■■第1章:ロシア vs ハザール王国 ■ロシア人はハザール王国と戦った 6世紀後半、中央アジアのヴォルガ川流域に強力な民族が台頭しはじめた。のちにハザール(英語で「Khazar」、カザールともいう)王国を形成するハザール人である。一方、当時はロシアもまだ帝国としては存在していなかったが、ロシア人はすでにキエフなどに定着していた。 6世紀から8世紀にかけて、ハザール人はカスピ海の北方に進出すると、ロシア人とたびたび衝突するようになった。ハザール人はロシア人を支配下におき、奴隷にして、カスピ海の北にあるイティルというハザール人たちの首都に連れて行った。イティルでは当時、ロシア人の奴隷がいとも安価で売買されていたという。 8世紀に入り、ビザンチン・キリスト教とイスラムの圧迫を受けたハザール人は、王から奴隷にいたるまで国を挙げてユダヤ教に改宗し、ハザールはユダヤ国家になった(799~809年頃)