かつて日本中の町々に商店街があった頃、そこには「荒物屋(あらものや)」があった。シュロのほうきにトタンのちりとり、アルマイトの洗面器、籐製の買い物かご…。各地の町工場や職人の手で作られた、丈夫で長持ちの日用品が狭い店内にぎっしり並んでいた。 やがて大型スーパーの時代がきて、多くの商店街が消え、荒物屋も消えた。安さは正義。壊れたら買えばいい。続くバブル時代は高級こそ正義。傷でもつけたら大変だからめったに使わない。いざ使おうとすると過剰な機能は使いこなせず、実は使う必要もなく…。 ざっくり振り返るだけで何やら情けない気持ちになる「消費」時代の後、長々と居座った不況を経て、今再び「荒物」に光が注がれている。丈夫でしっかりしたものを、愛着を持って大事に使う。そんな人が増えて、細々と、しかし確かな技術で作り続けられてきたものが改めて売れるようになってきた。作る人も買う人も、ほどよく満足できる。そんな