「自転車」 [著]ジョディ・ローゼン 500ページの熱量に探り探り読み出すと、移動手段として自転車を決定づける特徴は、動力源が乗り手であることだと書いてあった。 自分が動力になる。体の内から思い出すのは子ども時代、手足のすり傷と引き換えに初めてすーっと自転車が進んだ時の浮遊感。親の知らない空き地へ友だちと風を切る解放感も、ペダルをこいで得たものだ。 人びとが自転車に乗る時、社会では何が起きたか。著者は自転車200年の旅に出る。 選ぶルートは壮大にして脇道もたっぷりだ。山国ブータンで過酷な自転車レースを開く理由、パリの運河の底に大量の自転車が沈む怪、天安門広場に集まった自転車の行方は。膨大な資料に取材を織り交ぜ、自転車の過去と今、光も影も、最後は口笛を吹くような軽妙なタッチで描き出す。 キーワードが新旧の価値観の対立。そもそも自転車の原型が街に出た19世紀初め、馬車を邪魔するものだと各地で禁
