ブックマーク / honz.jp (50)

  • 2011-2024 この13年間における最高の一冊 - HONZ

    2011年7月15日にオープンしたノンフィクション書評サイトHONZ。日2024年7月15日をもちまして13年間のサイト運営に終止符を打つこととなりました。 2011年の東日大震災から、記憶に新しいコロナ禍まで。はたまたFacebookの時代からChatGPTの到来まで。その間に紹介してきた記事の総数は6105。 発売3ヶ月以内の新刊ノンフィクションという条件のもと、数々のおすすめを紹介する中で、様々な出会いに恵まれました。信じられないような登場人物たち、それを軽やかなエンターテイメントのように伝える著者の方たち、その裏側で悪戦苦闘を繰り広げていたであろう版元や翻訳者の皆さま。さらに読者へ届ける取次会社や書店員の皆さま、そしてHONZを愛してくださったすべての皆さま、当にありがとうございました。 サイトを閉じることになった理由に、明快なものは特にありません。こんなサイトがあったら

    2011-2024 この13年間における最高の一冊 - HONZ
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    hide_nico 2024/07/15
  • 『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』著者、小林照幸にあの頃のこと訊く - HONZ

    死の貝:日住血吸虫症との闘い (新潮文庫 こ 28-2) 作者: 小林 照幸 出版社: 新潮社; 文庫版 発売日: 2024/4/24 小林照幸『死の貝 日住血吸虫症との闘い 』(新潮文庫)が注目されている。4月24日に上梓されて以来、現在4刷、累計2万6千冊のスマッシュヒットだ。26年前の1998年に出版されたが、なぜいまこんなに注目を浴びているのか。以前より小林照幸のを”激推し”してきた東えりかと、医学者・仲野徹が話を聞いた 仲野 『死の貝』は昔読んだ記憶があったけれど、文庫化されたのも20年以上時間が経ってからだし、こんなに注目されることってある?と不思議になりました。どうして突然文庫化されたんですか? 小林 それは新潮社さんからご説明頂きましょうか。 編集部 もともと新潮社の営業部と未来屋書店で、月に一回、情報交換の定例会議をしています。そのなかで女性書店員さんが「そういえ

    『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』著者、小林照幸にあの頃のこと訊く - HONZ
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    hide_nico 2024/07/01
    “それにしても吉村昭氏も新田次郎氏も、いわば日本の文豪ですよね。そこに小林照幸氏という若いノンフィクション作家が入っている、というのは面白いですよね。”
  • 科学はいまだに法律に導入されない 『人を動かすルールをつくる──行動法学の冒険』 - HONZ

    作者: ベンヤミン・ファン・ロイ,アダム・ファイン 出版社: みすず書房 発売日: 2023/5/18 わたしたちは法律や条例などのルールに囲まれて生きている。そして、それらの多くがわたしたちを深刻な危害から守ってくれていることは間違いない。だがその一方で、何らかの理由でルールがうまく機能していない場合も少なくない。ほとんどのドライバーが守っていない、ある道路での速度制限。日々新たに報じられる、企業のコンプライアンス違反。では、そうした一部のルールがあまり守られないのはどうしてだろうか。 書はその問題に真正面から挑んだものである。ただし、その挑み方は従来のものとは異なる。書は、「どうして人はルールを守らないのか」と問うたりはしない。そうではなく、人に一定の行動傾向があることを前提として、「どうして法的ルールは人の行動を改善できないのか」と考えるのである。 わたしたちには一定の行動パター

    科学はいまだに法律に導入されない 『人を動かすルールをつくる──行動法学の冒険』 - HONZ
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    hide_nico 2023/06/28
    “法律コードの考案や運用に関わる法律家は、社会科学や行動科学を必修として学ぶ機会がまずないので、人間の不正行為についての判断を直感に頼らざるを得ない。しかしその多くは間違っている”
  • 『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』米国が直面する悪夢 レントシーキングの罪 - HONZ

