<エルニーニョとダム建設の影響で深刻な水不足に苦しむメコンデルタ地帯。最先端の農業改革と、昔ながらの貯水対策などが同時並行で進められている>(写真はプノンペン付近のメコン川で漁網を張る少年) カオ・ユーエンは2本の金属棒の先に目をやった。棒が「反応した」先の地面では、穴の中に濁った水がたまっていた。「これは魔法じゃない」と彼は言う。「生活のために水に関していろいろ実験してるのさ」 カンボジアのアンコールワットに程近い小さな農村に住むカオがしていることは、世界遺産に負けず劣らず意義深い。ここ数十年の東南アジアで最悪レベルの干ばつが襲うこの地で、生きるために水脈を探索して歩いているのだ。 彼は2本の金属棒を胸の高さで軽く握り、乾き切った土地に先端を向けて辛抱強く歩き回る。棒の先端が左右に開く場所に、水脈が眠っている(と願っている)からだ。反応がある場所を掘って水が見つかれば、それを作物栽培に利