とにかく、この絵画の出現は青天の霹靂で、同時に、ドイツの芸術界における戦後最大のセンセーションであったとも言える。発見の経緯は去年11月にすでに書いたが、簡単に繰り返す。 まず、話の発端は2010年9月に遡る。グルリット氏は、スイスからミュンヘンに向かう列車の中で、税関の抜き打ち検査に引っ掛かった。 ドイツでは、スイスの銀行にお金を預けて脱税している金持ちや、マネーロンダリングの犯罪者の摘発のため、国境でしばしば現金所持の検査をしていることは、先々週、やはりこのコラムで書いた。 ただ、この時グルリット氏は、ベルンで絵画を1点売却したと説明している。絵を売ることは違法ではない。しかも、所持していたのは9000ユーロ(120万円あまり)で、届け出の必要な額に達していなかった。しかし、税関は、その後も彼をマークしていたようだ。 そして2012年の春、家宅捜索の令状が出て、ミュンヘンの彼のマンショ
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