、支配の道具とされてきたかを本書は追う。そこで取り上げるのは、フランス革命後の恐怖政治や、ナチス・ドイツ、スターリンのソ連といった全体主義下での恐怖による圧政だけではない。ヨーロッパが都市化し、さまざまな階層、出身の住民の間の距離が縮まり、密な空間での感染症への恐怖が高まり、工業化したことで産業機械に命を奪われることに、怯(おび)える。 群衆の恐怖とパニックは、近