    われわれ人類の平均寿命は延び続け、死亡率は低下し続けている。それは、先進国と発展途上国の別なく起きている。当然、喜ぶべき事象だ。 しかし、近年、米国の大卒未満の白人の間には、この世界的な潮流とは逆の傾向が見られる。労働階層の白人たちの平均余命は短くなり、死亡率が上がっているのだ。1990年代末頃から、とくに45〜55歳の低学歴中年白人の死亡率は年々高くなっているという。ちなみに4年制大学を卒業した高学歴の白人には同様の傾向はまったく確認されていない。 著者らの調べから、彼らの死亡率を大幅に上げている原因が、オピオイドなど医療用薬物の過剰摂取による中毒事故、アルコール性肝疾患、そして自殺であることが判明する。これらは自らが招いた死、それも人生に絶望した者が陥る死だ。著者らはこれを「絶望死」と呼ぶ。 いま、低学歴白人が経験しているのは、労働環境の崩壊、貧困、コミュニティーの破壊、宗教の衰退だ。

    『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』米国が直面する悪夢 レントシーキングの罪 - HONZ
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    hide_nico 2021/03/06
  • 『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本 - HONZ

    『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露 このをここで紹介していいものか迷ったが、著者の真摯な姿勢に心を動かされたので、おもねらずにレビューしてみたい。 書は、ベストセラー『7つの習慣 最優先事項』の訳で一躍売れっ子翻訳家になった著者が、出版社との様々なトラブルを経て業界に背を向けるまでの顛末を綴った、げに恐ろしきドキュメントだ。 驚くことに、名前こそ伏せてあるが、理不尽な目に遭わされた出版社のプロフィールが文や帯でずらずら書かれている(業界歴の長い人ならすぐにわかるのではないか)。著者の名前をネットで調べれば翻訳を担当した書籍がばんばん出てくるし、もはや告発書、暴露と言っても過言ではない。 まずは著者が経験した「天国」から。 出版翻訳家を夢見たのは21歳のとき。大学卒業後は大学事務員、英会話講師、

    『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本 - HONZ
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    hide_nico 2020/12/10
    “出版社側の全調停欠席や一方的な和解申し立てを見るに、まさか訴えられると思っていなかった節がある。つまり、契約締結後の印税カットや出版延期・中止は日常茶飯事で、どうしてそんなに怒るか理解できなかったの
  • 『コカイン ゼロゼロゼロ』あまりにも凄惨な現実 - HONZ

    コカインという白い薬物をめぐる書は凄惨な事件から始まる。それはキキの物語だ。 キキの物語を語るには、まずこの男のことを知らなければならない。ミゲル・アンヘル・フェリックス・ガジャルド、通称〈エル・バドリーノ〉はメキシコで「コカインの帝王」と崇められた男だ。今も〈エル・バドリーノ〉の時代もコカインの一大生産地はコロンビアだ。しかし、コカインの大量消費国アメリカにコロンビアは遠すぎる。また当時、コロンビア国内ではカリ・カルテルとメデジン・カルテルがコカインの密売ルートの支配をかけて抗争を繰り返し、力を失いかけていた。さらにメデジンの伝説的な首領パブロ・エスコバルは米連邦捜査局(FBI)の買収に手間取り、膨大な量のコカインを摘発され、窮地に立たされていた。 エスコバルは、アメリカとの国境線を支配する〈エル・パドリーノ〉に助けを求める。二人は意気投合し、共にビジネスを始める。警察官から転身し、既

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    hide_nico 2018/12/30
  • 『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁 - HONZ

