私が働いている会社のオフィスは、人の顔がよく見える。 資料作りが一段落したところで、パソコンのディスプレイから視線をふと上げると、私の上司や同僚、新人の後輩くん、そしてお隣さんのチームまで、仕事に取り組んでいるようすが手に取るように分かる。 …………いや、分かりすぎるのだ。 こんな状況になったのは、約1年前のオフィス移転がきっかけだった。デスクの壁や仕切りを取り払った“オープン型オフィス”が採用され、大きな机を数人でシェアするスタイルになった。メンバー同士のコミュニケーションが促されて、オフィスに活気が出るらしい。 確かにご近所さんとのちょっとした会話は増えたし、景気の良い笑い声や仕事で活躍した従業員をたたえる拍手が聞こえてくると、ちょっぴり気分も良くなる。これが狙いの活気というやつなのだろう。 でも、現実はそう都合がいいことばかりではない。仕切りが無いデスクは常に同僚の顔が視界に入ってく