エビリファイは順調に処方数を増やしているが、最近試みているのが、比較的多い用量でコントロールしてみようというもの。エビリファイは、処方してすぐ表情が良くなるとか、表面的に見える部分の効果の発現が早い。しかし、その時点では中はあまり変わっていないんだな。そもそも、エビリファイはジプレキサのようなスーパーパワーがない。 ごく最近、ずいぶん古くから入院していて、どうにもこうにも処遇が難しい患者さんに15mg処方してかなり改善した。これには驚愕。ほんとうに万策尽きていたのに。うちの病院としてはエビリファイ15mgまで処方している人は少ない。ただこの人は単剤ではない。現在少しずつレボトミンやクレミンを減量している。うちの病院でよくあるパターンが6mg追加して、いきなり良くなってそのまま処方を変えずにいるというもの。こうなる理由は、他を減量すると悪い結果になりやすいから。実は病棟看護師さんの希望も入っ
エビリファイによる病状悪化については、いくつかパターンがあるように見える。一部の人ではエビリファイを処方した日か、その次の日にはもう幻聴が出現(再燃)している。別に幻聴はなくても独語が激しいとか、言動がまとまらないとか、モロに陽性症状を悪化させているのですぐに中止せざるを得ない。 特に謎に思えるのは、例えば既にトロペロン18mgとか重く処方されている状況で、エビリファイ3mgほど上乗せで処方しただけで、こうなってしまう人もいること。合わせ1本にはならないのだ。相対的にかなり少ないと思える量で病状を悪化させるのだからたいしたものだと思う。エビリファイはすごい薬だと思うよ。たぶん、トロペロンのようなD2に親和性が高い薬が入っていても、それを押しのけてしまうんだろう。 だから、大塚製薬は6mgから処方するように言っているが、僕は1.5mgか3mgの従来薬への上乗せで始めることが多い。ごく稀に、こ
エビリファイが発売されて、まだ1年経っていない。このブログでも何度か出てきている人だけど、ジプレキサ20mgをエビリファイ6mgに置き換えて、その後次第に安定した患者さんがいる。体重がこの半年くらいで80kgから72kgまで減った。72kgというのは僕の体重と同じだ。すると面白いことに、肝障害が消失し、高脂血症もなくなり、HbA1cも6.0が5.0と正常化してしまった。ほんと、良いことばっかりだ。 今の処方 トロペロン(3) 4T タスモリン 3T エビリファイ(3) 3T レボトミン(25) 1T(寝る前) 何が減ったかというと、肝障害と高脂血症に対する薬。この患者さんはベンゾジアゼピンは使っていない。寝る前はレボトミンだけだ。GOT、GPTはだいたい80~100まで上がっていて、そう低い値ではなかった。今はともに35くらいになっている。いわゆる、非定型抗精神病薬のメタ
うちの病院の外来患者さんで、同じような年頃の20代前半の女性患者さんが3人いる。全員とても綺麗な人たちなのである。3人とも、一時は幻覚妄想が酷く入院歴がある。(特に3人目の子は計3回、のべ1年の入院歴) 1名はルーランとセロクエルの併用。1人はエビリファイとセロクエルの併用。1名がエビリファイとプロピタンの併用であり、誰1人として単剤治療ではない。量はかなり少ないけど。(エビリファイは6mg以下、セロクエルは150mg以下)今は、全員幻覚妄想はみられない。 3人のうち、前者2人は明らかにプレコックス感が残っている。3人目は全然それがないので、たぶん、3人目の子は統合失調症ではないのだろうと思う。僕が、外来担当の看護師さんたちにそのことを話したら、誰にもその見分けがつかないのだそうだ。「え?、先生はわかりますか?」といった具合。「誰も気がつかないなら心配しなくてもいいね。でも僕は非常に気にな
セレネースなどの旧来の抗精神病薬が性欲を低下させるのに比べ、新しいタイプの非定型抗精神病薬はこの副作用が少ない。特にその中でも、ジプレキサやエビリファイは「性欲低下」の有害作用が少ないように見える。患者さんからみると、ジプレキサやエビリファイを服用し始めると、以前はなくなっていた性欲が回復してきたと感じる。少なくとも「性欲亢進」とまで意識するかどうかは微妙なケースも多い。 性欲回復の程度はたぶん、 エビリファイ>ジプレキサ であろう。このメカニズムだが、これらの薬物が高プロラクチン血症を来たさないことが関係しているように思うが、おそらくそれ以外の要因もあるような気がしている。エビリファイの添付文書を見ると、この「性欲亢進」という副作用は全く挙がっていない。ということは、この副作用はまだあまり周知されていないものに入るのであろう。性欲が回復するのと性欲が亢進することは量的な差で連続しており、
今、時々行っている病院で、多剤併用の男性患者さんを外来治療している。この人、数年くらい前はセレネース40mgの単剤で治療されていた。セレネース40mgは相当なものだが、単剤ならコントミン換算で2000mgとまだまだ上には上がいる。 僕が初めて診た時の処方 リスパダール 14mg セレネース 12mg レボトミン 200mg デパケン 600mg くらいでコントミン換算値が2200mg。これ以外に抗不安薬や眠剤、抗パーキンソン薬も併用されていている。この処方でもなお幻聴や幻視が活発にあり、落ち着いていないのである。しかし、それなりに定常状態にあり家庭療養は可能であった。この処方の場合、先日の少年と異なり、デパケンが既に処方されているので対応が難しい。何か変なことをすると爆発しそうな雰囲気があった。彼は巨体なので普通の人よりはいくらか多めの薬が必要なのかもしれないと思った。過去