    著者、伊藤祐靖は自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊の「特別警備隊」の創設に携わり、部隊創設後は先任小隊長として技術の向上に努めた人物である。書は日初の特殊部隊を創設した男の半生を綴った自伝であり、自衛隊という国防の最前線のリアルを描いたノンフィクションでもある。 そもそも日は旧帝国陸海軍の時代から特殊部隊という特殊戦の専門部隊というものを持ったことがない。そんな日がなぜ特殊部隊を創設する事になったのか。しかも、白兵戦を旨とする陸上自衛隊よりも先に海上自衛隊で。実はその発端となる事件の現場に伊藤祐靖自身がいたのである。 その事件とは1999年3月23日に発生した能登半島沖不審船事件である。イージス艦「みょうこう」は富山湾において「特定電波を発信した不審船の捜索」を命じられる。湾の中にいる何百隻という漁船の中から、北朝鮮の特定電波を発信した工作船を見つけるのである。不可能なように思われ

    『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁 - HONZ
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    hide_nico 2018/08/06
  • あなたは「神」を信じますか? 『科学者はなぜ神を信じるのか』 - HONZ

    あなたは神を信じますか?こう訊ねられたらどう答えるだろう。日だと、神様は存在しないと思うけど神頼みはする、というのが多数派だろうか。こので問われるのは、我々が普段思い浮かべるようないたるところにいる神様ではない。キリスト教の神、創造主としての神である。 科学者のスタンスはどうだろう。『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンスは『神は妄想である』という著書で、科学的合理性こそが重要で、宗教はそれに反するものであると痛烈に批判した。この、宗教的背景からか日ではあまり話題にならなかったが、世界中で百万部を越すベストセラーになった。もちろん賛否激論である。 一方、ヒトゲノム計画を率いた一流の生命科学者、米国・国立衛生研究所(NIH)所長のフランシス・コリンズは、無神論者の家庭に育ったが、後に敬虔なクリスチャンとなった。そして、科学的真理と信仰的真理は矛盾しないと確信し、『ゲノムと神;科学者

    あなたは「神」を信じますか? 『科学者はなぜ神を信じるのか』 - HONZ
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    hide_nico 2018/07/27
  • 『カミングアウト』伝えられない想い。伝える希望。 - HONZ

    LGBT」と称されることも多いセクシュアルマイノリティ(性的少数者)。人口の3〜7%にあたると言われ、40人クラスであれば1〜3人は存在する割合だ。近年、メディアでとりあげられる機会も増え、認知度は高まりつつあるが、2015年に行われた全国調査では「自分の周りに同性愛者がいるか否か」という質問に対し、「いない」と回答した人が54.2%、「いないと思う」が33.6%という結果が出た。実に9割近くの人が、実際に「存在している」ことを認知していないことになる。この結果は当事者が周囲の人に自分のセクシュアリティを伝えられていない現状を示唆しているだろう。 セクシュアルマイノリティの人が、自分の性的指向(恋愛や性的欲望の対象)や性自認(自分の性別に関する意識)について誰かに伝えることを「カミングアウト」という。自分のセクシュアリティについて話していないときの状況をよく「クローゼットのなかにいる」と

    『カミングアウト』伝えられない想い。伝える希望。 - HONZ
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    hide_nico 2018/05/30
  • 『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない - HONZ

    もはや毎日のように顔を合わせている人たちについての話だ。地域によって差はあるものの、都市部のコンビニでは外国人スタッフの存在はすっかり当たり前になった。自宅の最寄りのコンビニともなると7割くらいが外国人店員という印象なのだが、その割に知っていることはあまりにも少ない。タイトルを見た瞬間、自然と手が伸びた。 中身はコンビニの話にとどまらない。コンビニ店員のほとんどを占める私費留学生を中心としながらも、技能実習生、その他の奨学生、さらには在留外国人全般にわたる幅広い視野で外国人労働者の置かれる状況がまとめられた1冊である。 近い将来変わる見込みがあるものの、現状は技能実習生がコンビニでバイトをすることは認められていない。コンビニで働く人外国人のほとんどは、日語学校や大学で学びながら原則「週28時間」の範囲で労働する、私費留学生だ。中国韓国・ベトナム・ネパール・スリランカ・ウズベキスタンなど

