イマニュエル・ウォーラーステインの世界システム論は経済理論としてみたときにはもはや到底真面目に相手にするに足るものではないが、政治理論ないし法理論の土俵にパラフレーズしてみるならばまだ救いがいがないでもない。ウォーラーステインは世界システムの二類型として「世界帝国」と「世界経済」とを提示しているが、これを公法的な概念系に移し変えることは十分可能だろう。その結果は以下のようになる―― 我々は包括的な世界システムの概念として、いまのところ「帝国」と「主権国家システム」の二つのタイプのものを持っている。このどちらも原理的には普遍的かつ包括的である、つまり理論的には世界全体をその支配下に置くことができる。もちろん現実には、我々はいまだかつて単一の世界システムの下に包括されたことはない。ただ、現今の国際関係秩序の軸のひとつとなっている、主権国家システムは、それに近いところまで行ったように見えなくもな