日本で進行する「静かな全体主義」への危惧 危険なレベルにまで低下した投票率と「政党の座標軸」の融解が示す危うい実情 宇野重規 東京大学社会科学研究所教授 参議院選からひと月以上がたった。その記憶は多くの人にとって、すでに過去のものなっているかもしれないが、筆者はまだその意義をうまくのみ込めずにいる。 改選議席数は下回ったが、改選定数の半数を超える議席を獲得した以上、与党が勝利したのは間違いない。とはいえ、野党も共闘の結果、32ある1人区のうち10の選挙区で勝利している。事前には苦戦が予測されていた選挙区も多く、それなりに健闘したと言える。結果として、与党と野党のうち改憲に前向きなグループを合わせた改憲勢力は、発議に必要な三分の二の議席を獲得できず、反改憲の野党側にも一定の手応えのあった選挙でもあった。 こうみてくると、今回の選挙の意義を勝ち負けという観点から読み解くのは容易でない。むしろ、