    『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない - HONZ
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    hide_nico 2018/05/20
  • 『家族をテロリストにしないために イスラム系セクト感化防止センターの証言』「取り込み」はいかにして行われているのか - HONZ

    実際にテロ組織に加入しようとする若者を引きとめたり、社会への復帰を支援したりといった活動を行う「イスラム系セクト感化防止センター(CPDSI)」の創設者によって書かれた1冊だ。 著者はセンターを創設した2014年4月から2015年末までに、1134人の若者を支援してきた。活動の現場で目の当たりにした事例と、得られた知見がまとめられたのが書である。 著者らは相談者である親と連携し、子どものパソコンの中身や録音された電話の通話内容を調べ、親子との会話内容なども分析し、組織による洗脳や取り込みのプロセスについて事例を収集してきた。 子どもが過激思想に感化されていくことに困り果てた親たちの相談を受けてきた経験から、組織に取り込まれつつある若者の家庭での振る舞いが、どのように変化していくのかについて細かく書かれている。 洗脳が進むにつれ次第に、若者たちは組織が説くところの「宗教的実践」に従い始める

    『家族をテロリストにしないために イスラム系セクト感化防止センターの証言』「取り込み」はいかにして行われているのか - HONZ
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    hide_nico 2017/11/01
  • 『中動態の世界 意志と責任の考古学』善でもなく、悪でもない。あいまいさを語る幻の文法 - HONZ

    深く関わりたくないと思う問題の多くは、善悪二元論に陥りがちなものばかりである。豊洲は安全なのか、そうでないのか。忖度はあったのか、なかったのか。唐揚げにレモンはアリなのか、ナシなのか…。議論を単純化すればするほど、問題は質から遠ざかる。それなのになぜ人は、かくも簡単に二元論に陥ってしまうのか? 答えを解く鍵は、文法にあった。 通常、我々が親しんできた文法の区分けは、能動態と受動態の二つである。これは全ての行為が「する」か「される」かのいずれかに配分されることを求めるが、前提として意志の概念が存在する。良きにせよ、悪きにせよ、自らの意志で行った行為であればそこに責任が伴うため、善悪の判断の基準になるのだ。 しかし、かつて能動態でも受動態でもない「中動態」なる態が存在していたという。書は、ある日忽然と姿を消してしまった中動態の足跡をミステリーさながらに辿り、中動態が存在した時代の世界観を鮮

    『中動態の世界 意志と責任の考古学』善でもなく、悪でもない。あいまいさを語る幻の文法 - HONZ
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    hide_nico 2017/04/11
  • 『選択しないという選択 ビッグデータで変わる「自由」のかたち』とはいえ選択は終わらない - HONZ

    選択できるということは途方もない利益をもたらす。そして、選択できることは好ましいことと考えられている。一方で、同時に多大な負担を強いる。人間の時間と集中力は限られており、ときに不合理な選択や行動をしでかす。すべての選択について都度立ち止まって学習することは難しく、それが楽しいとも限らない。 だから、人類は歴史を通じて様々な工夫をしてきた。ナッジ(Nudge)はその工夫の1つであり、iNcentives(インセンティブ)、Understand mappings(対応付けの理解)、Defaults (デフォルト)、Give feedback(フィードバック)、Expect error(誤ちの予見)、Structure complex choices(複雑な選択の構造化)で構成される。 例えば、人間の損失回避性を利用したインフルエンザの予防接種の例がある。 1.この秋、インフルエンザの予防接種を

    『選択しないという選択 ビッグデータで変わる「自由」のかたち』とはいえ選択は終わらない - HONZ
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    hide_nico 2017/02/27
  • 『進化の教科書 第1巻 進化の歴史』 進化入門の決定版 - HONZ

