傷ついたハイガシラアホウドリのひな。南極圏に近い、ここ南アフリカのマリオン島には、200年前に人間が持ち込んだハツカネズミがすみついている。海鳥はこの新しい天敵を警戒する本能をもっていないため、かじられ、やがて死んでいく。PHOTOGRAPH BY THOMAS PESCHAK 想像してみよう。南大西洋に1羽の若いアホウドリがいる。広げると3メートルにもなる翼で風に乗り、1日に800キロも滑空する鳥だ。 獲物を見つけるのに絶好の場所は大抵、深い海の底をさらうトロール漁船のそば。ちょうど今、この鳥の眼下では、トロール船から投棄される魚のくずを食べようと、小型の海鳥たちが群がっている。その中に降下すれば、アホウドリは体の大きさにものをいわせてほかの鳥たちを蹴散らし、悠々と食べ物にありつけるはずだ。 しかし着水した瞬間、そこには思わぬ災難が待ち受けている。広げた翼が底引き網のケーブルにからまり、