抗精神病薬や気分安定化薬の併用の際、よく感じていた疑問がある。果たして抗精神病薬は併用した時、単純にプラスした量になるのか?ということである。 実は、多剤併用の場合、必ずしも1+1が2にはならないのである。 もちろん計算に近いケースもあると思うが、そういう風には見えないものについて、このエントリでは私見を紹介したい。ただ注意してほしいのは必ずしも多剤併用を推奨しているわけではなく、いかに抗精神病薬の副作用を減らし、より効果的に治療を進めるかについての考察である。こういうバカなことを書く人はなかなかいないと思うので、興味のある読者の人には面白いかもしれない。 ある時期、ある患者さんについて、ジプレキサから定型薬主体への変更を行っていた。普通は逆だが、臨床ではいろいろ事情があってそうせざるを得ないケースもあるのである。この患者さんは一生、退院が難しいレベルであるが、当時、なんとか総薬物量を減ら
これは「リスパダール8㎎でも悪いということ」の続き。 彼女は退院後、ほぼ毎日デイケアに参加していた。時々体調不良を訴えるが、たいていトロペロン1~2Aを筋注すると急回復していた。 トロペロン筋注でごまかしつつ、リスパダールを減量していた。置き換えたのは主にトロペロンであるが総量も少しずつ減量し、トロペロンとクロフェクトン主体の処方になりつつあった。トロペロンはセレネースと同じような薬物ではなく、セレネースほどはうつ状態にさせないのでかなり感覚が違う。彼女の減量の細かい経過は長くなるし面倒なので省略(今回のエントリの主題ではないので)。 そのうち、彼女にとって大事件が起こるのである。 エビリファイの発売である。 これを3~6㎎加えたところ、それまでの虚脱のようなうつ状態が改善し、不安感、猜疑心、邪推すること、幻聴がかなり抑えられるようになった。彼女にはもともとうつ状態の波がみられていたが、エ
患者さんに薬を併用しようとした時、「なぜですか?」と逆に聴き返されることがある。それも本人ではなく、付き添いの家族に。 僕はどうしても多剤併用になる傾向があり、患者さんを治療中、ある薬を加えれば、もっと良くなるかもしれないと思う事がある。そういう薬とは、例えばルーランとか、エビリファイとか、デパケンRやリボトリールなどである。 シンプルな処方は理想だが、たとえシンプルな処方でも最高形になっていないと意味がない。 ある時、ジプレキサで治療中にわずかにEPSが生じた。そのEPSは減量するかアキネトンを追加すれば軽減しそうなのだが、僕は無理な減量はろくな事がないし、本人のためにもならないと思うタイプなので、他の方法を考慮するのである。 精神疾患の向精神薬は、その人にとっての絶対値的適量が存在している。 エビリファイの3㎎の半錠を追加したら(1.5㎎)、そのEPSはみごとに消失した。これは薬理作用
うつ状態が薬物療法でどうしてもうまく改善しないとき、どのような治療をすれば良いのだろうか? 単極性か双極性かあるいは非定型精神病かで異なるように思うので、疾患別に考えなくてはならないかもしれない。このブログの「双極2型の激うつとECT」で出てきた男性患者の治療がヒントになる。この患者さんの難治性うつ状態はECTでコントロールできた。モーズレイの精神科治療のガイドライン(2001)年版では、1st choice、2nd choiceとして以下の方法が挙げられている。(順不同) 1st choice ○リーマス付加 十分に確立されている。約半数において有効。文献により十分に支持されている。 ○ECT 十分に確立されている。有効。文献で十分に支持されている。 (一般の評判が悪い) ○ベンファラキシン高用量(本邦未発売) 普通、忍容性良好。(SNRI。世界でリスパダールに近い売上高を誇る。文献の支
今、入院中の若い女性患者さんだけど、毎日どこかに出かけていく。一応、診断は重いうつ病なんだけど。今はそこそこ回復している。仕事を少しだけしてくるというのがあり、これは内容も時間もわかっているので許可していた。あと周囲を散歩してくるというのがあるみたい。先日、よくわからない外出があったので、何をしてきたのか聞いてみた。 「温泉に行ってきた」んだと。これにはワラタ。 今の処方だけど、こんな感じ。 ノリトレン(25) 5T メイラックス(2) 1T リボトリール(1) 2T エビリファイ(3) 0.5T ドラール(15) 1T ロヒプノール(2) 1T 他に毎日アナフラニールを25mg点滴している。 どうもこの女性の場合、ノリトレンは最も良いようではあるんだけど、今のところ、もうひとつスカッとしないのよね。それでも、少なくとも強力な3環系でないと話にならない。アナ
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