    ハーバード大学やプリンストン大学をはじめ、全米200以上の大学で採用さている教科書『Evolution: Making Sense of Life』の邦訳3分冊の第1巻である。「教科書」といっても、書は議論の余地のない事実が淡々と積み上げられた退屈なものではない。原著者は『ウイルス・プラネット』等で知られる大人気サイエンスライターのカール・ジンマーと『動物たちの武器』のモンタナ大学教授ダグラス・J・エムレンであることからも分かるように、科学読み物としての楽しさを保ちながら、確かな知識を与えてくれる内容となっているのだ。またAmazon.comでは『Evolution』の価格は12,000円以上と高価だが、この第1巻はフルカラーの図を多く含みながら、1,680円(税別)だというのだから買うしかない。さらに、邦訳者の1人には、『化石の生物学者』の著者であり『ネアンデルタール人は私たちと交配し

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    hide_nico 2016/12/12
  • 『非モテの品格 男にとって弱さとは何か』ルサンチマンを超えた先にあるもの - HONZ

    タイトルを見て思わず手に取った。面白そうだと思ったのではない。憤慨したのだ。 はっきり言って私はモテない。メディアに出れば、ネットの掲示板には「ブス」という心無い言葉が流れる。だから、モテないことには一家言もっている。 だが、このタイトルには全く同調できなかった。 男はたとえ生まれ持った容姿に恵まれなくとも、筋肉をつけ、身なりに気を使い、学歴や財力、権力、そして小粋なトークでもできれば、間違いなくモテるようになれるだろう。これら全ては後天的な努力で手にすることができるものばかりだ。努力が足りないだけなのに「弱さ」とは一体何事かと憤りながらページをめくった私は、後頭部を殴られるような衝撃を受けた。 「ふと、自殺した友人や知人たちの顔を、今でも思い出すことがある。」という書き出しから始まる冒頭には、社会の期待するマッチョな男性像に絡め取られ、声を上げることもできないまま死を選んでしまう男性たち

    『非モテの品格 男にとって弱さとは何か』ルサンチマンを超えた先にあるもの - HONZ
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    hide_nico 2016/11/17
  • 『住友銀行秘史』戦後最大の経済事件、イトマン事件を告発したのは私です - HONZ

    書『住友銀行秘史』は、日における「戦後最大の経済事件」と言われたイトマン事件を、銀行側からの証言で綴った貴重な資料である。当時、自分は住友銀行東京店の隣に位置する銀行で残業しながらヒーヒー言っていたが、まさか隣でこんな壮絶な出来事が繰り広げられていたとは…。自分はつくづく子供だったと思う。 バブルを経験していない若い人には理解できないかも知れないが、1997-98年の大蔵接待汚職事件を契機に大蔵省から金融庁と証券取引等監視委員会が分離独立するまでは、銀行というのはかなり恣意的な(ずさんな?)融資を行なっていたのである。 そして、新しい資市場や金融規制の流れを理解しないで、いまだに旧態依然とした経営を行なっている古い体質の大企業が不正経理問題などで次々と馬脚を現しているのは、必然の流れと言えるだろう。もはや「時代は変わった」のである。 1990年前後に起きたイトマン事件を覚えているの

    『住友銀行秘史』戦後最大の経済事件、イトマン事件を告発したのは私です - HONZ
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    hide_nico 2016/10/12
  • 新時代への議論の基礎──『人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き』 - HONZ

    この数年、怒涛のように人工知能関連が刊行されたこともあって、今となっては「人工知能によって雇用は失われます!」と危険性を指摘するだけのは真新しくもおもしろくもない。書もその類のなのかと思っていたが、議論は既存の同ジャンルノンフィクションに比べても一歩先に進んでおり、未来予測も頷くところ多しで予想を裏切って大変楽しく読ませてもらった。 最初に書の内容をざっと紹介してしまうと、副題に「人工知能時代の経済と労働の手引き」とあるように、機械学習やニューラルネットワークなど各技術分野の進歩が著しいこの人工知能時代において、不可避的な失業問題にどう対処すべきか、機械道徳はどうあるべきか、AIの過失を法律はどう判断すべきか、富の分配について──などの産業/社会的なインパクトをできるだけ現実に即し、政策レベルでの解決法を語る、今まであまりなかったガイドになっている。 労働市場について 人工知能

