なんか株価は年度末が見えた頃から上がり続けで、全般に金融業界もほっと一息、春うららな感じである。僕も花見に3回も行ってしまった。夜桜の中、酔っ払って騎馬戦をする羽目になるとは思わなかったが・・。 それはともかく、全般にセンチメントが良くなったのは、ようやくアメリカの官民ファンドによる公的資金注入の話が具体化してきたからだろうか。この仕組も、公的資金投入するよ、と昨年の9月に発表してから、ウダウダ半年かかったが、この間相当な議論が行われた形跡はあり、なかなかユニークなものになっている。 一つ目は、レバレッジをもってハイレバ時代の後始末をすることである。住宅ローンや不動産担保ローンなどの買取ファンドについては、1:6のレバレッジをFDIC(預保)が保証し、しかも1のエクイティの内、半分を例の70兆円枠の中から出資する。よって、民間投資家からすると、協調投資家とレバレッジに対する保証で14倍のレ
CDSのCCPについての記事が手許に届いた月刊「資本市場」283号(2009年3月号)に「欧米のCDS清算機関設立動向」という記事があったので早速目を通し始めたところ、それ以外にも以下の論文が非常に興味深く、思わず読みふけってしまいました。 広田真人「クレジットリスクの破綻は確率現象か?−サブプライム・ショックに対する金融工学の責任を巡って−」 渡辺信一「「金融工学」の誤解−証券化商品に対する批判に関する一考察−」 何れも「金融工学」あるいは「確率・統計論」によるアプローチがサブプライム問題にどのような影響を与えたかということを取り扱っているのですが、タイトルからして対立点は明確です。 広田論文は、「サブプライム問題とは、一言で言えば、本来少なからぬリスクを持つサブプライム関連の証券化商品を低リスク商品と見間違い、低リスク=低リターン型商品を高収益商品に衣替えする定番としてのレバレッジをか
すでにあちこちで語りつくされている内容ですが、少し前に作った図に沿って頭を整理してみました。「こんなの知ってるよ~」という人は、飛ばして下さい。 【市場プレイヤーの資金の流れ】 1. 貯蓄金融機関が国民に対して大幅に緩和された審査基準のもと、住宅ローンを過剰に貸し付けた(サブプライムかプライムかの区別よりも、固定金利ローンか変動金利ローンの区別の方が意味をもつことは、前回のエントリーをご参照) 2. 貯蓄金融機関が大量に資金供給できたのは、 ① 証券化技術の発達によって、個々の住宅ローンを束にして証券化した商品(Mortgage Backed-Securities)を買い取ってもらえるようになったから ② 政府系住宅金融機関(GSE)が持家推進の政策および株主利潤最大化の目標のもと、大量に資金供給したから 3. 証券化商品をバンバン売ることができた(=資金が大量流入した)のは ① 少
2008年は、米国債と金を除く世界中の主要な市場が大暴落する、歴史的な年になりました。世界の金融界をリードしていた“はず”のウォールストリートを震源地とした未曾有の金融危機は、世界中の投資家の自信を喪失させ、また金融本来の機能である「資金の融通」も滞って、実体経済も急激に冷え込んでしまいました。 2009年は、そんな混乱の中で始まりましたが、NY Timesの年初(1月3日)のOP-ED、「The End of the Financial World as We Know It」の中で寄稿者は、「世界は、アメリカ金融界への自信を“ほぼ”喪失してしまったようだが、まだ修正のチャンスはある。では“何が”修正されるべきだろうか」という問いかけをしていました。 このOP-EDに寄稿したのは、後にLTCMを立ち上げたJohn Meriwether氏が率いた元ボンド王国Salomon Brothers
【2008年をふり返って:サブプライムローン問題に起因する金融危機に関する雑感】 2008年は,マクロ経済学や金融論を専門とする経済学徒にとって試練の年だったと思う。11月19日に一橋大学の兼松講堂で行われた金融危機に関する公開討論の後に,「日本経済が深刻な事態に至ったことについて経済学者として責任はないのか」と問う声に向き合わなければならなかった。 あまり広く知られていないのかもしれないが,市場機能を重視する伝統的な経済学者(新古典派経済学者)の間でも,2002年以降の日本経済の景気回復に対して違和感を感じていたものは決して少なくなかった。私自身も,2006年12月に上梓した『成長信仰の桎梏』(勁草書房)では,「『上げ潮政策』と呼ばれていた政府の成長戦略や1990年代半ば以降から継続していた日本銀行の超低金利政策がかならずしも日本国民を豊かにせず,投機資金の温床となって,あげくにはバブル
「サブプライム」が金融危機を引き起こし「実態経済」に影響を及ぼし始めている、という解釈がいまだに主流ですが、そんな程度の問題であれば世の中なんとバラ色なことか・・・。岩瀬さんの描かれている構図が、全体の問題としてはごく一部の(それでも巨額な)「サブプライムローン」というアセットクラスだけでなく、不動産にすら限定されない考えうるありとあらゆるアセットクラスで起こり、しかもそのシステムに基づく過剰信用創造が「実態経済」とかいう名前でよばれているここ数年以上にわたる累積過剰消費(端的には、例えばトヨタの過剰な自動車販売台数だとか)が成り立つための前提条件になっていたこと、が本当の問題ではないかと。現在はそのことが明らかになりつつある、まだ初期~中期の段階だと思っています。
