朝6時。名古屋市・栄の広小路通を掃除して歩く男性の姿があった。大きな用具を抱え、ジャージ姿に古びたキャップ。清掃スタッフと見まがうが、じつはこの男性、世界最大のカレーチェーン「CoCo壱番屋」を運営する「壱番屋」の創業者・宗次徳二氏(67)その人なのだ。 「掃除を始めて8年間、出張の日以外は雪や嵐の日でも毎日、100%やっていますよ」(宗次氏) そう話しながらも手は止めず、今度は花壇のハイビスカスに水をやりはじめた。この通りに咲く2千300株もの花も、宗次氏が植えたものだという。 54歳で経営の一線から退いていたものの、宗次家は壱番屋の株を約23%保有する筆頭株主だ。しかし今月2日、同社はハウス食品の傘下に入ることを発表。宗次家も保有する約390万株すべての売却に踏み切った。手にする金額は、およそ220億円にのぼる。 「こんな大変な商売、息子に継がせようなんて思ったことがない。息子