    新時代への議論の基礎──『人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き』 - HONZ
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    hide_nico 2016/08/25
  • 『「イスラム国」の内部へ 悪夢の10日間』ISとは何者なのか? - HONZ

    イラクとシリアに跨るISの支配地域の内情がどの様なものであるのかは多くの謎に包まれている。メディアなどで語られる情報は反IS側の陣営によるプロパガンダ的な要素を含んだ物が多く、その内容のどこまでが真実であるのか釈然としない点も多い。IS側もこれまでジャーナリストを支配地域に入れる事を拒んできた。多くのジャーナリストがIS の戦闘員に拘束され殺されている。書はそんな状況の中で西側陣営のジャーナリストとして初めてISの指導者であるバクダーディーから正式に許可を得てIS支配地域を取材にしたドイツ人ジャーナリスト、トーデンヘーファーのルポタージュだ。 ジャーナリストとしての著者の立ち位置は明確だ。事が起こった際には、批判的精神を持ちつつ当事者双方の意見に耳を傾けるというものだ。当たり前なように聞こえるがこれは当に難しい事だろう。日の事を例にとって考えればわかるだろう。中国北朝鮮などの国々と

    『「イスラム国」の内部へ 悪夢の10日間』ISとは何者なのか? - HONZ
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    hide_nico 2016/08/22
  • 『モンスターマザー:長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い』“でっちあげ”ふたたび - HONZ

    『でっちあげ』というノンフィクションを知っているだろうか。詳しくは私のレビューをお読みいただきたいが「モンスターペアレント」という言葉ができたのはこの事件からだった。学校に対して理不尽な無理難題を突き付け、わが子可愛さに教師ばかりか教育委員会、果ては市や県にまでクレームをつけ、裁判にまで持ち込む。それが正当なものならわかるが、嘘八百を並べ立てていた事件である。 長野県の丸子実業で起こった「いじめ殺人事件」も、このモンスターペアレントが起こした事件であった。 2005年12月、軽井沢に隣接している長野県御代田町で丸子実業高校(当時)に通う高校1年生の男子が自殺した。母親は所属していたバレーボール部内部でいじめがあったことを苦にしていたと証言し、気持ちを書きとめていたノートには「いじめをなくしてほしい」という記述もあった。事実、夏から不登校が続いていた。少年には声が出にくいという障害があり、そ

    『モンスターマザー:長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い』“でっちあげ”ふたたび - HONZ
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    hide_nico 2016/02/17
  • 『アメリカの真の支配者 コーク一族』 石油から思想までを操る華麗過ぎる一族 - HONZ

    世界最強国家アメリカで、最も影響力を持つのはどの一族だろう。20数年間で2人の大統領を輩出し、さらに3人目の大統領候補を送り出そうとしているブッシュ家だろうか。世界最大の石油企業スタンダード・オイルに始まり、金融や軍事関連企業を次々と傘下におさめ、政界にも強いコネクションを持つロックフェラー家だろうか。 夫婦で大統領となる可能性の出てきたクリントン家や世界一の大富豪として慈善活動を強力に推進しているビル・ゲイツなど、大きな力を持つアメリカ人の名前は数多く思い浮かぶ。ところが、左派系メディア『マザー・ジョーンズ』誌シニア・エディターである書の著者は、Wikipediaの日語版にも個別記事がなく、日ではその名を知る人の少ないコーク四兄弟こそが、「現在のアメリカにおいて、最も影響力を持ち、強力で、人々の耳目を集め、嫌われている人たち」であるという。 コーク一族が所有・経営する非上場企業のコ

    『アメリカの真の支配者 コーク一族』 石油から思想までを操る華麗過ぎる一族 - HONZ
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    hide_nico 2015/12/22