明けましておめでとうございます!今年もどうぞ宜しくお願い致します。 さて、冬休みは本を読む時間がほとんど取れなかったのですが、読んだものの中でもっとも読み応えがあったのが、ワシントンポスト紙が12月29日・30日・31日と三日に渡って、「一連の金融危機がなぜ起こったのか」という点に関するレポート。 The Crash: What Went Wrong? 「投資銀行が拝金主義に陥って、リスクの高いサブプライム証券をガンガン売りまくったのが要因」という安易な話ではない。 オフバランスであったデリバティブ商品への開示規制強化の主張がどのようにして潰されたか(しかも、ルービン、グリーンスパン、サマーズらの「三銃士」によって!)ということを1998年に遡って、当時の発言や証言などに従い、かなり詳細に記述をされている。 (しかも、あの Bob Greenwood とかも記事に協力した、などと出てくるの
TALF(Term Asset-Backed Securities Loan Facility)プログラム概要 2009年2月に詳細が更新されています。更新版をご覧ください。 - TALFは適格ABS向けノンリコースローンの提供を通じ、消費者と小規模事業者への金融機関の貸出を促し、またABS市場一般の環境の改善を目指す - 新規に発行される最上級格付(AAA格)のABSに対して、NY連銀が1年のタームファイナンスを2000億ドルを条件に供給 - 適格ABSに対してヘアカット(掛け目)を掛け、ノンリコースベースで資金供給 - 財務省が本プログラムからの損失のうちファーストロス200億ドルを負担 <適格担保資産> - 米ドル建てのキャッシュABS(シンセティックは含まない) - 最上級格付を2社以上の格付会社から得ていること - すべてもしくはほぼすべての原資産は、新規もしくは直近に発生した米
雑誌から「今年の収穫」というアンケートが送られてくる季節になった。今年ブログで紹介した本をチェックしてみて、今年の後半はほとんど収穫がないことに気づいた。たぶんアメリカ発の金融危機のスケールが大きすぎ、かつそれを正確に分析した本がまだ出ていないためだと思う。そこで、とりあえず今の段階で現状を理解するのに役立つと思われる本をリストアップしてみた:Black Swan 市場リスク:暴落は必然か When Markets Collide The Age of Turbulence 現代の金融政策 Essays on the Great Depression The Great Contraction すべての経済はバブルに通じる 資本主義は嫌いですか なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか Bad Money Fixing Global Finance Globalizin
今回の金融危機の原因を、契約理論で考えてみる。私の昔の論文の再利用だが、政策担当者には参考になるかもしれないので、簡単にまとめておく。かなりテクニカルなので、興味のない人は無視してください。 前に磯崎さんとの往復ブログ(?)でも書いたが、なぜ金融市場で株式と債券という特殊なcontingent claimが圧倒的に多いのかは、合理的に説明がつかない。理論的に考えれば、Arrow-Debreu証券(状態空間の単位ベクトル)で状態空間を連続にスパンすることで完備市場になるので、一般には株式も債券も最適な証券ではない(Allen-Gale)。派生証券で両者の線形結合をつくることによって効率は高まるので、こうした金融商品は市場ではゼロサムゲームだが、経済的な福祉は高まる(だから賭博とは違う)。 もし取引主体が無限に多く、彼らの選好が連続に分布していれば、すべての証券はArrow-Debreu証
サブプライム問題に端を発した短期金融市場の動揺と中央銀行の対応 2008年7月 日本銀行 金融市場局 全文ダウンロード (PDF) はじめに 中央銀行の金融市場調節(以下「金融調節」)手段は、各国の調節目標、金融市場の状況、歴史的な経緯などによって詳細が異なるが、大括りに整理すると、準備預金の積立制度、オペレーション(公開市場操作。以下「オペ」)、スタンディング・ファシリティ(「常設ファシリティ」とも呼ばれる)、の3つから構成されている。まず、準備預金の積立制度のもと、金融機関は、一定の期間に一定の残高を中央銀行に準備預金として積み立てる必要がある。金融機関の決済資金需要は日々変動するが、この仕組みによって、比較的安定した準備需要が創出される。そのうえで、中央銀行は、オペを通じて準備需要に対するマクロ的な資金過不足(財政および銀行券要因による中央銀行当座預金の変動)の調整を行い、政策金利
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