私は祖母を知らない。 母の母が12歳の頃、父の母は27歳の頃にそれぞれ亡くなったらしい。 母は、「片親育ちだから私はかたわなのよ」とよく言っていた。 幼い頃の私はその意味はよく分からなかったがなんとなくネガティブな気持ちになった。 祖母はとても美しい人で、いつも美しい人は早く死ぬのだと言っていた。 実際に写真を見ると整った顔をしていた。 童話のような祖母たち。 父方の祖母はというと、家事は一切せず囲炉裏の前でキセルで優雅に煙草を吸っていたらしい。 声を荒らげるようなことはただの1度もなく祖父が家事全般をしていた。 祖母はその昔、酌婦だった。 大人が酌婦という言葉を言う時あまり褒められた職業ではないのだろうなと子供心に思った。 祖母が魅力的でそのまま連れてきたようだ。 たぶん家庭に向かない人だったのだろう。 お願いすればどんなに複雑に絡まった毛糸も、朝から晩までかかっても根気よくもとに戻せた